銀行の送金アプリが「完了」と表示されているのに、相手の口座には何も届いていない——そんな状況なら、すぐに「あれ、おかしい」と気づきますよね。
でも、自分で作ったツールが「成功」と言い続けているとき、あなたはすぐに疑いを向けますか。
あなたは今、こんな状態になっていませんか?
• 自動化ツールのログに「成功」と出ているから、実際の結果を確かめたことがない • エラーが出ていないから、正しく動いていると判断している • 自分で作ったツールは、外部のサービスより信頼できると感じている • 「処理件数が増えている」と「処理が正しく終わった」を同じことだと思っている
先に結論を言います。
ツールが「成功」と報告していることと、実際に成功していることは、まったく別の問題です。
この記事では、わたしがXのフォロー解除を自動化したときに起きた、2種類の誤動作の実話を書きます。
気づくまでに時間がかかった理由と、どう修正したかも、正直にお伝えします。
ことの始まりは「フォロー解除」の自動化だった
手作業だと数時間が飛ぶ
Xのフォロー整理をしようとしたとき、フォローしている人数は数百件ありました。
1アカウントずつ確認してクリックしていくと、それだけで数時間が消えます。
しかも、集中が続かない。途中でスマホを置いてしまいます。
「これは自動化したほうがいい」と思って、ツールを作ることにしました。
AIを使えばコードほぼ0行で作れる時代ですから、AIに部品を組んでもらいながら進めました。
実際にわたしがやったのは「こういう条件の人を解除して」とAIに伝えることがほとんどです。
「直近3ヶ月間、ポストがない」「特定のワードをプロフィールに含む」といった条件を伝えました。
技術の専門知識がなくても、ツールは形になっていきました。
条件の整理と、AIへの指示がほとんどの作業でした。
自動化ツールの便利さは、「やること」を指示したら、あとは動き続けてくれることです。
手を動かし続けなくていい——これが一番大きなメリットです。
ただし、「動き続ける」ということは、「間違ったまま動き続ける」可能性もあるということでした。
このことに気づいたのは、しばらく後のことです。
ツールが動き始めた直後の感覚
動かし始めてすぐ、ログ(処理の記録)に「解除成功」という文字が並び始めました。
1件、また1件と記録が積み上がっていきます。
「ちゃんと動いてる!」と素直にうれしくて、別の作業に移りました。
処理件数が増えていくのを横目で見ながら、「自動化って本当に便利だな」と思っていました。
そのまま約10日間、ログを眺めるだけで満足していたんです。
数百件のフォローが処理されていくはずと思っていたわたしは、「あとは自動で終わる」と信じていました。
今思えば、ここが最初の油断でした。
ツールの動きを「眺める」だけで「確認した」と思い込んでいたんです。
見ることと、確かめることは、ぜんぜん違うのに。
「件数が増えている」という事実が、安心感を作っていました。
数字が動いているということが「正常に動作している証拠」に見えていたんです。
でも数字は、処理が「実行されたこと」しか教えてくれません。
処理が「正しく終わったこと」は、別の確認が必要でした。
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気づきのきっかけ——「この人、まだフォローしてる?」
偶然スクロールしていたら名前が見えた
ある日、Xのフォロー一覧をなんとなく眺めていたとき、解除したはずの名前が目に入りました。
「あれ、この人もう外したはずなんだけど……」と思って、処理の記録を開きました。
ツールのログにはたしかに「解除成功」と書いてあります。でも実際の一覧には、その名前がまだあります。
最初は「わたしの勘違いかな」と思いました。
「この人のこと、解除したと思い込んでいただけかも」と、自分の記憶のほうを疑いました。
でも、よくよく見ると、記録はちゃんと残っているんです。
「〇〇アカウント、解除済み」という記録が、ログの中に明確にあります。
記録には「この人を解除した」とはっきり書いてある。でも実際には、フォローしたまま。
この矛盾が、最初の違和感でした。「おかしい」と思った瞬間でもありました。
そして気づいてからは、妙に落ち着かない気持ちが続きました。
「ほかにもズレているところがあるんじゃないか」という不安です。
1件だけじゃなかった
「1件だけなら偶然かも」と思いながら、記録と実際のフォロー一覧を手動で照らし合わせてみました。
「解除成功」と記録されているのに、実際にはフォローが残っている相手が複数件出てきました。
記録上の処理件数と、実際に解除されていた件数が、一致していないんです。
これは「なんかおかしい」ではなく、明らかな誤動作でした。
「えっ、マジか……」という感じでした。自分で作ったツールを初めて正面から疑った瞬間です。
と同時に、少しぞっとしました。
