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Claude Codeに"戦略"を覚えさせる — マーケ戦略スキルの手法をプロダクト戦略に応用する

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自分はPMとして5年、戦略ドキュメントを作り続けてきました。

プロダクトビジョン、競合分析、ターゲットユーザー定義、ロードマップ。 どれも作るときは気合いが入るのに、3ヶ月後には誰も見ていない。

この「戦略ドキュメントが死ぬ問題」、PMなら分かってもらえると思うんですよ。

今回は、MKT1のCo-FounderであるEmily Kramerが公開した「Claude Codeにマーケティング戦略を覚えさせる」という手法を紹介しつつ、PMならプロダクト戦略スキルとして応用できるという話をしていきます。

戦略ドキュメントはなぜ死ぬのか

PMが作る戦略ドキュメントって、だいたいこういう末路をたどるんですよ。

  1. NotionやConfluenceに力作を書く
  2. チームに共有する。「いいね」がつく
  3. 1ヶ月後、誰も開かなくなる
  4. 新しい施策が戦略と矛盾しても気づかない

原因はシンプルで、戦略が日常のワークフローに組み込まれていないからですね。

PRDを書くとき、施策の優先順位を決めるとき、ステークホルダーに説明するとき。 本来は毎回「プロダクト戦略と整合してるか?」を確認すべきなんですが、Notionの階層を掘ってわざわざ開くのは面倒なわけです。

ここに「Claude Codeのスキル機能を使って、戦略をAIの記憶に埋め込む」というアプローチが出てきました。

MKT1 Emily Kramerの「マーケティング戦略スキル」が面白い

MKT1のCo-FounderであるEmily Kramerが、Claude Codeのスキル機能を使ってマーケティング戦略をAIに覚えさせる手法を公開しています。

元記事: How to build your marketing strategy in Claude Code

7つの戦略エクササイズの概要

Emily Kramerの手法は、7つのエクササイズを順番にClaude Codeと壁打ちして、その結果をmarketing-strategy.mdに蓄積していくというものです。

#
エクササイズ
内容
1
Company Overview
ステージ、チーム規模、ビジネスモデル、ARR、TAM
2
ICP Prioritization
企業タイプ×役割でセグメント、成熟度レベル別の時間配分
3
Marketing Advantages
プロダクト、マーケ/エコシステム、燃料、エンジンの4軸で強みを評価
4
Perceptions
オーディエンスに届けたい3〜5つのナラティブ
5
Positioning
誰向けか、何か、何と比較するか、なぜ優れているか
6
Revenue Levers
4つの成長ドライバーをランク付け
7
Big Bet Campaigns
1〜3個の大型キャンペーン設計

この7つを実行した結果を.claude/skills/marketing-strategy.mdに保存し、CLAUDE.mdから@でimportする。

するとClaude Codeを起動するたびに戦略ファイルが自動で読み込まれ、マーケ業務をClaude Codeで行うたびにAIが戦略を踏まえて回答してくれるようになるんですよね。

核心:戦略を「参照されるもの」に変える仕組み

この手法の本質は、戦略ドキュメントを「人間が読むもの」から「AIが毎回参照するもの」に変えている点ですね。

Notionに置いた戦略資料は人間が意識的に開かないと参照されない。 でもClaude CodeのCLAUDE.mdにimportしておけば、起動のたびに自動で読み込まれる。

戦略が死なない仕組みを、ドキュメントの置き場所を変えることで実現しているわけです。

これ、マーケターだけの話じゃないですよね。

PMならこう応用する — プロダクト戦略スキルの設計

記事の画像

自分がこの手法を見たとき、真っ先に思ったのは「これ、プロダクト戦略でも同じことができるじゃん」ということでした。

Emily Kramerの7つのエクササイズを、PM視点で読み替えてみます。

PMの7つのエクササイズ

#
マーケ版
PM版
やること
1
Company Overview
プロダクトビジョン・ミッション
プロダクトの存在意義、3年後の姿、KGI
2
ICP Prioritization
ターゲットユーザー・ペルソナ
ユーザーセグメント×ジョブの優先順位マトリクス
3
Marketing Advantages
プロダクトの競合優位性
技術、UX、データ、エコシステムの4軸で強みを整理
4
Perceptions
ユーザーに届けたい価値認知
「このプロダクトは○○だ」と思ってほしい3〜5つの認知
5
Positioning
ポジショニング
誰の、何の課題を、競合と比べてどう解決するか
6
Revenue Levers
成長ドライバー
新規獲得、リテンション、単価UP、利用頻度UPの優先順位
7
Big Bet Campaigns
今期の大勝負
今四半期で賭ける1〜3個の施策仮説

ポイントは、1から順番にやることですね。

ビジョンが定まらないとターゲットが定まらない。 ターゲットが定まらないと競合優位性の評価軸がブレる。 この依存関係を意識して、Claude Codeと1つずつ壁打ちしながら埋めていきます。

Teresa Torresの「Opportunity Solution Tree」で言うと、上位の意思決定が下位の選択肢を制約するという構造そのものですね。 ビジョン(目指すアウトカム)が定まって初めて、オポチュニティの優先順位が決まる。エクササイズの順番はその論理に沿っています。

product-strategy.md の構成例

実際に.claude/skills/product-strategy.mdに書く内容の例です。 このまま自分のプロダクト情報に置き換えて使えます。

# Product Strategy Skill

このスキルはプロダクト戦略の文脈を提供します。
PRD作成、施策の優先順位づけ、ステークホルダー説明資料の作成時に参照してください。

## 1. プロダクトビジョン・ミッション

- ビジョン: [3年後にどうなっていたいか]
- ミッション: [誰の、何の課題を解決するか]
- KGI: [最重要指標とその目標値]

