「またレイオフか......」──テック系のニュースを開くたびに、そんなため息が出ていませんか?
Xのタイムラインにはリストラの報告が並び、知り合いのPMが「枠が凍結された」と嘆いている。 なのに、求人サイトを開くとPMのポジションがやたら増えている。
「え、レイオフ祭りなのに求人増えてるの? どういうこと?」
この矛盾、自分もずっとモヤモヤしていました。
仕様書を書かないPMのカイです。 元メガベンチャーでtoB SaaSのPMを5年やっていて、今はAIでPM業務の8割を自動化しながらプロダクトマネジメントの実践知を発信しています。
今回、Lenny Rachitsky(@lennysan)が2026年3月25日に公開したTrueup調べの最新求人データを読み込んで、このモヤモヤに決着をつけます。
先に結論だけお伝えすると、PM求人は3年以上ぶりの最高水準に達しています。 しかも、AI PM求人は底値比で+465%という、ちょっと目を疑うレベルの伸びを見せている。
「PMオワコン説」は完全にデータが否定しました。 ただし、求められるPM像は激変しています。
その構造と、日本のPMが今どう動くべきかを一緒に読み解いていきましょう。
AI関連ロールが爆発的に増加──PMにとって何を意味するか
AI eng求人+438%、AI PM求人+465%──数字が示すこと
いきなりですが、今回のデータで最もインパクトのある数字から見てください。
※上記の数値は、Lenny's Newsletterの有料記事(2026年3月25日公開)に掲載されたTrueupのチャートより読み取った値です。
AIエンジニアの求人が+438%、AI PMの求人が+465%。
想像してみてください。 つい2年前には201件しかなかったAI PMの求人が、今は1,135件。 5倍以上に膨れ上がっている。
ここで注目してほしいのが、AI PMの増加率がAIエンジニアを上回っているという点です。 つまり、AIプロダクトを作る技術者だけでなく、AIプロダクトを方向づけるPMの需要が爆発的に伸びている。
これ、PMにとってはものすごいチャンスなんですよ。 「AIの波に乗れるかどうか」がキャリアの分岐点になりつつある。
もう一つ重要なのが、Lennyの指摘する「AIはソフトウェアエンジニアの需要を(まだ)鈍化させていない」というポイントです。 「AIがエンジニアの仕事を奪う」という議論がある一方で、少なくとも現時点の求人データはその仮説を支持していません。
「AIを使うPM」と「AIをプロダクト化するPM」の違い
AI PMという言葉を聞くと、「ChatGPTを使いこなすPM」をイメージする方が多いかもしれません。 でも、求人市場で求められている「AI PM」は、もっと深いところにあります。
整理すると、AI時代のPMには大きく2つの方向性があるんです。
- AIを使うPM: 既存のプロダクト開発にAIツールを活用して生産性を上げるPM
- AIをプロダクト化するPM: AI/MLを中核としたプロダクトの要件定義・ロードマップ策定・ユーザー体験設計を担うPM
今の求人市場で+465%の伸びを見せているのは、主に後者の「AIをプロダクト化するPM」です。
たとえるなら、「Excelを使える人」と「SaaSプロダクトを作れる人」くらいの差がある。 ツールとして使えるのと、ツールそのものを設計できるのとでは、市場価値がまったく違うんですよね。
Teresa Torresが「Continuous Discovery Habits」で説いているように、ユーザーの課題からプロダクトの機会を継続的に発見するプロセスが重要です。 AIプロダクトのOpportunity Spaceは今まさに急拡大していて、そのディスカバリーを回せるPMが圧倒的に足りていない。
AIでPM業務の8割を自動化した経験から言うと、AIを「使える」ようになった先に、「AIプロダクトをつくれる」PMへのステップアップが見えてくるんですよ。 まずはAIツールを使い倒して手触り感を得ること。 それが、AI PMとしてのキャリアの入口になると思っています。
でも、この数字の背景にはもっと大きな構造変化があります。 次は、「なぜレイオフの嵐の中で求人が増えるのか」という矛盾の正体を解き明かします。
レイオフが続くのに、なぜPM求人は増えるのか
「解雇」と「採用増」が同時に起きるテック業界の構造
「レイオフのニュースが毎週のように流れてくるのに、求人が増えてるって矛盾してない?」
ここ、ちょっと注目してください。 データを深掘りすると、これはまったく矛盾していないんです。
ポイントは「誰を減らして、誰を増やしているか」。
大手テック企業のレイオフは、多くの場合「人員の最適化」であって「事業の縮小」ではありません。 いわば、サッカーチームの「補強」と同じ構造です。 守備的な選手を放出して、攻撃的な選手を獲得する──チームの人数は変わらなくても、メンバーは入れ替わる。
