退職が決まって出社できる日が少なくても、会社の業務の引き継ぎ書は、ChatGPTやClaudeなどのAIに依頼文を1本貼るだけで作れます。2か月後に連絡が来にくい書き方は、辞めてから来そうな質問の答えを、引き継ぎ書に先に書いておくことです。
担当業務の雑なメモを入れると、仕分け表(誰に渡すか、何を自分で終わらせるか)、2か月後の質問に答える引き継ぎ書、引き継ぎ会の計画、最終出社日の確認リストと日程表が一度に返ってきます。業務ごとに「知らずに踏むと止まる注意点」を書く欄(この記事では地雷欄と呼びます)も付きます。
辞めたあとに「あれ、どこにありますか?」と連絡が来るのは避けたい。でも、残りの出社日で全部を丁寧に書く余裕もありません。その両方に応えるのが、この記事の依頼文です。
引き継ぎ書の出来は、退職して2か月後に分かる
引き継ぎ書は、つい「目的」「手順」「担当者」の欄を埋めることに気を取られます。でも後任が詰まりやすいのは、月末の締めや月1回の発注のように、引き継ぎ期間中に1度も回ってこなかった業務だと考えています。
そこで物差しを「私がいなくなって2か月ほど経ち、連絡が取れない頃に来そうな質問に答えているか」に置きます。初日の疑問は引き継ぎ会でその場で聞けるので、書面で先回りするのは、前任者がもういない時期の質問のほうです。
たとえば「取引先から請求書が届いていないと言われた」「発注サイトにログインできない」。自分の担当業務なら、どんな質問が来そうでしょう? すぐに思いつかなくても、業務ごとにAIに出させて、答えまで書かせれば足ります。
出社できる日が少ない引き継ぎで、全部の業務を書く必要はある?
ありません。全部を同じ重さで書くと、出社が7日しかないような日程では終わらないからです。書き始める前に、担当業務を次の5つに仕分けます。
- 渡す(誰に)
- 自分が最終出社日までに終わらせる
- 上司に判断を預ける
- 引き取り手なし(放置すると何が起きるか)
- やめる提案(理由)
引き継ぎ書を書くのは「渡す」「上司に預ける」「引き取り手なし」の3つだけです。自分で片付けられる作業は書くより終わらせたほうが早く、やめる提案は理由を1行添えて上司に決めてもらえば足ります。
もう1つ大事なのが、全項目に人の名前か「引き取り手なし」を付けることです。「チームに引き継ぐ」と書いた業務は、たいてい誰のものでもなくなります。
手元の業務リストの1件ずつに、名前を書いてみてください。書けなかった業務が、引き取り手なしの候補です。
退職の引き継ぎ書をAIに作らせる依頼文
下の文をまるごとコピーして、【 】の中だけ自分の情報に書き換えてから、ChatGPTやClaude、Geminiのチャットに貼ってください。担当業務は箇条書きの雑なメモで大丈夫です。
貼る前に1つだけ。会社名・取引先名・人名は「取引先A」「Bさん」のように伏せてください。
あなたは引き継ぎ資料づくりの相談相手です。私が貼る担当業務のメモをもとに、引き継ぎ書、引き継ぎ会の計画、最終出社日の確認リスト、日程表の4点を、この1回の返答でまとめて作ってください。
入力
- 立場: 【退職/異動/産休育休 のどれか】
- 最終出社日までの実働日数: 【 】日
- 担当業務の一覧: 【ここに箇条書きのメモを貼る。雑でよい】
- 後任: 【いる場合は名前。いなければ「未定」】
- 上司の名前: 【 】
- 質問の窓口にしてよい人: 【上司など。空欄なら上司】
手順
1. まず業務を次の5つに仕分けして表にする。「渡す(誰に)」「自分が最終出社日までに終わらせる」「上司に判断を預ける」「引き取り手なし(放置すると何が起きるか)」「やめる提案(理由)」。全項目に人の名前か「引き取り手なし」を付ける。「チームに引き継ぐ」は使わない。
2. 「渡す」「上司に預ける」「引き取り手なし」の業務ごとに引き継ぎ書を書く。項目は、目的、頻度と締切、やり方の要点、関係する人(社内・社外)、資料の所在、地雷欄、2か月後に来そうな質問と答え。