「約10日間、ずっとこの状態だったのか」という事実が、じわじわ来たんです。
毎日ログを眺めていたのに、何も気づかなかった。それが一番しんどかったです。
2種類の誤動作が同時に起きていた
誤動作①——「成功」と出ているのに解除されていない
最初に気づいたのは、「成功記録 ≠ 実際の解除」という問題でした。
ツールはフォロー解除のリクエストを送った段階で、「成功」と記録していました。
でも、X側がそのリクエストを受け付けたかどうかを、確認していなかったんです。
「送った」と「届いた」は違います。この区別がツールの設計から、ごっそり抜けていました。
配達に例えるなら、荷物を玄関前に置いた記録だけがあって、相手が受け取ったかどうかは誰も確認していない状態です。
送り手の記録と、受け手の現実が、ずっとズレていたわけです。
少し技術的な話になりますが、X側が返す「受け付けた」か「拒否した」かの信号を見ずに、リクエストを送った時点で成功としていました。
たとえばXのAPIはリクエストが多すぎると「しばらく待ってね」という信号を返すことがあります。
ツールはその信号を見ていなかったので、「拒否された」ものも「成功した」として記録していました。
この設計のすき間が、「解除成功」の記録を量産していた原因でした。
解除できていない相手が複数件あることを確認したとき、正直引きました。
「約10日間、動いていたのにほとんど意味がなかった」という事実が、じわじわ来ました。
ログの件数が増えていくのを見ながら安心していたあの時間が、全部やり直しになりました。
自動化のはずが、手動でやるより時間がかかる結果になってしまったわけです。
誤動作②——解除した相手を再フォローしていた
さらに調べていくと、もう1つの誤動作が出てきました。
一度フォロー解除した相手を、ツールがまた自動でフォローし直していたんです!
これは完全に想定外でした。解除したはずの相手が、翌日にはフォロー一覧に戻っているんです。
ツールの設計上、特定の条件を満たした相手を「フォロー対象」として拾う処理が残っていました。
解除済みかどうかを確認するステップが、その手前に入っていなかったんです。
「解除する処理」と「フォローする処理」が、お互いの存在を知らないまま動いていました。
解除処理と再フォロー処理が、同時進行で動いていた。
ログを眺めているだけでは「解除成功」の記録しか見えないので、まったく気づけませんでした。
再フォローの処理は別のログに記録されていて、普段見ていた画面には表示されていなかったんです。
見ていたのは「解除ログ」だけで、「フォローログ」は別の場所にありました。
なぜ同時に起きていたかというと、2つの処理が独立して動いていたからです。
「解除する」と「フォローする」は、本来なら互いに状態を確認し合う必要があります。
でも、2つの処理はそれぞれ単独で動いていて、相手の結果を見ていませんでした。
誤動作①と誤動作②が重なることで、表面上は「なんとなく動いているように見える」状態になっていました。
これが、気づきを遅らせた一番の原因です。
なぜ約2週間も気づかなかったのか
「動いている」と「正しく動いている」を混同していた
毎日ログを開いていました。エラーも出ていないし、件数も増えている。
「ちゃんと動いているな」と思っていました。
でも「動いている」ことと「正しく動いている」ことは、別の話です。
ログに記録があることと、その処理が正しく終わっていることも、同じではありません。
出力があれば成功だと思い込んでいました。
「ログがある = 成功した」という誤解が、確認をやめさせていたんです。
これは、自動化ツールを使い始めた人がよくはまるパターンだと思います。
エラーが出ていないと「正常」と判断してしまうんです。
「動いている」と「正しく動いている」のどちらを確認するかで、見えてくるものがまったく変わります。
この問いの違いが、今回の経験で一番刺さったことでした。
ログを読むだけでは、「処理が実行された記録」しかわかりません。
「処理の結果が現実に反映されているか」は、現実の状態を見にいかないとわかりません。
エラーは「何かが明らかにおかしい」ときに出るものです。
「処理はできているけど、意味がない」ときは、エラーにならないことが多い。
だから「エラーがない = 正常」という判断は、思っているより危うい判断なんです。
自動化のメリットである「ほっておける」という性質が、確認の習慣を消していきます。
「任せたから大丈夫」という感覚が、だんだんと根付いてしまうんですよね。
自分で作ったツールだけ、疑うことを止めていた
これ、後から気づいてしんどかったです、、、
前職でCMO(マーケティング最高責任者)をしていたとき、広告代理店からレポートを受け取るたびに実数で問い返していました。
「この数字の元データはどこですか?」
「計算ロジックを見せてください」と、必ず根拠を確認していたんです。
