Opus 5.5が監督した51秒の告知動画、消えた費目と残った費目

ポスプロ番頭@てつお
ポスプロ番頭@てつお

@tetsuo_postpro ・ 4本

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告知動画の見積もりを出すと、決まって「AIでもっと安くならないの?」と聞かれませんか。Opus 5.5がナレーションと音楽付きの51秒の動画を、外部モデルの利用料およそ630円で仕上げた事例が出てきました。見積書の行に当てはめてみると、消える費目と残る費目がはっきり分かれます。

51秒の告知動画、Opus 5.5は何を監督したのか?

事例の出どころは、海外のAIニュースレターThe Neuronの9月25日号です。Redditのあるユーザーが、自分のイベント企画アプリ「Friendr」の告知動画を作るプロンプトをClaude Codeに渡し、外部モデルの呼び出しに10ドル(約1,570円)の上限を付けました。約2時間後にできあがったのが51秒の動画で、外部モデルの利用料は約4ドル(約630円)だったそうです。

元のReddit投稿は自分では開けておらず、ここの数字はThe Neuronの記述に拠っています。円換算は2026年9月25日のニューヨーク市場終値1ドル=157.28円をもとに、1ドル=157円の概算にしました。

動画には台本、コラージュ風のイラスト、ナレーション、音楽、効果音、言葉に合わせて動くアニメーションが入っています。押さえておきたいのは、Opus 5.5自身は映像を生成していない点なんですよ。絵と音は他のモデルに発注し、動きはJavaScriptで書き、下書きは別のモデルにレビューさせ、最後にMP4へ書き出した。やったのは段取りです。

現場の言葉に直すと、ディレクターと編集と進行を1人で兼ねた形ですね。では、その段取りは見積書のどの行に効くのでしょうか?

告知動画の見積書に並ぶ費目、AIが埋めたのはどこか

告知動画の見積書を費目ごとに分け、AIが埋めた行と人に残る行をアンバーで塗り分けた鉛筆スケッチの図解

短い告知動画でも、見積書には構成・台本から試写・修正までの行が並びます。The Neuronの記述と照らし合わせると、次のように分かれます。

費目
Friendrの事例で埋まったか
人に残る仕事
構成・台本
埋まった(Opus 5.5が作成)
訴求の優先順位を決める、事実確認
イラスト・美術
埋まった(外部モデルに発注)
絵柄がブランドに合うかの判断
ナレーション
埋まった(外部モデル)
読み間違いの確認、利用条件の確認
BGM・効果音
埋まった(外部モデル)
音量バランス、利用条件の確認
モーション・編集
埋まった(JavaScriptで作成)
文字が読める速さかの判断
MA・整音
記述なし
配信先に合わせた音量の最終調整
試写・修正対応
一部(別モデルがレビュー)
クライアントの戻しへの対応

絵・声・音楽をそれぞれどのモデルが作ったのか、レビュー役がどのモデルだったのかは、The Neuronの記事には書かれていません。モデル名は未確認のまま読んでください。

表を縦に見ると、素材を作る行はほぼ埋まっています。残ったのは「これで出していいか」を決める行ばかりです。あなたの会社の見積書だと、どの行にいちばん金額が乗っているでしょうか?

動画生成の費用、約630円に入っていないもの

編集室の机に置かれたノートPCと見積書、赤入れ用のアンバーのペンを描いた鉛筆スケッチ

約630円という数字を、そのまま「動画1本の制作費」として社内に持っていくと危ないんです。The Neuronは、4ドルはOpenRouter経由の外部モデル代で、Claudeの利用料は別だと書いています。

OpenRouterは、複数社のAIモデルを1つの窓口から従量課金で呼び出せるサービスです。630円は絵・声・音楽を作った外注先への支払いにあたる部分で、監督役のOpus 5.5の分は入っていません。Opus 5.5のAPI料金は入力100万トークンあたり4ドル(約630円)、出力100万トークンあたり20ドル(約3,140円)ですが、2時間の作業でどれだけトークンを使ったかは公開されておらず、総額は分かりません。

もう1つ抜けているのが人の時間です。プロンプトを書く、できた51秒を見る、出すかどうかを決める。この工程は630円の外側にあります。

現場的には、630円は「初稿の素材費」と読むのが実態に近いと思います。従来の見積もりと比べるなら、Claude本体の利用料と確認に使った人の時間を足してからにしたほうがいいです。

AIナレーションとBGM、権利と品質管理は誰が持つか?

AIで作った声と音楽を告知動画に使うなら、最初に見るのは各モデルの利用規約です。商用利用ができるか、クレジット表記が要るかはサービスごとに違います。Friendrの事例はモデル名が公開されていないので、同じ構成で作るなら、自分が使うモデルの規約を1つずつ読むことになります。

生成物の扱いについては、文化庁が2024年3月に「AIと著作権に関する考え方について」を公表しています。AIが自律的に生成したものは著作物に当たらないとされ、人がどこまで創作に関わったかで判断が変わる、という整理です。納品物の権利を誰が持つかは契約で決めておく話なので、この行は法務と相談して埋めることになります。

品質管理も同じ構図です。Friendrの事例では別のモデルが下書きをレビューしましたが、誤字は拾えても、ブランドの言葉遣いから外れていないかまで任せきるのは難しい。海外の開発者掲示板Hacker NewsのOpus 5.5の動画を扱ったスレッドでも、Claudeが作った社内用語のような言葉が混じり、顧客に見せる前に手直しが要ったという声がありました。

AIのレビューは一次チェックとしては十分使えます。ただ、クライアントの前で「これで出します」と言う役は人に残るんですよ。あなたの現場では、試写のOKを誰が出していますか?

告知動画の見積もり、AIで削る行と残す行

同じHacker Newsのスレッドには、「音楽が大きすぎる」と一言返しただけで直ったというコメントもありました。音量や尺の一言修正なら、この体制はかなり速く応えられそうです。

一方で、クライアントの戻しには「もう少し明るく」「社長の顔を出したい」のように、素材の作り直しや方針変更が混ざります。そのたびに外部モデル代とClaudeの利用料がかかり、人がまた確認する。630円は1回目の素材費で、修正のたびに積み上がると考えておくほうが安全です。

見積書に落とすと、削りやすいのはイラスト、仮ナレーション、仮BGM、モーションの初稿です。残すべきなのは構成の判断、権利と規約の確認、MAの最終調整、試写と修正対応の行で、金額の比重は素材づくりから確認と判断へ移ります。

次の見積もりで、素材の行を削った分だけ確認の行を厚くできているか。直近の見積書を開いて、どの行が630円で置き換わるのかを1行ずつ見てみてください。