業務委託契約書をサイン前にAIでチェック、確かめたい所を一覧にする

Sumi
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@sumi_n29 ・ 1本

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業務委託契約書にサインする前のチェックは、お金、作業の範囲、やめ方のように、あとで困りそうな所から先に探すのが近道です。契約書の文章をAIに貼れば、確かめたい箇所の一覧と、相手や専門家に聞く質問文まで作れます。

まず読むのは、その一覧と質問文だけで足ります。この記事には、そのまま貼れる依頼文と、架空の契約書で実際に返ってきた表を載せました。

業務委託の契約書は、困りそうな所から読めばいい

契約書で確かめる6つの場所(お金、作業の範囲、納期、権利、責任、やめ方)を本棚の6つの棚にたとえ、納期の棚だけが空で「書かれていない」と付箋が貼られている図

契約書って、読む前から疲れますよね。第1条から順に読んで、契約する2者を指す「甲は」「乙は」(この記事の見本では、甲が会社、乙が自分です)が続くうちに手が止まったことはありませんか? どこが大事なのか分からないまま、PDFを開きっぱなしにしてしまう人も多いかもしれません。

でも、全部を理解しようとしなくて大丈夫です。困りそうな所だけ先に探してもらいましょう。見る場所は6つに分けておくと迷いません。お金(報酬の額、支払う日、追加作業の扱い)、作業の範囲、納期、権利(作ったものの著作権や、実績として載せてよいか)、責任(損害賠償や秘密保持)、やめ方(契約期間や途中解約)です。

この6つで分けると、書いてある条文だけでなく、どこにも書かれていない項目も見えてきます。たとえば納期の定めがない契約書は、条文を順に読み流しているだけだと気づきにくいものです。6つの棚に1つずつ当てはめていくと、空いている棚が目に入る、というイメージです。

契約書の「サインして大丈夫?」は、AIに渡さない

AIに「この契約書、サインして大丈夫?」と聞いてしまいたくなる場面は多いと思います。その問いはAIに渡さないでおくと安心です。有利か不利か、法律の上でどう扱われるかは、相手や専門家に確かめるところですね。表に出てくる「わたしの側だけ」といった指摘は、聞く所の目印で、有利不利の判断ではありません。

AIに任せるのは、確かめたい箇所を探して一覧にすることと、その箇所を聞くための質問文を作ることまでです。依頼文には、法律の判断を言い切らないこと、貼られていない条文や金額、法律名を作らないこと、修正案やサインしてよいかの結論を出さないことを書いてあります。役目を絞っておくと、もっともらしい断定に引っぱられにくくなります。

つまり、サインするかどうかを決めるのはこれまでどおり自分で、AIは「どこを聞けばいいか」のメモ作りを引き受けてくれる、という分担です。

貼る前に、もうひと手間あります。相手の社名や担当者の名前、住所、口座番号、自分の個人情報は、伏せてから貼ります。「株式会社〇〇」を「A社」に、担当者名を「担当者」に置き換える程度で足ります。契約書そのものに、内容を外に出さない約束が入っていることもあるので、気になるときは相手に一言聞いておくとよいでしょう。

AIに頼む契約書チェックの依頼文

状況を書く、契約書を貼る、一覧と質問文が返ってくる、の3つの手順が左から右に並び、返ってきた質問文は相手に送る、と示した図

使い方は、依頼文をコピーしてAIのチャット欄に貼るだけです。貼る前に、「わたしの状況」の3行を自分の内容に書き換えます。仕事の内容、報酬と作業量の目安、相手との関係の3つです。報酬と作業量の目安が分からなければ、「不明」と書いておけば進みます。

次に「契約書の文章」の欄へ、条文をコピーして貼ります。長くて入りきらないときは前半だけ貼り、「続きは次に貼ります」と添えてください。AIは条文の一覧だけを出して、続きを待つ作りにしてあります。

末尾には、架空の出版社との契約を使った貼り方の見本が付いています。わたしは見本を残したまま貼り、その見本を入力として1回通しました。見本は、依頼文の末尾にある「貼り方の見本」と書かれた行から下の部分です。自分の契約書で使うときは、その行から下をすべて消し、「契約書の文章」の欄の説明の1行を自分の条文に置き換えてから貼れば、見本の条文と混ざりません。

あなたは、契約書を初めて受け取った個人の隣で、読む順番を整える補助役です。法律の判断はしません。仕事は「サインの前に確かめたい箇所を探すこと」と「その箇所を相手や専門家に聞く質問文を作ること」までです。

