こんにちは。ひでです。
「日本からはAIユニコーンは出ない」「出るなら西海岸に移るべきだ」——あなたも一度はそう思いませんでしたか。
僕は思っていました。正直に言います。
それが2023年7月、東京の3人組に完全にひっくり返されました。
創業1年2ヶ月で日本最速ユニコーン。創業約2年4ヶ月で評価額4,000億円。オフィスは渋谷。
これは「すごい話」じゃないんです。日本のすべての経営者にとって「意思決定を書き換えるケーススタディ」です。
「AIユニコーン解体新書」シリーズ、第6弾です。
第1弾(Anthropic)では「安全性を盾に防衛壁を作った兄妹」
第2弾(Perplexity)では「Google検索を真正面から再発明した男」
第3弾(Cognition)では「人材密度を最大の堀にした集団」
第4弾(ElevenLabs)では「個人的怒りを1.6兆円TAMに変換した男」
第5弾(DeepSeek)では「副業+自己資金+オープンソースで巨人を揺らした男」
第6弾(Sakana AI)では「東京×3人組×逆張りで日本最速ユニコーンになった集団」← この記事
第7弾(Suno)では「訴訟を抱えたまま高成長を続ける経営胆力」
第8弾(Figure AI)では「BMW工場に人型ロボットを送り込んだ男の戦略」
を扱いました。
ここまで5社、全部アメリカと中国の会社でした。
今回、シリーズ初の日本発ユニコーンです。
主役は、カナダ出身、元Google Brain東京、東京に残り続けて世界トップクラスのAI会社を作った男——デビッド・ハ(David Ha)さんです。
会社の名前はSakana AI(サカナAI)。本社は東京です。
ニューヨークでもサンフランシスコでもロンドンでもなく、東京の渋谷区にオフィスを構えています。
CEOはGoogle Brain東京出身のデビッド・ハさん。CTOはTransformer論文「Attention Is All You Need」の共著者ライオン・ジョーンズ(Llion Jones)さん。COOは元日本外務省・元メルカリ執行役員・元Stability AIのCOOという経歴の伊藤錬さん。
「研究」「技術」「経営実務」の3つの専門性を、3人で完全分業している。
僕はこの3人組の組み合わせを最初に知ったとき、「これは経営の教科書を書き換える事例だぞ」と感じました。
このシリーズで一貫してやっているのは、「会社」ではなく「人(創業者)」を主役にした分解です。
技術論じゃありません。やるのは戦略論と意思決定論。経営者として持ち帰れる学びにフォーカスします。
それでは始めます。
Sakana AI評価額4000億円、東京から世界最速ユニコーンが出ました
「日本のスタートアップが、創業1年2ヶ月でユニコーンになった」——この一行、信じられますか?
僕も最初は桁を疑いました。
でも事実なんです。そして、この数字が何を意味するか、一度ちゃんと翻訳させてください。
2024年9月、Sakana AIはSeries Aで約2億1,400万ドル(当時のレートで約300億円超)を調達し、評価額約15億ドルに到達しました。創業から約1年2ヶ月でのユニコーン入りで、日本のスタートアップ史で最速記録です(複数報道)。
2025年11月にはSeries Bで約1億3,500万ドル(約200億円)を追加調達し、評価額が約26.5億ドル(約4,000億円、2026年5月末時点の約155円換算)になりました(Sakana AI公式ブログ、Tech Startups他複数報道)。
日本の非上場スタートアップとして史上最高評価額です(2025年11月時点)。
創業はわずか2023年7月。創業約2年4ヶ月でこの数字です。
「4,000億円って、どんな規模感なの?」——誰でも知っている会社と並べてみます。
- メルカリの時価総額: 約4,000億円前後(2026年5月時点)
- DeNAの時価総額: 約3,000億円前後
- マネーフォワードの時価総額: 約2,500億円前後
- Sakana AIの評価額(創業約2年4ヶ月): 約4,000億円
