敷金の控除明細は、国土交通省の原状回復ガイドラインの線引きに沿って1項目ずつ見直すと、払わなくていい項目が見えてきます。明細を自分のAIに貼るだけで、仕分けた表と払う額の再計算、管理会社に送る文面まで作れます。架空の1K明細で1回通すと、144,000円の請求が、払う目安33,000円と床の傷1本分まで縮みました。
AIに貼る依頼文の全文は、線引きと準備の説明のあとに載せています。先に貼りたい人は、そこまで飛ばしてください。
敷金の控除明細で、払わなくていいのはどこまで?
国土交通省の原状回復をめぐるトラブルとガイドラインは、退去時の傷みを分けて考えます。普通に暮らして生じる傷みと年数による古びは貸主、不注意や手入れ不足で起きた傷みは借主の負担になりえます。ここに「明細から根拠が読めないもの」を足して3つに分けると、明細の見え方が変わります。
日焼けしたクロスや、ベッドの脚でできた床のへこみは、どれに入るでしょう?ガイドラインの考え方では、どちらも普通に暮らして生じる傷みで、借主が払うものには入りません。
借主の負担になる傷みでも、クロスやカーペット、畳床などは6年で残存価値1円になる直線で割り引くので、入居3年なら、借主が傷めた範囲の補修費の半分程度が上限です。フローリングの部分補修や襖紙、障子紙、畳表は年数を考えず、割り引かれません。
特約があると、この線引きは変わりえます。通常の傷みまで借主負担にする特約も、必要性や合理性があり、範囲が具体的で(金額も示されていると望ましい)、契約時に説明を受けて合意していれば有効になりうる、とガイドラインは整理しています。
敷金の明細をAIに貼る前に、揃えるのは特約と入居年月
貼るのは、控除明細の全行、入居と退去の年月、敷金の額、特約のうち原状回復やクリーニングに触れた文言です。現況確認書や写真の有無、立会いが済んだかも一言ずつ添えます。
住所、氏名、物件名、管理会社名、口座は伏せてから貼ってください。文面ではそこが【氏名】のような空欄で出てくるので、送る直前に自分で埋めます。
立会いで控除の金額を見せられて、えっ、と固まったまま書類にサインを求められる。そんな場面もありえます。立会いがまだなら、「内訳を確認してからお返事します」と持ち帰る一言を先に用意しておくと安心です。入居時の写真がないときは、現況確認書の記載がその根拠になります。
原状回復ガイドラインで1行ずつ仕分ける依頼文
ChatGPTやClaude、Geminiなど、手元のAIのチャット欄に貼る依頼文です。コピーして「入力」の欄を自分の明細で埋め、送るだけです。流れは、入力をそろえる、特約を先に読む、明細を3つに仕分ける、年数で割り引く、再計算する、文面を2通作る、相談先を示す、の7段です。末尾の「題材の例」は試すための入力なので、自分の明細を入れるときはその段落を消してから送ってください。
## お願いしたいこと
賃貸を退去するときに届く敷金の控除明細を、国土交通省の原状回復に関するガイドラインと民法621条の考え方に照らして1項目ずつ仕分け、私が払う目安を計算し直し、管理会社や大家に送る文面まで作ってください。法律に詳しい落ち着いた友人として、敬体で進めてください。
## 入力
次の項目を埋めます。空欄や曖昧な箇所があれば、作業を始める前に不足分を1つずつ質問してください。推測で埋めないでください。
- 控除明細の項目と金額: ここに明細の全行をそのまま貼る
- 入居年月と退去年月: ここに書く
- 預けた敷金の額: ここに書く
- 契約書の特約の文言: 原状回復やクリーニングに触れた部分をそのまま貼る。見当たらなければ「なし」と書く
- 入居時の現況確認書と写真の有無: ある、ないのどちらかと、あるなら内容を一言
- 退去時の写真の有無: 同じ形で書く
- 立会いの済、未: どちらか。未なら予定日も書く
## 手順
1. 入力を読み、足りない項目を質問します。すべてそろってから次へ進みます。
2. 特約の文言を先に読みます。金額や範囲が書かれていない特約は、負担の根拠として弱いものとして扱い、契約時に具体的な説明を受けて合意した形になっているかを確認項目に挙げます。
3. 明細を1行ずつ、次の3つに仕分けます。まとめて扱わないでください。
- 住めば誰でもそうなるもの: 日焼けしたクロス、家具の重みでついた床のへこみ、冷蔵庫の裏の黒ずみなど。通常損耗、つまり普通に暮らして生じる傷みと、経年変化、つまり年数で古くなることは、民法621条の考え方では借主の負担になりません。
- 出来事で起きたもの: 不注意や手入れ不足で起きた傷み。壁の大きな穴、飲みこぼしを放置したシミ、結露を拭かずに広がったカビ、タバコのヤニなど。借主の負担になりえます。
- 根拠が書かれていないもの: 何をどこまで直すのか、なぜ借主負担なのかが明細から読み取れないもの。「補修一式」のような書き方が典型です。確認の対象にします。
4. 出来事で起きたものについて、経過年数で負担が減る品目かどうかを判断し、式で目安を出します。
5. 払う目安の合計を出し、敷金から引いて戻る額を計算します。
6. 管理会社や大家に送る文面を2通作ります。
