内定の年収、交渉していいのはどこまで?

Asahi
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内定後でも、年収交渉はできます。言いやすいのは、面接で伝えた希望額や今の年収との差など、数字で示せるものを根拠にする範囲です。通るかは会社しだいなので、譲るのをやめる境目(引く線)は先に決めます。内定通知と今の状況をAIに貼ると、交渉の余地、基本給が動かないときに聞ける条件、引く線、送る文面まで出る依頼文を載せます。

内定後の年収交渉は、していいのか?

内定通知の年収を見ても、安いのか妥当なのか、言っていいのかが分かりません。回答期限が迫るなか、転職エージェントを通していると、直接は尋ねにくい分、迷いも増えます。

内定の位置づけは、厚生労働省のQ&Aに整理があります。内定通知のほかに契約のための手続きが予定されていない場合は、内定の時点で労働契約が成立したと認められることが多く、企業からの取り消しは解雇にあたる、という内容です。ただ「交渉しても大丈夫」とまでは書かれていないので、ここは頼み方を整える理由として読むことにしました。

厚生労働省「採用の内定・内々定について、取消や辞退する場合の注意点」

では、どこまで言ってよいのか。根拠にしやすいのは、数字や記録で示せるものです。たとえば今の年収、面接で伝えた希望額、出典のある相場。生活が苦しいといった気持ちは、根拠にしないほうが話を整理しやすくなります。他社の金額は、実際にあって金額と期限を正確に言えるときだけ使います。

もう1つ分けておきたいのが、確認と交渉です。固定残業代が何時間分か、賞与がいつからどう出るかを聞くのは、条件を正しく知るための確認で、金額のお願いとは別ものです。確認しただけで済む人もいれば、確認して初めて交渉の根拠が見つかる人もいます。

交渉して印象が悪くならないか、取り消されないかは、受け取り方が会社しだいで、ここでは言い切れません。できるのは、期限内に、確認とお願いを分けて、丁寧に頼むところまでです。

通知書を読んで分からない点が残っているなら、まだ確認の段階です。

年収交渉の前に、提示額を今の年収と同じ物差しで並べる

今の年収は基本給・実費の残業代・賞与、内定の提示は基本給・固定残業代・手当・賞与に分けて、同じ物差しで比べる図

固定残業代が入った額は、そのまま比べられない

架空の例で見てみます。提示年収460万円、今の年収430万円で、差は30万円。ただし提示額には固定残業代4万円(月20時間分)が入っていて、今は残業代が実費で月3万円ほど出ています。

この30万円は「今と同じく月20時間残業した場合」の差です。固定残業代を除いた月給同士で比べると差は月2万円、在宅勤務手当1万円も除くと月1万円まで縮みます。

求人票については、固定残業代を除いた基本給の額、固定残業の時間数と金額の計算方法、超えた分を追加で払うこと、の3点を示すよう厚生労働省が求めています(固定残業代の表示についてのリーフレット)。求人の段階の決まりですが、通知書を読むときも同じ3点を探すと見落としにくくなります。

1年目だけ、年収が下がることがある

賞与には算定期間があります。たとえば1月に入社して、6月に払われる賞与の算定期間が前年10月〜3月なら、在籍は約3か月です。満額で出るのか、按分か、出ないのかで、1年目の年収が今を下回るかどうかが変わります。

入社日を決める前に、賞与の算定期間を確かめておくと、1年目の見え方が変わります。

年収交渉の準備に使う依頼文

内定の条件や今の給与などを入れると、比べ方から送る文面までを10の見出しで返すよう書いてあります。

# 内定の年収を見極めて、引く線と送る文面まで決める

## お願いしたいこと
私が受け取った内定の条件と、今の自分の状況を下に貼ります。交渉する余地がどこにあるか、基本給が動かないときに代わりに聞ける条件、どこで引くかを整理し、先方に送る文面を1通作ってください。強く押すための案ではなく、準備してから落ち着いて話すための案をお願いします。

## 入力(ここに貼る)
分からない項目は「不明」、ないものは「なし」と書きます。

1. 内定の条件: ここに内定通知書・労働条件通知書の内容を貼る(提示年収、月給の内訳〔基本給・固定残業代とその時間数・各種手当〕、賞与の決め方〔基本給の何か月分か、業績で変わるか、算定期間〕、等級やグレード、試用期間とその間の条件、入社日、勤務地や在宅の可否、回答期限)
2. 求人票の給与欄: ここに求人票の想定年収の幅やモデル年収を貼る
3. 今の給与: ここに源泉徴収票の支払金額、または給与明細の内訳(基本給・残業代・手当)と、直近1年の賞与の実績、月の残業時間のおおよそを貼る
4. 自分で調べた相場: ここに調べた数字と出典を貼る(例: どのサイトの、どの職種の、いつ見た数字か)。調べていなければ「なし」
5. 他社の状況: ここに他の選考の段階や、他の内定の金額と期限を貼る。なければ「なし」
6. 自分の線: ここに「これを下回ると生活が回らない年収」と、年収以外で大事にしたいこと(入社日、在宅、残業の少なさなど)を書く
7. 連絡の経路: 企業と直接やりとりしているか、転職エージェント経由かを書く
8. これまでに伝えたこと: ここに面接や応募書類で伝えた希望年収と、エージェントに話した内容を書く