創業2年強の非上場会社が、上場しているメルカリと同じ評価額ということです。
これってつまり、東証プライムで何年もかけて上場審査を経て株式市場に認められた会社と、できたばかりのスタートアップが「同じ価値」と見なされているということです。
社員数は推定100人程度。それで、東証プライムの中堅企業並みの評価額がついている。1人あたり評価額40億円——感覚的に、これは異常です。
しかも、これを作ったのは東京・渋谷のオフィスです。シリコンバレーじゃない。
「日本のAIユニコーンは出ない」「出るならアメリカに拠点を移すべきだ」と言われていた業界の常識を、Sakana AIは完全にひっくり返しました。
シリーズ前作で扱った5社(Anthropic、Perplexity、Cognition、ElevenLabs、DeepSeek)は、全部アメリカか中国発でした。Sakana AIだけ、東京です。
「で、この数字を作った人間は何者なんだ」——会社って結局、創業者で全部決まる。事業計画書を読むより、創業者のバックグラウンドを5分調べる方が、その会社の未来は読めると思っていて。
主役の3人を、ここから掘り下げます。
デビッド・ハとは何者か|Sakana AI創業者の素顔
「Sakana AIって、名前は聞くけど誰が作った会社かよく分からない」——経営者の方からよく言われます。
僕もそうでした。最初に調べたとき、予想を完全に超えてきた。
特に、CEOのデビッド・ハさんの経歴は、シリーズ過去5作と完全に異なります。ざっくり時系列で並べると、こんな感じです。
- カナダで生まれ育つ
- カナダの大学で機械工学・物理学を学ぶ
- ゴールドマン・サックスでデリバティブトレーダー(金利トレーディング担当)、Managing Directorとして勤務(東京)
- 2016年頃、Google Brain(東京)に入社、AI研究者に転身
- 2022年頃、Stability AIの研究責任者(Head of Research)に就任
- 2023年7月、Sakana AIを共同創業、CEO就任
注目してほしいのは、デビッドさんのキャリアが「金融 → AI研究 → AI起業」という、シリーズ過去作のCEOとはまったく違う軌跡を辿っていることです。
サム・アルトマンさん(OpenAI)のように、若いうちからスタートアップ起業家を続けてきたわけじゃない。ダリオ・アモデイさん(Anthropic)のように、研究者一筋でキャリアを積んできたわけでもない。
金融業界からAI研究者に転身し、その上で起業した——かなり珍しいキャリアです。
もう一つ重要なポイント。デビッドさんは「東京」と縁が深いんです。
ゴールドマン・サックスでも東京勤務。Google Brainでも東京オフィスに所属。日本に住み続けながら、世界トップクラスのAI研究をしてきた経歴です。
普通、AI研究者でトップになろうとしたら、サンフランシスコのGoogle本社か、ロンドンのDeepMindに移籍するのが定番ルートです。デビッドさんは違った。「東京に住み続けた」んです。
これが、後にSakana AIを東京で立ち上げる伏線になります。
ゴールドマン・サックスから「東京のGoogle Brain」へ
デビッドさんのキャリアで、経営者として僕が一番グッときたのが、ゴールドマン・サックスからGoogle Brainへの転身です。
ゴールドマン・サックスといえば、世界トップクラスの投資銀行です。金利トレーディングのManaging Directorまで上り詰めた人間が、そこを辞めてAI研究者に転身する——普通の人にはできない判断です。
しかも、転身先は東京のGoogle Brainでした。Google本社(マウンテンビュー)でもDeepMind(ロンドン)でもなく、東京を選んだ。
なぜ東京を選んだのか。デビッドさんはX(旧Twitter、@hardmaru)や各種インタビューで、こう発言しています(要約)。
「東京の研究環境はユニークだ。日本の研究文化は、欧米とは違う独自のアプローチがある」
経営者として、この発想は震えませんか?