数字だけではなく、その背景にある仮定や定義まで確認していました。
「コンバージョン」の定義が代理店と自分で違うことが、実際に何度もありました。
同じ数字でも、定義が違えば意味が変わります。だから常に問い返すクセがついていました。
でも、自分で作ったツールの出力は、そのまま信じていました。
「自分が設計したから大丈夫」という安心感が、確認のクセをいつの間にか消していたんです。
他人のレポートには疑いを向けられるのに、自分のツールには向けない——これが確認の盲点でした。
「自分が指示したとおりに動いているはず」という思い込みは、設計ミスがあっても発動します。
客観的に見る目が、一番届きにくい場所がそこなんだと思います。
後から振り返ると、「自分で作ったから信頼できる」という感覚が、チェックの手を止めていました。
便利なツールを作れたときほど、その感覚は強くなる気がします。
どうやって直したか
修正①——X側の応答を受け取ってから「成功」と記録するようにした
まず「成功かどうか」の判断基準を変えました。
以前は、リクエストを「送った」段階で成功と記録していました。
修正後は、X側から「受け付けた」という応答が返ってきてから、成功と記録するようにしました。
「送った」から「届いた」へ、確認のタイミングを変えるということです。
一歩先まで見てから記録する仕組みに変えました。
また、「拒否された」場合には記録を「失敗」とマークして、後から再試行できるようにしました。
失敗した記録が手元に残るので、「何が失敗したか」が見えるようになりました。
これで「成功記録 ≠ 実際の解除」という問題が解消されました。
記録と現実のズレが、かなり小さくなりました。
修正後に実際に照らし合わせてみると、記録と現実の一致率が大幅に上がっていました。
「これが本来あるべき状態だったんだな」と、当たり前のことに気づかされた気分でした。
応答を確認してから記録する——このひと手間が、信頼できる記録を作る土台になります。
修正②——記録と照らし合わせて、解除し直す仕組みを入れた
次に、記録と実際の状態を照らし合わせるステップを追加しました。
「記録上は解除済み」なのに、実際にはまだフォローしている相手を検出します。
検出したら、もう一度解除を試みる仕組みです。
さらに、解除済みの相手をフォロー対象として拾わないよう、チェックのロジックも修正しました。
「一度解除した相手を再フォローする」という誤動作は、これで止まりました。
2つの誤動作を直した後、記録と実際の一覧を照らし合わせ直しました。
今度は、記録と現実がほぼ一致していました。
「正しく動いているかどうか」を確かめるまでに、余計な手間と時間がかかりました。
最初から「照らし合わせる仕組み」を入れておけばよかった、と心から思いました。
修正後は、定期的に「記録 vs 現実」の照合を走らせるステップも設けました。
1日1回、処理した件数と実際の変化を突き合わせる仕組みです。
これが動いていれば、翌日にはズレを検出できます。
10日間気づかなかった状況とは、まったく違う速さで問題を捉えられるようになりました。
2つの誤動作が同時だったから気づくのが遅れた
1つだけなら、もっと早く気づけた
今回のポイントは、誤動作が2種類同時に起きていたことです。
誤動作①だけなら、フォロー解除がまったく進まないことにもっと早く気づいたはずです。
でも誤動作②が重なることで、「減っていないのは何かほかの原因かも」と判断が難しくなります。
2つが組み合わさると、全体として「それなりに動いているように見える」状態になります。
完全に壊れていないから、かえって気づきにくいんです。
誤動作が1つなら「おかしい」とわかります。でも2つが重なると「どっちが原因? それとも別の何か?」
と混乱します。
複数の問題が重なると、個別には「ちょっとおかしい」でも、合わさると「なんとなく動いてる」に見えます。
これが、複合的な誤動作の怖さです。
問題が表面に出てきにくいから、検知が遅れます。
検知が遅れた分だけ、間違いが積み上がります。
もし毎日「照合するステップ」を入れていたら、2日以内に気づけたはずです。
仕組みがなかっただけで、10日間が過ぎてしまいました。
「それっぽく動き続ける」が一番怖い
自動化ツールの誤動作で一番厄介なのは、完全に止まることではありません。
エラーが出ないまま、間違い続けることです。
完全に止まっていれば「壊れた」とすぐわかります。でも動き続けていると、記録の中身を誰も疑いません。
今回はまさにその状態でした。
「解除成功」という記録が積み重なりながら、実態はほとんど進んでいなかったんです。
こういう誤動作は、気づくまでに時間がかかるほど影響が積み上がります。
一方で、この問題の裏側には別のリスクもあります。
誤動作に気づかないまま、何かの操作が積み重なっていく可能性です。
今回は「フォロー解除の失敗」でしたが、操作の種類によっては、知らないうちに大きな影響が出ることがあります。