具体的には、以下のような動きが同時に起きています。
- 削減: 既存プロダクトの保守・運用ポジション、重複していた管理職、成長が鈍化した事業部門
- 増員: AI関連の新規プロダクト開発、成長領域への人員シフト、新しいスキルセットを持つ人材の採用
つまり、「レイオフ」と「採用増」は別の部門・別のスキルセットで同時に起きているわけです。
テック業界の総雇用数はむしろ増加している
ここで、Lennyが指摘している重要なポイントを紹介します。
レイオフが続く中でも、テック職全体の雇用数は増加している。
「え、本当に?」って思いますよね。 でも、これがデータの示す事実なんです。
個別企業のレイオフニュースだけを見ていると「テック業界は縮小している」と感じがちですが、業界全体ではむしろ雇用は純増している。 ニュースのヘッドラインに振り回されると、全体像を見誤るんですよね。
Marty Caganが「Empowered」で強調していた趣旨を思い出します。 大事なのは人数を揃えることではなく、問題を解決する権限を持った(エンパワードされた)チームをつくることだ、と。
まさに今のテック業界は、その「スキルセットの入れ替え」が大規模に起きているフェーズです。
PMの仕事が消えるのではなく、PMに求められるスキルセットが変わっている。 そう捉えると、レイオフと採用増が同時に起きていることも腑に落ちるはずです。
では、全体の数字はどうなっているのか。 PM求人市場の「今」をデータで確認していきましょう。
PM求人が3年以上ぶりの最高水準──データソースと四半期推移を読む
Trueup × Lenny Rachitskyのデータソースについて
ここで、今回のデータソースについて簡単に紹介しますね。
Trueupは、テック業界の求人データをリアルタイムで集計・公開しているプラットフォームです。 米国を中心としたテック企業の採用動向を網羅的にトラッキングしていて、レイオフ情報の集計でも知られています。
Lenny Rachitskyは、元AirbnbのProduct Leadで、現在はプロダクトマネジメント領域で世界最大級のニュースレター「Lenny's Newsletter」を運営しています。 購読者は100万人を超え、シリコンバレーのPMなら知らない人はいないと言っていい存在ですね。
そのLennyが、Trueupのデータをもとに2026年初頭のPM求人市場の現状を分析・公開したのが今回の元ネタです。 数値はLenny's Newsletterの有料記事に掲載されたチャートから読み取ったものです。
PM求人7,300件超──四半期推移で見る回復の軌跡
公開情報をもとに確認できるハイライトを整理します。
- PM求人が3年以上ぶりの最高水準に到達(7,300件超)
- 2023年の底値から75%以上回復し、さらに過去水準を超えてきた
- テック業界全体でもレイオフが続く一方で、求人総数は増加トレンド
四半期ごとの推移を見ると、2022年後半から始まった急落が2023年に底を打ち、2024年以降は緩やかな回復を経て、2026年初頭に過去最高水準を更新した形です。
2022年後半〜2023年の「テック冬の時代」を思い出してみてください。 大手テック企業が軒並みレイオフを実施し、PM求人も激減しました。 「PM枠が凍結された」「採用面接が突然キャンセルになった」──そんな話を何度も耳にした時期です。
それが2026年初頭、ようやく完全に回復し、さらに過去の水準を超えてきた。
これはプロダクトマネージャーの転職を考えている方にとって、かなりポジティブなシグナルです。 「冬の時代」は明確に終わりました。
ただ、回復しているのは求人数だけではありません。 働き方のトレンドにも大きな変化が起きています。
ベイエリアの高水準とリモートワーク縮小──PM転職市場の働き方変化
AI求人の約20〜23%がベイエリアに集中するという現実
データが示すもう一つの大きなトレンドが、ベイエリア(サンフランシスコ・シリコンバレー)の依然として高い存在感です。
PM求人の約23%、エンジニア・デザイナー求人の20%超がベイエリアに集中しており(5件に1件以上)、この割合はここ数年ほぼ横ばいで推移しています。
「パンデミック以降、場所は関係なくなった」という議論がありましたよね。 でも、少なくともAI最先端の求人においては、その前提が崩れています。
なぜか。 AIの最先端はまだ研究開発フェーズに近い部分が多く、暗黙知の共有やスピーディーな意思決定が求められるからです。 ホワイトボードの前で30分議論するのと、Slackで3日やりとりするのとでは、密度がまるで違う。 物理的な近接性がイノベーションを加速するという、シリコンバレーの古くからの信念が改めて示されている形です。
リモートPM職は本当に減っているのか
