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最近、Xで見かけたニュースにちょっと驚きました。
いや、正直に言うと、そこまで衝撃的だったわけではないんですが、
「ついにこういうものが出てきたか」
という感じです。
何かというと、AdobeのPhotoshopやIllustrator、Premiere Pro、After Effectsなどにそっくりなアプリが、まとめて無料で公開されたという話です。
Adobeといえば、クリエイターにはおなじみの企業ですよね。
画像編集のPhotoshop、ベクター画像を扱うIllustrator、動画編集のPremiere Pro、映像加工のAfter Effectsなど、長年にわたってクリエイティブ業界を支えてきたソフトウェアを開発しています。
今回話題になっているのは、そのAdobe製品を意識して開発された「ArtCraft」というプロジェクトです。
しかも、これらのアプリはAIを活用して開発されたというのです。
Adobeの主要アプリを無料で再現しようとしている
ArtCraftが公開しているのは、「Crafting Apps」というオープンソースのアプリ群です。
例えば、
- PhotoCraft:Photoshopに相当する画像編集アプリ
- VectorCraft:Illustratorに相当するベクター編集アプリ
- FilmCraft:Premiere Proに相当する動画編集アプリ
- EffectCraft:After Effectsに相当する映像加工アプリ
- LightCraft:Lightroomに相当する写真管理・現像アプリ
- PdfCraft:Acrobatに相当するPDF編集アプリ
- DesignCraft:InDesignに相当するレイアウトアプリ
といった具合です。
さらに、2026年10月15日時点では、ワープロや表計算、プレゼンテーション、CADなども含め、合計13種類のアプリが公式サイトに掲載されています。
ただし、多くはまだ開発中で、一部がアルファ版として公開されている段階です。
これらはAdobeのプログラムをそのままコピーしたものではなく、Rustというプログラミング言語で新しく作り直したものだと説明されています。
開発の中心となっているのは、ソフトウェア開発歴15年というBrandon Thomas氏。
AIのClaudeを活用して開発したとのことですが、もともと開発経験の豊富なエンジニアです。
また、Mac、Windows、Linux向けのアプリが用意されており、一部にはブラウザ版もあります。
基本的なアプリは無料ですが、生成AI機能などには別途料金がかかる場合があります。
つまり、Adobeと同じ機能をすべて無料で使えるようになった、という話ではありません。
それでも、Adobeの主要なアプリを一式作り直し、無料で提供しようとしていること自体が、かなり面白い試みだと思います。
私もAdobeに毎月7,000円近く払っている
実は私も、仕事でIllustratorとPhotoshopを使っています。
そのため、両方ともサブスクリプション契約をしています。
Adobe公式サイトの2026年10月時点の価格では、IllustratorとPhotoshopの単体プランは、それぞれ年間契約の月々払いで3,280円。
2つ合わせると月額6,560円です。
年間だと約8万円になります。
契約内容や割引によって料金は変わりますが、正直、安くはないですよね。
もちろん、仕事で必要なので仕方がないという面もあります。
長年使ってきたので操作にも慣れていますし、クライアントとのデータのやり取りを考えると、簡単に別のソフトへ移行するわけにもいきません。
Illustratorのデータを相手に渡す必要があったり、Photoshopのレイヤー構造を維持したまま編集する必要があったり。
そういう仕事では、単に似た機能があるだけでは困るわけです。
ただ、個人でイラストを制作したり、SNS用の画像を編集したり、ちょっとした動画を作ったりする程度であればどうでしょう。
必ずしもAdobeでなければならない理由は、以前ほど多くないように感じています。
ただし、今すぐAdobeから乗り換えられるわけではない
ここは少し冷静に見る必要があります。
私自身、今回のCrafting Appsをまだ実際に触っていないので、どこまで実用的なのかは判断できません。
海外メディアのTechRadarでは、実際にPhotoCraftとFilmCraftを試したレビューが公開されています。
そのレビューによると、Photoshop風のPhotoCraftでは基本的なレイヤー操作や色補正はできたものの、選択ツールの動作が不安定だったり、一部の画像形式を読み込めなかったりしたそうです。
動画編集のFilmCraftについても、動画の読み込みやタイムラインへの配置はできる一方、クリップのトリミングがうまくできなかったり、音声に問題が発生したりしたと報告されています。
また、Photoshop形式のPSDファイルについても、対応をうたっているものの、レビュー時には正常に保存できないケースがあったようです。
ただし、これらはレビュー当時のバージョンでの結果です。開発や更新は進んでいるため、現在も同じ問題があるとは限りません。
いずれにしても、現時点でAdobe製品と完全に同じ感覚で使えると考えるのは早そうです。
特にクライアントワークの場合、ファイルの互換性や色の再現性、動作の安定性などが重要になります。