早い段階で気づくための「照合する習慣」が、本当に大切だと実感しました。
自動化の仕組みをもっと深く知りたい方は、Claude Codeで作った自律環境の詳しい仕組みをまとめたnoteも読んでみてください。
非エンジニアが自動化ツールを使うとき、最初にやること
ツールの「成功」を最初から疑う
ツールを使い始めたばかりのとき、「動いているから大丈夫」と思いがちです。
でも、最初の3日間だけは、記録と実際の状態を手動で照らし合わせてみてください。
「一致している」と確認できてから、あとは任せればいいんです。
最初の3日間の確認が習慣になるだけで、誤動作に気づくタイミングが大幅に早くなります。
特に、SNSのアカウントへの操作、メールの送受信、ファイルの移動や削除——こういった操作は、後から取り返しのつかない誤動作が起きやすいです。
最初だけ丁寧に確認しておくことが、後の大きな手間を省きます。
「信じる前に確認する」というクセを、使い始めの3日間だけ意識してみてください。
そのクセが定着するだけで、ずいぶん変わります。
もう1つ付け加えると、「確認する」という行為自体を、ツールの中に組み込んでしまうのが理想です。
手動で照らし合わせるのは最初だけにして、しばらく慣れてきたら「照合するステップ」を自動化してしまうことを検討してください。
自動化の中に、確認する仕組みを埋め込む——これが長期的に一番ラクです。
「件数が増えている」より「何が変わったか」を確認する
確認するとき、「処理件数が増えている」だけでは不十分なことがあります。
「どのアカウントが対象になったか」「その変化が実際の状態と一致しているか」まで確認するのが、解像度の高い確認です。
この見方ができると、今回のような誤動作は早い段階で気づけます。
ツールが「1000件処理した」と言っても、その1000件が正しく処理されたかは別の話です。
100件だけサンプルで照らし合わせる——そのくらいが、精度を保つ一番シンプルな方法です。
全件を手動で確認する必要はありません。
「何件かを抜き取って現実と照らす」だけで、誤動作の兆候はつかめます。
たとえばフォロー解除なら、「最近解除したはずの5件が、実際にフォロー一覧から消えているか」だけを毎日確認するだけで十分です。
5件を確認するのに、1分もかかりません。
でも、この1分が10日間のロスを防げます。
小さな確認を習慣にすることが、自動化ツールを正しく使い続けるための一番シンプルな方法です。
「件数」から「内容」へ、確認の視点を1段階上げるだけで、見えてくるものがまったく変わります。
最後に——「信頼しているもの」を一度だけ疑ってみる
確認の盲点は、信頼している場所に生まれる
今回の話を振り返ると、「自分が作ったから信頼できる」という感覚が、盲点の原因でした。
他人のレポートや外部ツールには「本当に合ってるの?」
と疑いを向けられるのに、自分のツールには向けない。
信頼が高い場所に、確認が届かなくなる——これは自動化に慣れてきた頃に起きやすいパターンです。
使い慣れたものこそ、一番信じている。
だからこそ、使い慣れてきた頃に確認の盲点が生まれやすいんです。
これはツールに限った話ではありません。
長く使っているサービスや、毎日使っている仕組みにも、同じことが言えます。
「ずっと使っているから問題ない」という安心感が、一番の盲点を作ります。
一番長く使っているものを、一番最後に見直すパターンです。
1ヶ月に1回だけ「本当に正しく動いているか」を確かめる機会を、意識的に作ることが大切です。
定期的な照合が習慣になると、誤動作は積み上がる前に止められます。
1ヶ月に1回、「これって今も正しく動いているかな?」とツールに問いかける時間を作ってみてください。
たった5分のチェックが、大きな問題を未然に防ぐ一番の手段です。
「ログがある」を「正しく動いた」と読み替えない
自動化を使う上で、大切な問いが1つあります。
「動いているか?」ではなく、「正しく動いているか?」です。
この問いを持っているだけで、今回のような誤動作に引っかかる確率はかなり下がります。
「成功」と表示されているとき、1回だけ立ち止まって、現実と照らし合わせてみてください。
わたしも引っかかりました。でもそのおかげで、今はもう少し現実に近い確認ができるようになっています。
ログは「何をしたか」の記録です。「何が変わったか」の記録ではありません。
この区別を持ったうえで、ログと現実を照らし合わせる——これが、自動化を長く使い続けるための一番の習慣です。
自動化ツールは、正しく使えば本当に便利です。
「動かしたら任せる」から「動かしながら確認する」へ、少しだけ意識を変えてみてください。
「任せる」前に「確認する」を1回だけ挟む——それだけで、ずいぶん変わりますよ。
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