Lennyのデータでもリモートワークの求人割合は減少傾向にあります。 ただし「リモート全廃」ではなく、ハイブリッド型(週2〜3日出社)へのシフトが実態に近いですね。
日本のPMにとって、この傾向は2つのことを示唆しています。
- 外資テック企業のフルリモートPM職は、今後さらに競争が激化する可能性がある
- 一方で、日本拠点のAI関連企業では、むしろハイブリッド前提でのPM採用が増えている
「フルリモートにこだわるか、成長領域を取るか」──これは今後PMが向き合う現実的なトレードオフになりそうです。
ここまで「求人数」と「働き方」の変化を見てきました。 もう一つ、見逃せない変化があります。 PMと「もう片方の車輪」であるデザイナーの間に、意外な格差が生まれているんです。
デザイナーとPMの需要逆転──横ばいのデザイン職、伸びるPM職
今回のデータでもう一つ注目したいのが、デザインロールの横ばい・停滞です。
PM求人が過去最高水準に達している一方で、デザイナーの求人はほとんど伸びていません。 Lennyのデータでは、PM求人とデザイン職の需要に明確な格差が生まれていることが示されています。
「デザインとPMはプロダクト開発の両輪」だったはずなのに、片方だけが回っている。 正直、この格差には驚きました。
なぜこんなことが起きているのか。 その背景には、AIによるUI/UXデザインツールの急速な進化があると考えています。 FigmaのAI機能やv0のようなAI UIコード生成ツールの台頭により、デザイン業務の一部がAIに代替されつつある。
一方で、PMの仕事──特に意思決定、ステークホルダーとの合意形成、プロダクト戦略の策定──は、AIによる代替が最も難しい領域です。
PMの仕事は突き詰めると「意思決定」なんですよ。 コンテキストの理解、ステークホルダーの利害調整、不確実性の中での判断──これは極めて人間的なスキルの集合体で、AIが最も苦手とする領域です。
PM志望のデザイナーの方にとっては、2026年はキャリアチェンジの好機かもしれません。 UIデザインの知見を持ったPMは、AI時代のプロダクト開発において非常に価値が高いですから。
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日本のPMへの示唆──このデータから何を読み取り、どう動くか
グローバルデータを「日本のPM市場」にどう読み替えるか
ここまで紹介してきたTrueup × Lennyのデータは、主に米国テック市場のものです。 「アメリカの話でしょ?日本には関係ないのでは」──そう思いましたよね。
でも、ちょっと思い出してみてください。 私見ですが、米テック市場のトレンドは1〜2年遅れで日本に波及するというのが、自分の観測では何度も繰り返されてきたパターンです。
2023年のレイオフの波も、最初は「アメリカだけの話」と思われていましたが、2024年には日本のスタートアップでも人員整理が相次ぎました。 同様に、AI PMの需要増加もすでに日本で始まっています。
肌感覚ですが、具体的な兆候として以下のような動きが見えています。
- 大手IT企業がAIプロダクト専任のPM職を新設している
- AI系スタートアップのPM求人が増加傾向にある
- 既存SaaS企業がAI機能追加のためにPMを増員している
- 転職エージェントが「AI経験のあるPM」を積極的にスカウトしている
Trueupのグローバルデータは日本にそのまま適用はできませんが、方向性の先行指標としては非常に参考になります。
「AI PMスキル」は必須になるのか──3つのレベルで考える
「結局、AI PMスキルを身につけないとやばいの?」
この問い、多くのPMが内心で感じていると思います。 答えは、「レベルによる」です。
AI PMスキルを3段階に分けて考えてみましょう。
Level 1: AIツールを業務に使えるPM
- ChatGPTやClaudeを使ってPRD作成やリサーチを効率化できる
- AIを「便利な道具」として使いこなすレベル
- 2026年時点で、これは「あると有利」から「最低限の期待値」に変わりつつある
Level 2: AIプロダクトの要件定義ができるPM
- AI/MLの基本的な仕組みを理解し、AIプロダクトのユーザー体験を設計できる
- LLMの得意・不得意を踏まえた機能設計ができる
- 今の求人市場で最も需要が伸びているのはこのレベル
Level 3: AI/MLチームのPMができるPM
- データサイエンティストやMLエンジニアと対等に会話し、テクニカルな意思決定に関与できる
- モデルの評価指標やデータパイプラインの設計に理解がある
- ここまで来ると、年収レンジが大きく変わる
全員がLevel 3を目指す必要はありません。 でも、Level 1は2026年のPMとして「できて当然」になりつつある。 まずは自分が今どのレベルにいるかを把握すること。 それだけで、次の一手が見えてきます。