# 入力
## わたしの状況
- 仕事の内容: ここに書く(例: 在宅で原稿の校正)
- 報酬と作業量の目安: ここに書く(分からなければ「不明」)
- 相手との関係: ここに書く(例: 初めて取引する会社)

## 契約書の文章
ここに、契約書の条文をコピーして貼る。長くて入らないときは前半だけ貼り、「続きは次に貼ります」と添える。

# 手順
1. 貼られた文章に、条の番号と見出しがあれば一覧にする。「続きは次に貼ります」とあれば、一覧を出して続きを待つ。次の手順は、すべて貼られてから進める。
2. 各条を、次の6つの観点のどれに関わるか振り分ける。
   - お金(報酬の額、支払う日、修正や追加作業の扱い、経費)
   - 作業の範囲(何をどこまでやるか、修正は何回までか)
   - 納期(遅れたときどうなるか)
   - 権利(作ったものの著作権、使い回し、実績として載せてよいか)
   - 責任(損害賠償、秘密保持、ミスの責任)
   - やめ方(契約期間、途中解約、他社の仕事を制限されないか)
3. 6つの観点それぞれについて、貼られた文章に書いてあるかを確かめる。書いていなければ「書かれていない」と記す。ここで見つかる「書いていないこと」も、確かめたい箇所に入れる。
4. 確かめたい箇所ごとに、次の基準で「確かめたい度」をつける。
   - 高: 「別途協議」「甲の判断による」「その他一切」のように、基準や上限を決めていない。または、わたしの側だけに重い負担がある。または、お金に関わるのに額や期日がない。
   - 中: 数字や期日はあるが、わたしの状況(報酬、作業量)と比べて重そうに見える。
   - 低: 額、期日、範囲がはっきり書かれていて、片方に偏っていない。
   迷ったら、軽い方ではなく重い方につける。理由は一言で添える。
5. 「高」と「中」の箇所ごとに、相手に聞く質問文を作る。
   - 条文の番号と、その条文のどの言葉が気になるかを引用して示す。
   - 質問は1つの箇所に1〜2個。「はい」「いいえ」か、数字で答えられる形にする。
   - 「書かれていない」箇所は、「この契約書には〇〇の定めが見当たりませんが、どう扱う想定ですか」と聞く形にする。
6. 最後に、弁護士や公的な相談窓口に持っていく方がよさそうな箇所を、最大3つまで選んで理由を書く。

# 出力の形
次の順で、日本語でやさしく書く。専門用語を使ったら、かっこで言い換える。
1. 条文の一覧(番号、見出し、どの観点か)。表で。
2. 確かめたい箇所の表。列は「条」「気になる言葉」「確かめたい度」「理由」。度の高い順に並べる。
3. 書かれていないことの箇条書き(観点の名前だけで足りる)。
4. 相手に聞く質問文。箇所ごとに、そのまま送れる文面で。
5. 専門家に持っていく箇所(最大3つ)。
全体で1,500字ほどに収める。

# やらないこと
- 「問題ない」「違法」「無効」「守られる」など、法律の判断を言い切らない。判断が必要な所は「ここは専門家に確かめてください」と書く。
- 貼られていない条文、金額、日数、法律名や判例を作らない。貼られた文章にないことは「貼られた範囲では分かりません」と答える。
- Web検索やファイルの読み取りはしない。貼られた文章だけで進める。
- 契約の修正案や、サインしてよいかどうかの結論は出さない。
- 最後に、次の一文を毎回添える。「これは確かめる箇所を探す手伝いで、法律の判断ではありません。サインの前に、相手や専門家に聞いてください。」

# 貼り方の見本(架空の会社・架空の条文です。実際の契約書ではありません)
わたしの状況:
- 仕事の内容: 在宅で書籍原稿の校正
- 報酬と作業量の目安: 1冊あたり3万円、月に2冊ほど
- 相手との関係: 初めて取引する会社

契約書の文章:
甲は株式会社みずうみ出版(架空)、乙は契約する個人。
第3条(報酬)報酬は、甲が検収した月の翌々月末日に支払う。ただし、甲が品質に不足があると判断した場合は、減額できる。
第5条(修正対応)乙は、甲が求める修正に、回数の制限なく無償で応じる。
第7条(著作権)本業務の成果物に関する一切の権利は、甲に帰属する。
第9条(秘密保持)乙は、本契約の存在および内容を、契約終了後も期限なく第三者に開示してはならない。
第11条(解約)甲は、30日前の通知により本契約を解約できる。乙が解約する場合は、甲の書面による承諾を要する。
(株式会社みずうみ出版は架空の会社です。以上は見本です。)

架空の契約書で返ってきた、確かめたい箇所の表

見本の5条(報酬、修正対応、著作権、秘密保持、解約)を、Claudeで動かしました。見本では、甲が契約を出してきた会社、乙が契約する個人です。表の「甲」「乙」もそのとおりに読んでください。返ってくるまで約15秒です。条文の一覧、確かめたい箇所の表、書かれていないこと、質問文、専門家に持っていく箇所が、依頼文で決めた順に並びました。