## 数字の扱い
- 相場の数字は、入力4にあるものだけを使ってください。入力4が「なし」のときは相場との比較をせず、「相場は未確認」と書いたうえで、どんな種類の情報を見ればよいか(同じ職種の求人票の年収の幅、エージェントへの質問など)だけを挙げてください。
- 計算は入力にある数字だけで行い、式も書いてください。
- 「不明」の項目は推測で埋めず、「先方に確認すること」に回してください。

## 手順
1. 提示額を分ける。提示年収を、基本給、固定残業代、手当、賞与に分けて、月額と年額の表にする。賞与が業績で変わるなら、決まっている分と変わる分を分ける。
2. 今の年収と同じ物差しで並べる。今の給与も同じ分け方にする。残業代が実費で出ている今と、固定残業代が入った提示額は、そのまま比べると差を見誤るので、次の2つを出す。
   - 固定残業代を除いた月給同士の差
   - 今と同じ残業時間で働いたときの年収の差(固定残業の時間数を超えた分が別に出るかは、通知書に書いてなければ確認事項にする)
3. 初年度の手取りの形を見る。入社日と賞与の算定期間から、1年目の賞与が満額になるかを確かめる。満額にならないなら、1年目の実際の年収の見込みを別に出す。今の会社の賞与の支給日と入社日の関係も見る。
4. 交渉の余地の手がかりを拾う。次の5つを入力から確かめ、当てはまるものに印をつける。
   - 提示額が求人票の幅のどのあたりか
   - 面接で伝えた希望年収との差
   - 他社の内定の金額
   - 等級の決まり方(通知書に等級があるなら、なぜその等級かは聞いてよい)
   - 入力4の相場(あるときだけ)
5. 引く線を先に決める。交渉の連絡を出す前に、3つの金額を決める。
   - 受ける線: この額なら交渉せずに受ける
   - お願いする額: 先方に伝える目標
   - 最低線: これを下回るなら辞退も考える
   最低線は私が決めるものなので、入力6と入力5から候補と根拠を示すところまでにしてください。
6. 基本給が動かないときの代わりの条件を挙げる。入力から当てはまるものだけを選ぶ。候補は、等級の見直し、入社時の一時金、試用期間中の条件、1年目の賞与の扱い、入社日の調整(今の会社の賞与を受け取ってからの入社など)、入社後の最初の評価の時期と昇給の見通し、在宅や通勤などの手当。それぞれに、聞き方の一文と、決まったら書面(条件を直した通知書やメール)で残すことを添える。
7. 文面を作る。経路に合わせて1通だけ作る。
   - 企業と直接なら、採用担当あてのメール
   - エージェント経由なら、エージェントあてのメッセージ(企業に伝えてほしいことと、伝えないでほしいことを分けて書く)
   順番は、お礼、入社したい気持ち、確認したいこと、お願い(1〜2点)、その根拠(事実だけ)、期限内に返事をすること。
8. 返事が来たあとを決めておく。満額で通ったとき、一部だけ通ったとき、まったく動かなかったときの3つについて、手順5の線と照らして次の一手を書く。

## 判断基準
- 交渉するか、確認だけにするか
  - 次のどれかに当てはまれば、金額のお願いをする: 今と同じ残業時間で比べると今の年収を下回る、面接で伝えた希望年収より低い、他社の内定のほうが高い、入力4の相場より明らかに低い
  - どれにも当てはまらず、提示額が受ける線を超えているなら、金額のお願いはせず確認だけにする
  - どちらの場合も、固定残業代や賞与の決め方で分からない点は聞く。確認は交渉とは別のものとして扱う
- 根拠に使えるもの、使えないもの
  - 使う: 今の年収、面接で伝えた希望額、他社の提示額、出典つきの相場、自分の経験と仕事の関係
  - 使わない: 生活が苦しい、もっと欲しい、などの気持ち
- 他社の内定を文面に出すか
  - 実際にあって、金額と期限を正確に言えるときだけ出す。選考中のものは「選考が進んでいる」とだけ書くか、書かない
- お願いの数
  - 基本給のお願いをするなら、代わりの条件は1つだけ添える。候補を全部並べない
- エージェント経由のとき
  - 企業には直接連絡しない
  - エージェントには、お願いする額と根拠を伝える。最低線まで伝えるかは私が決める(伝えるとその額で落ち着きやすい点を書き添える)
- 期限
  - 期限内に答えが出せそうにないときは、交渉より先に、回答期限を延ばせるかを聞く
  - 最初の連絡は、期限の数日前までに出す
- 先方が「これ以上は難しい」と返してきたとき
  - 同じお願いを繰り返さない。代わりの条件を1つだけ聞き、それも難しければ手順5の線で受けるか決める