転職タイミングとしての2026年をどう判断するか
プロダクトマネージャーの転職を考えている方に、データから言えることを率直にお伝えします。
2026年初頭は、直近3年で最も売り手有利な市場環境です。
根拠はシンプルです。
- PM求人が3年以上ぶりの最高水準
- AI PM求人が底値比+465%で、まだ供給が追いついていない
- テック業界全体の雇用数は純増傾向
特にAI関連のPM経験がある方、もしくはLevel 2以上のAI PMスキルを持っている方は、かなり有利な交渉ポジションにいると思います。
ただし、注意点もあります。
- このデータは主に米テック市場のもので、日本市場はやや遅れて動く
- 「売り手市場」は永続しない。窓が開いている間に動くことが重要
- AIバブルの側面もあるため、企業選びは慎重に
Teresa Torresが「Continuous Discovery Habits」で説いているように、良い意思決定には複数の選択肢を持つことが重要です。 転職するかどうかは別として、選択肢を増やすアクションは今すぐ始めた方がいいと思っています。
今日からできる3つのアクション──AI PMへのキャリアシフト
データを見て「なるほど」で終わったらもったいない。 ここからは、この記事を閉じたあと今日中にできることを3つ紹介します。
アクション1: 自分のAI PMレベルを棚卸しする
先ほどの3段階のAI PMレベル(Level 1〜3)で、自分が今どこにいるかを5分で棚卸ししてみてください。
チェックポイントはシンプルです。
- Level 1: 日常のPM業務でAIツールを週3回以上使っているか?
- Level 2: AIプロダクトの要件定義書を書いた経験があるか?LLMの制約を踏まえた機能設計をしたことがあるか?
- Level 3: MLエンジニアと技術的な議論をリードした経験があるか?
5分あれば十分です。 現在地が分かれば、次に何をすべきかが見えてきます。
アクション2: AI PM求人を「読む」だけでいいから始める
転職するかどうかは別として、AI PM求人を10件読んでみてください。
求人票は「市場が何を求めているか」の最も正確なシグナルです。 どんなスキルが書かれているか、どんな経験が求められているかを読むだけで、自分に足りているもの・足りていないものが明確になります。
具体的には、以下のプラットフォームで「AI PM」「AI プロダクトマネージャー」で検索してみてください。
- LinkedIn Jobs
- Trueup(今回のデータソース)
- 各社の採用ページ
「あ、これは自分にもできそう」という求人が見つかったら、それは市場があなたのスキルを求めているサインです。
アクション3: 1つのAIツールで「PM業務を自動化」してみる
最後のアクションは、AIツールを1つ選んで、PM業務の何か1つを自動化してみることです。
おすすめの「最初の一歩」を紹介しますね。
- PRDのドラフト作成: ユーザーストーリーと背景情報を渡して、PRDの骨格を生成させる
- ユーザーインタビューの文字起こし要約: 録音データをAIで書き起こし、キーインサイトを抽出する
- 競合分析の効率化: 競合プロダクトの情報を集めて、比較表を自動生成する
どれも、やろうと思えば今日中にできます。 コピペでプロンプトを貼るだけ。 「半日かかっていた作業が30分で終わる」という体験を一度すると、もう戻れなくなりますよ。
大事なのは、最後の意思決定は自分でやることです。 AIの出力をそのまま使うのではなく、自分のプロダクト知識とユーザー理解で補正する。 AIは優秀なアシスタントですが、コンテキストの最終判断はPMにしかできないんですよね。
おわりに: データが語る「PM職の未来」
2026年初頭のPM求人市場データをまとめます。
- PM求人は3年以上ぶりの最高水準。市場は回復を超えて成長フェーズに入っている
- AI PM求人は底値比+465%。AIプロダクトを方向づけられるPMの需要は急拡大中
- レイオフと採用増は同時に起きている。PMに求められるスキルセットが変わっている
PMの仕事は消えません。 変わるだけです。
そして、変化の方向は明確です。 AIを理解し、AIプロダクトを方向づけ、不確実性の中で意思決定できるPMが求められている。
PMの仕事は意思決定。 それ以外はAIに任せていい。
まずは今日、AI PMレベルの棚卸しから始めてみてください。 5分後には、次にやるべきことが見えているはずです。
出典: Lenny Rachitsky(@lennysan)2026年3月25日投稿、Trueup調べのテック求人市場データ






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