3. 資料の所在は説明でなく、フォルダ名・ファイル名・システム名・リンクで書く。メモに無ければ「要確認」と書いて、私が埋める欄にする。
4. 地雷欄は業務ごとに必ず1行以上。この順番でないと失敗する、この人に先に声をかけないと止まる、理由は不明だが守る決まり、の類。メモに無ければ空欄のまま残し、私への質問を添える。
5. 各業務の記述を「私がいなくなって2か月ほど経った頃、連絡が取れない状態で来そうな質問に答えているか」で点検し、足りない点を質問の一覧にして返す。初日の疑問は引き継ぎ会で解決できるので、そちらは優先しない。
6. 引き継ぎ会の計画を出す。資料には書けない「迷ったときに何を見てどう決めているか」「誰に聞けば早いか」を会で見せると決め、そこから回数と各回の議題を組む。実働日数の前半に入れ、後任に実際に操作してもらい私が横で見る形にする。上司の同席を1回以上入れる。
7. 人の紹介を計画に入れる。社外の取引先と社内の関係者ごとに、誰に・いつ・どうやって(メールのCC、同席など)後任を紹介するかを一覧にする。
8. 最終出社日の確認リストを出す。人に頼むこと、自分でやること、最後に残すことの順に並べる。頼むこと: 権限・予定表・定例会議の持ち主の付け替え、社内チャットやメーリングリストから外す依頼、共有アカウントのパスワード変更。自分でやること: 会社データと私物データの分離(最終日に回さず、会社の決まりに沿って先に済ませる)、社用スマホの連絡先の整理、メールの自動返信の設定、経費精算、備品返却。最後に残すこと: 取引先への最終連絡を送ったかの確認、短い挨拶。
9. 最終出社日から逆算した日程表を出す。実働日数に収まるよう、前半に引き継ぎ会と紹介、後半に資料の仕上げと事務処理を置く。
判断基準
- 後任が未定なら、読む相手が分からない前提で上司宛てに書く。専門用語には短い説明を添える。
- 産休育休なら、戻ってきた私が読んでも思い出せる記録として書く。復帰時に確認する事項の欄を足す。
- 異動なら、同じ会社に残るので連絡は取れるが、質問は窓口経由にまとめると書き添える。
- 「やめる提案」に見える業務も、決めるのは上司。提案として書き、仕分け表に理由を示す。
- 質問は電話でなくチャットやメールで来ることが多い。有給中・退職後に私へ直接連絡が来ないよう、引き継ぎ書の先頭に「質問の窓口」を明記する。
出力の形
- 1点目: 仕分け表(業務、分類、引き取り手、優先度)
- 2点目: 引き継ぎ書。業務ごとに見出しを立て、手順2の項目を並べる。1業務あたり200〜400字。
- 3点目: 引き継ぎ会の計画(回数、各回の議題、参加者、所要時間)と紹介の一覧
- 4点目: 最終出社日の確認リストと日程表(日ごとに何をするか)
- 全体の最後に、私が埋める「要確認」の欄を集めて一覧にする。
やらないこと
- 数字・固有名詞・人名を作らない。分からなければ「要確認」。
- 会社の資料や顧客情報を個人のスマホやクラウドに移す手順を書かない。
- 業務を同じ重さで羅列しない。優先が分かる形にする。
- 地雷欄が空の業務を残さない。書けないなら私への質問にして置く。
題材の例(架空)
入力が空のときは、架空の中小企業の営業事務を題材に一度作って見せる。担当業務は見積書の作成、受注入力、請求書発行、月次の売上集計、取引先からの問い合わせ対応、備品発注など10件程度。実働7日、後任は未経験の後輩1名、上司は課長。会社名・人名はすべて架空と明記する。依頼文の最後には、入力が空のときは架空の営業事務で見本を作るように書いてあります。出来上がりの形だけ先に見たい人は、【 】を空にして貼ってみてください。返ってきたら、まず仕分け表を見て、引き継ぎ書を書く業務がどれかを確かめます。「要確認」の欄は、自分で埋めてから後任に渡してください。
地雷欄(知らずに踏むと止まる注意点)は、AIの出力に自分の記憶で書き足すのがおすすめです。後の人をいちばん助ける欄だからです。
AIで作った引き継ぎ書の地雷欄には、何が出た?