## 2. ターゲットユーザー・ペルソナ

### 優先順位マトリクス

| セグメント | ジョブ | 成熟度 | 時間配分 |
|---|---|---|---|
| [セグメントA] | [達成したいこと] | proven | 40% |
| [セグメントB] | [達成したいこと] | core | 30% |
| [セグメントC] | [達成したいこと] | testing | 20% |
| [その他] | - | not priority | 10% |

## 3. プロダクトの競合優位性

- 技術: [技術的な強み]
- UX: [体験面の強み]
- データ: [データ資産の強み]
- エコシステム: [連携・ネットワークの強み]

## 4. ユーザーに届けたい価値認知

1. [認知1: ユーザーにこう思ってほしい]
2. [認知2: ユーザーにこう思ってほしい]
3. [認知3: ユーザーにこう思ってほしい]

## 5. ポジショニング

- 誰向け: [ターゲット]
- 何か: [プロダクトの定義]
- 何と比較されるか: [競合カテゴリ]
- なぜ優れているか: [差別化要因]

## 6. 成長ドライバー(優先順位順)

1. [最優先の成長ドライバー]
2. [2番目の成長ドライバー]
3. [3番目の成長ドライバー]
4. [4番目の成長ドライバー]

## 7. 今期の大勝負(2026 Q2)

### Bet 1: [施策名]
- 仮説: [何が起きると信じているか]
- 成功指標: [KPI]
- リソース: [投入する人数・期間]

### Bet 2: [施策名]
- 仮説: [何が起きると信じているか]
- 成功指標: [KPI]
- リソース: [投入する人数・期間]

このファイルをCLAUDE.mdから参照するには、以下の1行を追加するだけです。

@.claude/skills/product-strategy.md

Claude CodeのPM Skillsと組み合わせれば、戦略の文脈を持ったAIプロダクトマネージャーが出来上がるわけですね。

チームで運用する — PMが戦略スキルを活かす場面

記事の画像

product-strategy.mdを作って終わりだと、Notionに書いた戦略資料と同じ末路をたどります。

大事なのは、日常業務のどこで効くかを具体的に設計しておくことですね。

PRD作成時に戦略との整合性を自動チェック

PRDのドラフトをClaude Codeで書くとき、戦略スキルが読み込まれていると「この機能はターゲットユーザーのセグメントAのジョブと整合していますか?」という観点が自動的に入ります。

自分がよく使うプロンプトはこれです。

このPRDをproduct-strategy.mdと照らし合わせてレビューして。
特にターゲットユーザーの優先順位と成長ドライバーとの整合性を確認して。

以前は戦略との整合性チェックを自分の頭の中でやっていたんですが、AIに任せることで抜け漏れが減りました。

施策の優先順位づけ

四半期の施策候補が10個出てきたとき、「どれからやるか」を決めるのがPMの仕事ですよね。

ここでも戦略スキルが効きます。 成長ドライバーの優先順位と今期のBetを踏まえて、施策をランク付けさせる。

人間の判断が入る余地は当然ありますが、戦略に基づいた初期スコアリングをAIが出してくれるだけで、議論のスタートラインが変わるんですよ。

ステークホルダーへの説明資料の一貫性

経営陣への説明資料、営業チームへの機能説明、カスタマーサクセスへの引き継ぎ。

PMは同じプロダクトについて異なる相手に何度も説明するわけですが、毎回微妙にメッセージがブレることがあります。

戦略スキルに「ポジショニング」と「ユーザーに届けたい価値認知」が入っていれば、どんな資料を作るときも一貫したメッセージになりますね。

GitHubでチームに共有する

Emily Kramerの元記事でも触れられていますが、スキルファイルはGitHubのプライベートリポジトリで管理するのが実践的です。

your-team-repo/
  .claude/
    skills/
      product-strategy.md
      marketing-strategy.md
    CLAUDE.md  ← @.claude/skills/product-strategy.md を参照

この構成なら、チームメンバーがリポジトリをクローンするだけで同じ戦略コンテキストを持ったClaude Code環境が手に入ります。

新メンバーのオンボーディングにも使えるし、「今のプロダクト戦略ってどうなってるんでしたっけ?」という質問がなくなる。

Marty Caganは「プロダクトチームが良い意思決定をするには戦略的なコンテキストの共有が不可欠だ」と繰り返し語っていますが、それをGitHub + Claude Codeで仕組み化できるのは面白いですね。

まとめ — 「戦略のOS化」はPMの武器になる

今回の話をまとめると、こうなります。

  1. Emily Kramerのマーケ戦略スキル: 7つのエクササイズで戦略をmarketing-strategy.mdに蓄積し、Claude Codeに覚えさせる
  2. PMへの応用: 同じフレームワークでproduct-strategy.mdを作り、プロダクト戦略をAIの記憶に埋め込む
  3. 日常業務への統合: PRDレビュー、施策の優先順位づけ、説明資料作成で戦略が自動参照される
  4. チーム共有: GitHubでスキルファイルを管理し、全員が同じ戦略コンテキストで動ける

戦略ドキュメントが死ぬ理由は、ワークフローに組み込まれていないからでした。

Claude Codeのスキルとして埋め込むことで、戦略は「たまに読むもの」から「毎回参照されるもの」に変わります。

自分はこれを「戦略のOS化」と呼んでます。 OSがアプリケーションのすべての動作の基盤になるように、戦略がすべてのプロダクト業務の基盤になる状態ですね。

それ、AIに壁打ちした?

まだの人は、まずproduct-strategy.mdの「1. プロダクトビジョン・ミッション」から始めてみてください。 Claude Codeと30分壁打ちするだけで、驚くほど整理されますよ。

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