そう考えると、仕事用として全面的に乗り換えるには、まだ時間がかかるのではないでしょうか。
一方で、個人制作なら話は少し変わってきます。
多少の制限があっても、目的の作業さえできれば十分というケースもあるからです。
なお、無料のAdobe代替ソフト自体は以前から存在しています。
画像編集ならGIMP、ベクター編集ならInkscape、動画編集ならDaVinci Resolveなどが有名です。
Canva傘下のAffinityも無料化されています。
今回のArtCraftが面白いのは、そうした個別の代替ソフトとは少し違い、Adobeの操作体系を意識したアプリ群をまとめて開発しているところだと思います。
Adobeにとっては、あまり歓迎できない流れかもしれない
今回のニュースをAdobeがどう捉えているのかはわかりません。
ただ、長期的に考えると、あまり歓迎できる状況ではないのではないでしょうか。
もちろん、Adobeにも長年積み重ねてきた技術があります。
安定性やファイルの互換性、印刷・映像制作の専門的な機能、プラグインとの連携、サポート体制など。
こうした部分は、AIを使えば数日で再現できるというほど単純ではありません。
それでも気になるのは、ソフトウェアを開発するコストそのものが、AIによって大きく変わり始めている という点です。
これまでなら、大企業が何年もかけて開発してきたアプリケーションと同じようなものを作ろうとすれば、大勢のエンジニアと莫大な開発費が必要でした。
ところが今は、経験豊富なエンジニアがAIを活用することで、短期間にこれだけ多くのアプリを公開できるようになっている。
もちろん、公開できることと、完成度の高い製品として何年も維持できることは別問題です。
それでも、以前とは違う競争が始まっているように感じます。
Adobeとしても、何かしらの対応をしてくる可能性はあります。
機能を充実させるのか、料金体系を見直すのか、あるいは別の方向へ進むのか。
ただ、これから先も高機能なソフトウェアだから高額なサブスクリプションが当然、という考え方が通用し続けるのかは、少し疑問です。
正直、欲しいのは新機能よりも軽くて安定したアプリ
これは私自身がAdobeを使っていて感じることなのですが、最近のAdobe製品には本当にいろいろな機能が追加されています。
AIを活用した機能も増えていますし、面白いと思うものもあります。
ただ、実際の仕事で頻繁に使っているかというと、そうでもありません。
結局、毎日使っているのは昔からある基本的な機能だったり。
もちろん、人によって必要な機能は違うと思います。
ただ、私の場合は、新しい機能が次々と追加されることよりも、普段使っている機能が軽快に、安定して動いてくれた方がうれしいんですよね。
言ってしまえば、機能をどんどん増やしていくのとは逆の方向です。
使わない機能は削ぎ落として、必要な機能だけを快適に使えるようにする。
そういうアプリの方が、実は求められている場面も多いのではないかと思います。
今回のArtCraftも、今すぐその理想を実現しているわけではありません。
ただ、こうしたアプリが選択肢として増えることには期待しています。
そもそも、使いたいツールを自分で作ればいいのでは?
そして、今回のニュースを見ていて思ったのが、実はこれです。
私も以前から、Photoshopの簡易版のような画像編集ツールや、ちょっとした動画編集アプリを自分で作れないかと考えていました。
実際にすでに形にして日常的に使っているものもあります。
といっても、Photoshopそのものを再現したかったわけではありません。
例えば、画像をまとめてリサイズしたいとか、複数の画像を並び替えたいとか、ちょっとしたレタッチがしたいだけとか。
動画であれば、決まったサイズに変換したり、画像を順番に並べて簡単なスライドショー動画にしたり。
そういった、日常の制作で繰り返している作業を簡単にするためのツールです。
実際、こういう用途を限定した小さなアプリであれば、AIを使って数分程度で動く試作品を作れることもあります。
もちろん、そこから不具合を修正したり、使い勝手を整えたりする時間は別に必要です。
それでも、以前ならプログラミングの知識が必要だったことを考えると、ずいぶん状況が変わりました。
そして最近は、誰かが作った多機能なアプリを使いこなすよりも、自分が今やりたい作業だけに特化したアプリを作る方が効率的なのではないか と感じることが増えています。
例えば画像の明るさを調整したいだけなのに、高機能な画像編集ソフトを起動する必要はないわけです。
その作業だけができる小さなツールがあればいい。しかも少ない手間で素早く。
今はそういうものを、自分で作れてしまいます。
ソフトウェアを「探して買うもの」から、「必要に応じて作るもの」へ。
少なくとも個人の制作環境では、少しずつそういう変化が起きている気がします。
気づけば自作アプリがどんどん増えていた
実際、私もこれまでAIを使って、いろいろなアプリやツールを作ってきました。
画像制作を効率化するためのツールだったり、ちょっとした作業を自動化するものだったり、Webブラウザから使えるアプリだったり。
作り始めると、これが結構面白いんですね。
何か面倒な作業があると、
「これ、アプリにできないかな?」
という「アプリ制作脳」が起動するようになります。
そして、AIに相談してみると、ほんとーに意外と簡単にかつすぐに形になったりします。
以前なら、便利なアプリを探して、ダウンロードして、使い方を覚えて、場合によってはお金を払っていたわけです。
今は、自分が必要としている機能だけを持ったものを作ることができる。