7. それでも折り合わないときの相談先と、進むかどうかを決める算数を示します。
## 判断基準
迷ったときは次の順で決めてください。
- 仕分けに迷う項目は「出来事で起きたもの」に寄せず、「根拠が書かれていないもの」に入れて、相手に説明を求める側に置きます。
- 住めば誰でもそうなるものは、相手の心証をよくする目的で譲らないでください。ここを譲ると、残りの項目の交渉でも不利になります。
- 入居時の写真がない場合は、現況確認書の記載を入居時の状態の根拠にします。両方ない場合は、相手側にも入居時の状態を示す資料があるかを1通目で尋ねます。
- 特約があっても、通常損耗まで借主負担にする内容は、金額や範囲が具体的で、契約時に説明と合意があったことが要件です。その要件を満たすかを表の根拠欄に書きます。
- 立会いがまだで、その場で請求書類へのサインを求められた場合の返事は「内訳を確認してからお返事します。持ち帰らせてください」の一言にします。サインは内訳に同意した証拠になりえます。
## 経過年数の計算
「ガイドラインに沿うと」と断ったうえで、次の式を表の目安欄の根拠として書いてください。数字はガイドラインの考え方であり、個別の契約の特約や物件の状態で変わりうることも毎回添えてください。
- クロス、カーペット、クッションフロア、畳床: 6年で残存価値1円。借主負担の目安は、請求額に「6から入居年数を引いた年数」を掛けて6で割った額が上限です。入居3年なら請求額の2分の1以下、6年以上なら1円です。
- エアコンなどの設備機器: その機器の耐用年数で同じ計算をします。使った年数を明示してください。
- フローリングの部分補修、襖紙、障子紙、畳表: 経過年数を考えません。ただし借主が傷めた箇所の分だけで、部屋全体の張替えは含みません。
- 鍵の交換: 紛失や破損でなければ貸主の負担です。次の入居者のための交換は借主に求められません。
- ハウスクリーニング: 通常の掃除をして退去していれば貸主の負担が原則です。借主負担になるのは、特約で金額や範囲が契約時に具体的に示され、合意している場合に限ります。
## 出力の形
次の4つをこの順で、必ずすべて出してください。
出力1: 明細を1行ずつ仕分けた表。列は「項目、請求額、仕分け、根拠、あなたが払う目安」の5つです。
出力2: 払う額の再計算。目安の合計と、敷金から引いて戻る額を、計算の途中式つきで書きます。
出力3: 管理会社や大家に送る文面2通。1通目は、控除の内訳の根拠と、工事の領収書や見積書の提示をお願いする文面です。反論はまだ書きません。根拠を出せない項目は、この1通目の返事で取り下げられることがあります。この段階を飛ばさないでください。2通目は、項目ごとの反論と希望する返金額、返事の期限を書いた文面です。どちらも第三者が読む前提の落ち着いた敬体で、怒りや非難の言葉は入れません。
出力4: それでも折り合わないときの相談先の目安。消費生活センターの188、都道府県の宅地建物取引業を担当する窓口、簡易裁判所の少額訴訟は60万円以下、民事調停の4つを、使う順と費用感とともに示します。進むかどうかは、取り戻せる額と、かかる手数料や平日の時間を並べた算数で決めるように書いてください。気持ちではなく数字で決めるよう添えてください。
## やらないこと
- 明細にない数字を作らないでください。不明な金額は「要確認」と書きます。
- 相手を非難する言葉、感情的な表現を使わないでください。
- 住めば誰でもそうなる項目を譲って、物わかりがよく見せようとしないでください。
- 法律の条文番号や判例を断定で引かないでください。「ガイドラインの考え方では」の形にとどめます。
- 弁護士に代わる助言だと言わないでください。
## 退去前の人への付録
立会いがまだの場合は、出力の前に次を短く添えてください。
- 立会い前に撮る写真: 全部屋、壁は1面ずつ、床、キッチンと浴室と洗面とトイレ、エアコンや収納などの設備は扉を開けた中まで。日付が写真に残る設定にします。
- 入居時の写真がないときは、現況確認書の記載を代わりの根拠にします。
- 立会いの場でサインを急がない一言: 「内訳を確認してからお返事します」
## 題材の例
次は架空の例です。入力がそろっていない人は、まずこれで試してください。
都内1K、6畳。入居3年、敷金8万円。明細はクロス全面張替え4万5千円、ハウスクリーニング3万5千円、鍵交換2万円、エアコン洗浄1万2千円、フローリングのへこみ補修1万5千円の5項目で、合計が敷金を超えています。入居時の写真はなし、現況確認書はあり。退去時の写真はあり。特約には「退去時クリーニング費用は借主負担」とだけ書かれています。立会いは済み。入力が欠けていれば、作業の前に1つずつ質問するよう指示してあります。明細がまだ手元にない人は、末尾の「題材の例」の入力で先に試せます。
この依頼文で効いているのは、判断基準の「仕分けに迷う項目は根拠が書かれていないものに入れる」の1行です。AIが気を回して相手側に譲りそうなところで、迷ったら相手に説明を求める側に置くよう歯止めをかけています。
架空の1K明細を通すと、敷金はいくら戻る?