引き継ぎ書を一人で書くと、いちばん抜けやすいのは知らずに踏むと止まる注意点だと思っています。雑なメモを渡すと、AIのほうから突いてくれます。
Claudeで試しました。題材は架空の会社、株式会社ミナト商事の営業事務です。後任は入社2年目で未経験の山田さん、上司は田中課長(人名・会社名はすべて架空)。実働7日、担当業務11件を雑なメモのまま入れたところ、1回の返答で4点と「要確認」の一覧がまとめて返ってきました。
入れたメモは、この程度の粗さです(11件から3件を抜粋)。
請求書発行(月末締め、翌月5日までに発送。郵送とメールが混在。郵送希望の取引先の一覧は自分のメモにしかない) 備品発注(月1回。アスクルの法人アカウント、IDは自分の名前) 新人向けの販売管理システムの使い方メモ(自分が作って共有フォルダに置いた。更新は止まっている)
仕分け表には、優先度の基準まで付いていました。なお、以下の引用に出てくる(3)や(10)の番号は、仕分け表の行番号です。
優先度の考え方: 高=止まると取引先や売上に直接ひびく/中=止まっても社内で1〜2週間は吸収できる/低=年1回、または時期が先。
11業務は、渡す7件、上司に預ける2件、引き取り手なし1件、やめる提案1件に分かれました。ほかに、渡す業務の中から「自分が終わらせる」作業が2件切り出されています。書く対象と手をかける順番が最初から決まるので、残り日数が少ない人ほど助かります。
個人的に一番おもしろかったのが地雷欄です。請求書発行、備品発注、取引先マスタの更新の欄から抜き出します。
郵送希望先リストを見ずに全件メールで送ると、郵送でないと受け付けない取引先に請求が届かず、入金が遅れる。
IDが私の名前のままだと、退職後にログインや本人確認で止まる。最終出社日までに名義を付け替える。
ここを直しても、年賀状の宛名リスト(10)のExcelには反映されない。別管理なので、住所変更があったら両方直す。
メモには「アスクルの法人アカウント、IDは自分の名前」とあっただけで、そこから退職後にログインで止まる地雷と名義の付け替え作業の両方が出ています。取引先マスタと年賀状のExcelが別管理だという話は、メモに書いていないのに拾ってきました。
2か月後に来そうな質問と答えも、業務ごとに1問ずつ付いていました。請求書発行の欄はこうです。
2か月後に来そうな質問と答え: 「取引先から『請求書が届いていない』と言われた」→ まず郵送かメールかをリストで確認して再送する。リストに載っていない先は、先方に希望を聞いてリストに追記する。
メモに手がかりが無かった4業務は、地雷欄を空けたまま私への質問になりました。
問い合わせ対応: 納期を即答していい範囲と、営業に確認する範囲の線引き。言ってはいけないことはあるか
数字や人名は作らず、分からない箇所は「要確認」で止めていました。本文中に50か所、最後の一覧で29件です。もっともらしい嘘で埋まらないので、空欄は「あなたが答える場所」としてはっきり残ります。
退職前の引き継ぎ会は何回開いて、後任に何を操作してもらう?