確かめたい箇所の表は、返ってきたまま載せます。

条
気になる言葉
確かめたい度
理由
第5条
「回数の制限なく無償で」
高
修正の上限がなく、お金に関わるのに追加の支払いもない。負担がわたしだけにある
第3条
「甲が品質に不足があると判断した場合は、減額できる」
高
基準も減額の上限も、甲の判断だけ。お金に関わる
第11条
「乙が解約する場合は、甲の書面による承諾を要する」
高
甲は30日前の通知で解約できるが、乙は承諾が要り、双方で重さが違う
第7条
「一切の権利は、甲に帰属する」
中
範囲が広い。実績として載せてよいかは貼られた範囲では分かりません
第9条
「契約終了後も期限なく」
中
期限がなく、わたしの側だけの義務
第3条
「検収した月の翌々月末日」
中
期日はあるが、検収がいつ行われるか書かれていない。支払いが遅くなる可能性がある

「高」に入った3つは、修正の回数に上限がないこと、減額が相手の判断だけで決まること、解約の条件が片側だけ重いことでした。どれも依頼文の「基準や上限を決めていない」「わたしの側だけに重い負担がある」という基準どおりに拾われています。ただし見本は、この基準に当たる条文を入れて作った例なので、実際の契約書でも同じように拾えるとは限りません。第9条の「期限なく」は、依頼文の基準では「高」にも当たりうる所なので、度合いは目安として受け取ってください。

条文を順に読み通さなくても、見るべき行が6つに絞られているわけです。サインを迫られて焦っているときほど、この絞り込みが助かります。

目を留めたいのは一番下の行です。「翌々月末日」と期日が書いてあると、それだけで安心してしまいませんか? 実際は、検収がいつ行われるかが書かれていないと「中」で指摘されていました。同じ第3条でも減額と支払日は別の行なので、気になる言葉ごとに聞けます。

書かれていないことこそ、契約書の質問にしておく

書いてある条文を疑うより、書いていないことに気づくほうが難しいですね。今回は、表とは別に次の4点が「書かれていない」として挙がりました。

  • 作業の範囲(何をどこまでやるか。修正以外の定め)
  • 納期(遅れたときの扱いを含む)
  • 損害賠償(ミスがあったときの責任の扱い)
  • やめ方のうち、契約期間と、他社の仕事の制限

自分で気づくのは難しい項目ばかりなので、先に拾ってもらえると心強いです。しかも、聞き方の文面まで用意されます。書かれていない点への質問文は、どれも同じ聞き方にそろっていました。

「この契約書には納期の定めが見当たりませんが、どう扱う想定ですか。」


「この契約書には損害賠償の定めが見当たりませんが、どう扱う想定ですか。」


「この契約書には契約期間と、他社の仕事の制限の定めが見当たりませんが、どう扱う想定ですか。」

「見当たりませんが、どう扱う想定ですか」は、相手を責める響きがなく、相手の考えを聞く形です。初めて取引する相手にも送りやすい文面です。

書いてある条文への質問は、気になる言葉を引用したうえで、多くが「はい」「いいえ」か数字で答えられる形になっていました。

「第5条の『回数の制限なく無償で』について、修正は何回まで、と上限を決めることはできますか。上限を超えた修正は、別に報酬が出ますか。」


「第3条の『品質に不足があると判断した場合は、減額できる』について、減額の基準は決まっていますか。減額の上限は何割までですか。」

質問文は、書かれていない4点のうち3点に付き、条文5つの分と合わせて8か所でした。作業の範囲には付かなかったので、ここは自分で聞き方を足すことになります。「何回まで」「何割まで」と数字で聞いているので、返事がぼやけにくくなります。自分で文面を考えなくても、コピーして送れる形で手元に残ります。

サイン前の契約書、質問を持っていく先と使う前の注意

質問を全部、弁護士に持っていくより、絞ったほうが話は早く進みます。今回の出来上がりでは、相手に聞く質問とは別に、専門家に持っていく箇所が3つに絞られていました。第3条の減額、第5条の無償修正、第11条の解約で、どれも「高」に入った箇所です。

まず相手に質問文を送り、返事を読んでも引っかかる所だけを、弁護士や公的な相談窓口に持っていく。この順にすると、相談の場で何を聞くかがはっきりします。AIの表と質問文、相手の返事をまとめて持っていくと、聞きたいことが伝わりやすくなります。

出来上がりの最後には、依頼文で添えるよう決めてある「これは確かめる箇所を探す手伝いで、法律の判断ではありません。サインの前に、相手や専門家に聞いてください。」という一文が、今回も付いていました。表に「高」が並んでいても、サインしてはいけないという意味にはなりません。「低」ばかりでも、安心してよいという保証にはなりません。

わたしが試したのは、架空の会社の架空の5条で1回だけです。実際の契約書は条文の数も言い回しも違うので、AIの表は聞くことを整理する下書きとして使い、最後の判断は相手や専門家との話で決めてください。

次に業務委託契約書を受け取ったら、社名と個人名を伏せて、まず1回貼ってみてください。依頼文はコピーして貼るだけですし、返ってきた質問文のうち1つを相手に送るだけでも、サインの前に話せることが増えます。