しかも、普段の作業を自分自身が一番よく知っているので、使いたい機能もはっきりしています。
これは既存のアプリにはない、自作ならではのメリットだと思います。
ただ、便利だからといって次々と作っていると、別の問題も出てきます。
今度は、作ったアプリを管理するのが大変になってくるんです。
以前作ったツールと似たようなものを、また新しく作ってしまったり。
慌てて作ったりすると、どこに保存したのかわからなくなったり。
どれが最新版なのか、わからなくなってしまうこともあります。
せっかく作業を効率化するために作っているのに、それを管理するための作業が増えてしまう。
これはちょっと本末転倒ですよね。
とはいえ、こうした問題も、AIを使って解決していけるのではないかと思っています。
例えば、これまで作ったアプリを一覧リストにして、何ができるのかを整理し、新規があればリストを更新してもらう。
似た機能のアプリがあれば統合する。
必要なくなったものは整理して、不具合のあるものは修正する。
こうした管理作業も、AIエージェントに手伝ってもらえば、かなり効率化できそうです。
もちろん、AIに任せればすべて自動で解決するというわけではありません。
ただ、アプリを作るハードルが下がったからこそ、これからは作ったものをどう管理して、どう活用していくかも大事になってくる気がします。
これまでに作ったアプリをまとめて公開しています
ちなみに、参考までに、私がこれまでに作ってきたアプリをまとめたページを紹介しておきます。
画像関連のツールをはじめ、テキスト編集やマークダウンファイルを読みやすくするものまで、普段の作業を少し便利にするために作ったものなど、いろいろ掲載しています。
Webアプリについては、それぞれのページにリンクを貼っているので、ブラウザからアクセスして使えるようにしています。
もちろん、公開しているアプリはすべて無料です。
特に利用料金などは設けていませんので、便利そうだなと思ったものがあれば、ぜひ使ってみてください。気に入ったものがあればブックマークしてもらえると嬉しいです。
▼自作アプリの一覧ページはこちら
https://nikutama.nyanco.me/app/
こうして一覧にしてみると、自分でもいろいろ作ってきたなと感じます。
もちろん、どれも大企業が開発するような本格的な製品ではありません。
自分が欲しいと思った機能を中心に作っているので、機能も限られていますし、改善の余地があるものもあります。
ただ、個人的にはそれでいいと思っているんですね。
多機能である必要はなくて、目的の作業ができれば十分。
むしろ、余計な機能がない方が使いやすいこともあります。
今後も、普段の制作や仕事の中で「これがあったら便利だな」と思ったものは、少しずつ作っていくつもりです。
そして、自分だけで使うのではなく、ほかの人にも役立ちそうなものは、できるだけ公開していければと思っています。
ソフトウェアの価値そのものが変わっていくのかもしれない
今回のArtCraftを見て思ったのは、Adobeがすぐに不要になるということではありません。
少なくとも、現時点では仕事で安心して使えるAdobe製品の価値は大きいと思います。
ただ、その価値の中身はこれから変わっていくのかもしれません。
以前は、高機能なアプリケーションを開発すること自体が非常に難しく、それが大きな参入障壁になっていました。
これからはAIによって、その開発のハードルが少しずつ下がっていく。
そうなったとき、重要になるのは機能の数だけではなく、安定性や互換性、使いやすさ、そして自分の作業にどれだけ合っているか、という部分になっていく気がします。
そして個人のクリエイターにとっては、もう一つの選択肢があります。
既存のアプリを使うか、別のアプリに乗り換えるか。
それだけではなく、
「自分に必要な機能だけを持つアプリを、自分で作る」
という選択肢です。
もちろん、何でも自作するのが正解とは思いません。
高機能なアプリが必要な場面もありますし、長年使い慣れたソフトを使い続けた方が効率的なこともあります。
ただ、毎月お金を払って高機能なアプリを使い続けることだけが、当たり前ではなくなってきたように思います。
今回のArtCraftがAdobeの本格的な対抗馬になるのか、それとも実験的なプロジェクトとして終わるのかは、まだわかりません。
でも、私が面白いと思ったのは、そこではありません。
あれだけ大規模なアプリケーションを「自分たちで作り直してみよう」と考え、それを実際に公開できてしまう時代になったこと。
そして、その流れが私たち個人の制作環境にも、すでに入り込んできていることです。
私自身、これからも必要に応じて小さなツールを作りながら、自分の制作環境を少しずつ変えていこうと思っています。
もっとも、あまり作りすぎると、今度はツールを整理するためのツールが必要になりそうですが。
参考リンク
- ArtCraft公式サイト・Crafting Apps
- Adobe Creative Cloud公式料金ページ
- TechRadar:ArtCraftの実機レビュー(英語)
- Creative Bloq:ArtCraftの実機レビュー(英語)
※本記事は2026年10月15日時点の公開情報をもとにしています。Crafting Appsの実用性については、筆者自身による動作検証ではなく、公開情報および第三者のレビューを参照しています。開発途中のため、機能や対応状況は今後変わる可能性があります。
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