架空の明細で1回通しました。神奈川県の1K(7畳)に入居2年10か月、敷金は75,000円です。控除明細は6項目で合計144,000円、69,000円の追加請求になる設定にしました。特約は「室内クリーニング費用33,000円(税込)を負担」と「鍵の交換費用は乙の負担」の2つです。
入力をそろえて貼っただけで、質問なしで進み、約4分で表と再計算、文面2通、相談先の目安がそろいました。表は4列に縮めて載せます。
意外だったのが、特約のある2項目で結論が分かれたことです。クリーニングは金額と範囲が書かれているので払う側、鍵は金額も範囲もないので根拠の弱い側に置かれました。エアコンについては、室内クリーニングに含まれるなら別立ての請求は二重になる、という指摘まで付いていました。
つまり、特約があるから全部払う、とは決まりません。あなたの明細でも、項目ごとに金額と範囲が書かれているかで分かれると見ておくと、特約の読み方の目安になります。
再計算は、引っかき傷1本分の補修費をXと置いた式で出てきました。
払う目安 = 33,000円 + X円
戻る額 = 75,000円 − (33,000円 + X円) = 42,000円 − X円Xを請求額いっぱいの24,000円にしても18,000円が戻り、追加で払う額は出ません。69,000円の追加請求に見えた明細が、最悪の場合でも18,000円が戻る計算に変わりました。相手の計算との差は、少なくとも87,000円でした。
相談先の目安も、188の消費生活センター、県の宅建業の窓口、民事調停、少額訴訟の順で、費用感つきで出てきました。進むかどうかは「取り戻せる見込み額×勝てる見込み−手数料−時間の費用」が0を超えるか、という式で決めるよう書かれていて、数値例は40,000円×0.8−5,000円−10,000円=17,000円でした。気持ちではなく数字で決める、という依頼文の指示がそのまま形になっています。
敷金の反論は、根拠を尋ねる1通目から
明細が高すぎると、すぐ「払いません」と返したくなりますよね?依頼文では、1通目を反論でなく確認のお願いにしています。根拠を出せない項目は、この返事で取り下げられることがあるからです。
出てきた1通目は8点の資料と説明を求めていて、たとえば次の2点です。
1. 各項目の見積書または領収書 工事業者名、施工箇所と範囲、単価と数量がわかるもの 2. クロス張替え(居室壁・天井 一式)52,000円 壁と天井それぞれの内訳、張替えが必要と判断された箇所と理由、および前回の張替え時期
返事の期限は2週間、内訳を確認するまで差額の支払いは保留、と結んであります。返事を受けてから送る2通目は、項目ごとに考えを書いて「応じかねます」で締める形でした。
退去時の写真で確認できるのは、日焼け、家具の設置跡、冷蔵庫裏の黒ずみです。ガイドラインの考え方では、これらは通常損耗・経年変化にあたり、借主の負担にはなりません。(中略)したがって、この項目の負担には応じかねます。
どちらの文面にも、怒りや非難の言葉はありません。あとで相談窓口に見せることになっても、そのまま記録として出せます。
それでも折り合わなければ、局番なしの188で最寄りの消費生活センターにつながります(国民生活センターの案内)。60万円以下の金銭の支払いを求めるなら、原則1回の審理で解決を図る少額訴訟もあります。
敷金の仕分けをAIに任せる前に、人が確かめる3つ
試したのは、Claudeに架空の明細を1回通しただけです。実際の管理会社とのやりとりはしていません。
出てきた表と文面を、そのまま送っていいのでしょうか?送る前に、次の3つは自分で確かめてください。
- 特約の原文: AIは貼った文言しか読めません。契約時に説明を受けたかも見直します
- 入居年数: 年数で割り引く品目は、入居と退去の年月で結果が変わります
- 検算: 再計算の式を電卓で一度たどります
結論は、個別の契約の特約や物件の状態で変わりえます。ここで出る表と文面は整理の手伝いで、弁護士の助言に代わるものではありません。
手元に明細があるなら、まず全行を貼るところから始めてみてください。



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