## 出力の形
次の見出しの順で書いてください。文面以外はおおむね2,500字以内にしてください。

1. 提示額の内訳(表: 項目/月額/年額/決まっているか変わるか/メモ)
2. 今との比べ方(表と、気づいたことを3行以内)
3. 1年目の見込み(賞与が満額にならない場合だけ。式つき)
4. 先方に確認すること(箇条書き、5つまで)
5. 交渉するかどうか(結論を1行、理由を3つまで)
6. 3つの線(受ける線/お願いする額/最低線の候補。それぞれ金額と根拠)
7. 基本給が動かないときの代わりの条件(表: 条件/聞き方の一文/書面で残すこと。2〜4つ)
8. 送る文面(件名つき、400〜600字)
9. 返事が来たあと(満額・一部・動かないの3つ、各1〜2行)
10. 入力で足りなかったもの(あれば)

## やらないこと
- 相場、平均年収、業界の水準などの数字を作らない。調査や統計の名前も挙げない
- 入力にない手当や制度を「あるはず」と書かない
- 「この額は安すぎる」「強く出ましょう」のようにあおらない
- 文面に、実際にない他社の内定や、実際より高い今の年収を入れない
- 「交渉は必ず通る」「内定は取り消されない」と言い切らない
- 条件が法律に合っているかを言い切らない。気になる点は「通知書で確認する」「必要なら労働基準監督署などの公的な相談窓口に聞く」と書くにとどめる
- 回答期限を過ぎてから返事をする前提で組み立てない

## 題材の例(架空)
以下はすべて架空の会社・架空の人物の例です。使い方の見本として置いています。自分の内容に置き換えて使ってください。

1. 内定の条件: 株式会社ミナトシステムズ(架空)、業務改善の職種。提示年収460万円。月給30万円(基本給25万円、固定残業代4万円〔月20時間分、超えた分は別に支給〕、在宅勤務手当1万円)。賞与は年2回、基本給の年4か月分(標準評価の場合。業績により変わる)。算定期間は4〜9月分を12月に、10〜3月分を6月に支給。等級G3。試用期間3か月(条件は同じ)。入社日2027年1月4日。在宅は週2日まで。回答期限は1週間後
2. 求人票の給与欄: 想定年収420万〜600万円
3. 今の給与: 中堅メーカーで生産管理、年収430万円。基本給24万円、残業代は月平均3万円(月20時間前後)、賞与は直近1年で106万円。今の会社の冬の賞与は12月10日支給
4. 自分で調べた相場: なし
5. 他社の状況: 1社が最終面接待ち
6. 自分の線: 430万円を下回るのは避けたい。在宅が週2日あるのは大事
7. 連絡の経路: 転職エージェント経由
8. これまでに伝えたこと: 面接で希望年収は480万円と伝えた

貼り方

自分の内容を書き込む場所は、入力欄ではなく、依頼文の末尾の8行です。「題材の例(架空)」の8行は、「内定の条件:」などのラベルを残したまま、中身を自分の内容に書き換えます。氏名・会社名・担当者名は伏せて貼って構いません。上の入力欄の「ここに〜を貼る」は何を入れるかの説明なので、そのままにします。

見出しや説明文に「架空」が残っても、依頼文の先頭に次の一文を足して、書き換えた8行を入力として扱わせます。

(以下の依頼文の末尾にある「題材の例(架空)」を、私の入力としてそのまま使ってください。)

分からない項目は、空欄にせず「不明」、ないものは「なし」と書きます。不明の項目は推測で埋めず「先方に確認すること」へ回すよう、依頼文に書いてあります。

試したときは、この一文を先頭に足し、例の8行は書き換えずに貼りました。書き換えた入力では試していません。

架空の内定で年収交渉の準備を通した結果

試したのは、Claude(Web検索なし)に架空の題材を貼った1回です。指定した10の見出しが順番どおりに出て、かかったのは約2分でした。題材は上の例のままで、エージェント経由、面接では希望年収480万円と伝えている設定です。