引き継ぎ会は、説明の場でなく後任に触ってもらう場にすると、詰まる場所がその場で見つかります。返ってきた計画は5回でした。1〜4日目に4回を集中させ、6日目に30分の最終確認。田中課長の同席は第1回と第3回の30分ずつです。
毎回、マウスを握るのは山田さんです。前任は横で見て、操作して見せるのは最初の1件だけ。
後任を誰に紹介するかの一覧も7行付いてきました。取引先と社内の関係者ごとに、いつ・どうやって・何を伝えるかが並びます。紹介が済んでいれば後任が本人に直接聞けるので、あなたに連絡が来る理由も減ります。
退職の最終出社日の確認リストと日程表は、初日から始める
最終日を確認と挨拶で終えられるように、先に組んでおけます。権限の付け替えは、最終日に頼んでも相手の都合で間に合わないことがあります。返ってきた確認リストでは、人に頼むことが6件ありました。うち5件は総務・情シスと課長への依頼で、1日目に出す配置です。残る1件、アスクルの名義とパスワードは自分で動かし、7日目に課長へ引き渡します。
自分でやることは7件で、備品返却を除いて最終日の前に済ませる配置です。会社データと私物データの分離も5日目に終わります。アスクルの新しいパスワードは「田中課長に口頭で渡す(チャットやメールに書かない)」とまで書かれていました。
人に頼むことの先頭は、こう並んでいました。
人に頼むこと(依頼は1日目に出し、最終日は完了の確認だけにする): 販売管理システムの私のアカウント停止と、山田さんのアカウント発行・権限付与 → 総務・情シス(要確認) 共有フォルダ「営業事務」のアクセス権を山田さんに付与 → 同上 予定表(カレンダー)の定例予定と、営業会議の持ち主を田中課長または山田さんへ付け替え → 田中課長
最終日に積む作業を、備品返却とパスワードの引き渡しなど少数に絞った設計です。あなたの最終日は、確認と挨拶が中心になります。
日程表は7日分で、引き継ぎ会と紹介の予定、資料と事務処理の予定の2列です。1日目と7日目はこう書かれていました。
1日目 | 第1回(課長同席)。出荷担当への紹介。営業メンバーへチャットで一報(月曜の会議が先に無ければ) | 総務・情シスへ権限の付け替え・アカウント発行を依頼。自動返信の文面を用意 7日目(最終出社日) | 挨拶 | 確認リストの残り(備品返却、最終連絡の送信確認)。アスクルのパスワード変更と課長への引き渡し
「月末・5日・7日・20日の締めが期間内に来るなら、その日は引き継ぎ会を入れず、山田さんが実際の作業をする日にする」という補足も付いていました。
引き継ぎ書の先頭には、質問の窓口がこう書かれていました。
この資料についての質問、退職後に出てきた疑問は、すべて田中課長へ。 私への直接の連絡(チャット・メール・電話)は、有給消化中も退職後も受けられません。
窓口が先頭にあれば、連絡が来ても「課長へお願いします」と返せます。有給消化中や退職後の連絡の扱いは職場との話し合いで決まるので、上司と相談して書き直してください。
引き継ぎ書の依頼文をAIに貼る前の注意
会社名・取引先名・人名は、先に書いたとおり伏せてから貼ってください。会社がAIの利用ルールを決めているなら、そちらが先です。
出てきた内容は、自分の目で確かめてから渡しましょう。依頼文は数字と人名を作らせない作りなので、「要確認」が大量に残ります。
出来上がりは長く、今回は10,408字ありました。使うAIやプランによって1回の返答に収まらないときは、依頼文の最初の「この1回の返答でまとめて」を「まず仕分け表と引き継ぎ書だけ」に変えて貼り、残りを後から頼む形でもよいと思います。
今回はClaudeで1回通しただけで、手順は直していません。まずは担当業務を思いつく順に箇条書きにして、依頼文の【 】に貼るところから始めてみてください。



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