提示額と今の年収の差は、賞与でなく月給から来ていた

項目
今
提示
差
基本給(月)
24万円
25万円
+1万円
固定残業代を除いた月給
24万円
26万円(25+1)
+2万円(年+24万円=2万×12)
残業代(月20時間前後)
3万円(実費)
4万円(固定。20時間に含まれる)
+1万円
賞与(年)
106万円(直近1年の実績)
100万円(標準評価)
−6万円
年収(今と同じ月20時間で働いた場合)
430万円(24×12+3×12+106)
460万円
+30万円

表の下には「差の+30万円は月給側から来ていて、賞与は今より6万円少なく、しかも業績で変わる」とありました。

内定の年収が1年目は今より低くなるかもしれない

入社日と賞与の算定期間のずれは、依頼文の手順にそって出力が自分で拾っていました。式つきの部分です。

6月分が在籍月数で按分される場合: 360万+50万×3/6+50万=435万円 6月分が支給されない場合: 360万+0+50万=410万円

6月分が出なければ410万円で、今の430万円を20万円下回ります。通年では+30万円なのに、最初の1年だけは逆になる。これが見えると、何をお願いするかが変わってきます。

年収交渉で基本給が動かないとき、代わりに頼む条件は1つだけ

条件
聞き方の一文
書面で残すこと
1年目の賞与の扱い
「2027年6月支給の賞与について、在籍期間にかかわらず標準評価の額として扱っていただくことは可能でしょうか」
6月支給分の計算方法と額を、条件を直した通知書かメールで受け取る
等級の見直し
「G3となった理由と、G4とする余地があるかを伺えますか」
決まった等級と、それに応じた基本給を直した通知書で受け取る
最初の評価の時期と昇給の見通し
「入社後最初の評価はいつで、その結果で基本給が見直されるのはいつ頃でしょうか」
評価の時期と昇給が反映される月を、メールで受け取る

候補は3つ出ましたが、基本給のお願いに添えるのは1年目の賞与の扱いだけ、と絞ってきました。依頼文で「代わりの条件は1つだけ添える」と決めてあるからです。

転職エージェントあての年収交渉の文面で、企業に伝えないでほしいことを分けた

文面はエージェントあてで、企業に伝えてほしい3点と、伝えないでほしいことを分けて書いてありました。お願いの部分と、分けた部分を抜き出します。

ご相談: 提示年収460万円を、面接でお伝えした希望年収480万円に近づけていただくことは可能か。基本給の見直しが難しい場合は、6月支給の賞与を在籍期間にかかわらず標準評価の額として扱っていただけないか


一方、私が下限として考えている金額と、他社の選考状況は、企業様にはお伝えしないでください。

下限の額をエージェントに伝えるかは本人が決めること、とも添えてありました。伝えると、その額で話が落ち着きやすくなるからです。

年収交渉で、AIに任せないことは?

比べる計算と文面の下書きはAIに任せ、引く線・相場を調べること・法律の確認は自分で決めることを示す図

引く線は自分で決める

出てきた線は、受ける線が480万円、お願いする額も480万円、最低線の候補が430万円でした。受ける線とお願いする額が同じになったのは、この題材では面接で希望額を伝えてあったためとみられます。

最低線を通年の額で見るか、1年目の額で見るか(この題材では460万円と410万円)は本人が決めること、と返ってきました。最低線は候補と根拠を示すところまで、と依頼文で止めてあるので、最後の判断は人の側に残ります。

相場の数字は自分で調べて貼る

題材では相場を「なし」にしたので、出力は「相場は未確認」と書き、数字は出しませんでした。見る先として挙がったのは、同じ職種の求人票に出ている年収の幅と、エージェントへの質問です。相場を根拠にしたいなら、自分で調べた数字と出典を入力4に貼ります。公的統計と、転職サイトが公開している集計なら、たとえばこのあたりです。

全体の平均は、自分の職種や等級の根拠にそのままはなりません。どの職種の、いつの数字かまで書いて貼ります。

法律に合っているかは、通知書と公的な窓口で

条件が法律に合っているかを、依頼文は言い切らないように書いてあります。気になる点は通知書で確かめ、必要なら労働基準監督署などの公的な相談窓口に聞く、という扱いです。

年収交渉は、強気より準備が先です

交渉するかどうかを決める前に、何と何を比べるか、どこで引くかを決めておく。そこまで済んでいれば、送る文面は落ち着いたものになります。

回答期限までに答えが出せそうにないなら、期限を延ばせるかを交渉より先に聞きます。あなたの通知書の回答期限は、いつですか?