普通、トップAI研究者は「最先端の研究は西海岸でしかできない」と思い込んでいます。でもデビッドさんは、「東京には東京の独自性がある」と見抜いていた。それを言葉だけでなく、自分の人生で証明している。
「シリコンバレーに行かないと世界では戦えない」——僕も1社目の頃、そう思っていました。でも、デビッドさんを見ていると、「住んでいる場所より、何をやるかが大事」という当たり前のことを思い出させてくれます。
ライオン・ジョーンズ——「Attention Is All You Need」共著者がCTOに
3人組の中で、技術的バックグラウンドが最強なのが、CTOのライオン・ジョーンズさんです。
イギリス出身、バーミンガム大学でコンピュータサイエンス(BSc AI&CS、MSc Advanced CS)を学び、その後Googleに入社。
ここ、ちょっと注目してください。
2017年のTransformer論文「Attention Is All You Need」の8人の共著者の1人です。
「Transformer」って、いま世界中で使われているChatGPT、Claude、Gemini、DeepSeek——全部の生成AIモデルのベースになっている技術です。Googleの研究者8人が2017年に発表したこの論文がなかったら、現在の生成AIブームはなかったと言っても過言じゃない。
これってつまり、生成AIの「設計図そのもの」を書いた人間がSakana AIのCTOにいる、ということです。
「Transformer論文の共著者は世界に8人しかいない」——その1人がCTOにいる時点で、競合との差別化は事実上不可能です。
シリーズ前作のAnthropic記事で「ダリオ・アモデイさんはGPT-2、GPT-3の中核開発者」と書きました。ライオンさんは、それよりさらに上流——Transformer自体の設計者です。
「で、なんでそんなレジェンドがGoogleを辞めて、ベンチャーに来たんだ」——気になりますよね。
ライオンさん自身が、X(@YesThisIsLion)で当時の心境を発信しています。
「I can't believe I'm starting a company with David Ha @hardmaru!! in Tokyo」 (デビッド・ハと一緒に東京で会社を始めるなんて、信じられない!)
別のインタビューでは、こうも言っています(要約)。
「Googleで何年も論文を書いてきたけれど、組織が大きくなって意思決定が遅くなった。新しいことを試すための環境を求めて辞めた」
シリーズ過去作のスコット・ウーさん(Cognition)の「巨大化した組織から離れて、本物の課題に集中できる場所を作りたかった」という発言と、構造がそっくりです。
世界トップクラスの研究者・エンジニアほど、「組織の大きさによる意思決定の遅さ」に耐えられなくなる。
経営者として超重要な視点です。優秀な人材を集めるには、給与だけじゃない。「意思決定の速さ」「自分の仕事が事業に直結する手応え」が、彼らを引き寄せる。
COO伊藤錬——元外務官僚・元メルカリ・元Stability AI COOという経歴
最後に、3人組の中で「経営実務」を担う伊藤錬さんです。
伊藤さんの経歴を時系列で並べると、これがまた異色です。
- 1978年、岐阜県生まれ
- 東京大学法学部卒業
- 2001年、外務省入省
- 在米国日本大使館勤務、本省で日米安保・日EU経済連携協定交渉に従事
- 総理大臣通訳官も務める
- ニューヨーク大学ロースクール修了(ニューヨーク州弁護士)
- スタンフォード大学東アジア研究所修了
- 2011年、世界銀行勤務
- 2015年、メルカリ執行役員(グローバル事業担当)
- 2019年、Solaris Fund Managementパートナー
- 2022年、英Stability AI のCOO
- 2023年、Sakana AI共同創業者・COO
- 2024年12月、東京都AI戦略アドバイザー就任
これ、一人で「日本」「アメリカ」「グローバル」「金融」「テック」「政策」「AI」を全部経験している経歴です。
こういうキャリアの人は普通、コンサルか投資家になります。スタートアップのCOOになるのは珍しい。
でも伊藤さんは、メルカリの上場前グローバル展開、Stability AIの初期スケール、そしてSakana AIの立ち上げと、「日本発企業のグローバル化」を3社で連続経験している。
これが、Sakana AIにとって決定的な強みになります。なぜなら、Sakana AIは創業初期から「日本発で世界と戦う」ことを前提に設計された会社だからです。
- 日本政府との折衝(経済安全保障、ソブリンAI)
- 日本大企業との協業契約(KDDI、ソニー、MUFG)
- 海外VCとの英語ピッチ(NEA、Lux Capital、Khosla Ventures)
- 米国安全保障系資金との交渉(In-Q-Tel)
これら全部、外務官僚・世界銀行・メルカリ・Stability AIで培った経験が直結します。
「研究者2人(デビッド・ハ、ライオン・ジョーンズ)の研究成果を、日本と世界の事業に変換する」——これが伊藤さんの役割です。
経営者として、僕がSakana AIから一番学べたのは、ここなんですよ。シリーズ前作で扱った5社は、いずれも創業者の役割分担が「研究者寄り」「技術者寄り」「ビジネス寄り」のどれかに偏っていました。
Sakana AIは違う。研究(デビッド)×技術(ライオン)×経営実務(伊藤)の三角形が、完全に補完関係になっている。3人それぞれの強みが、他の2人の弱みをカバーする構造です。
この3人組が「なぜ東京を選んだのか」——ここが、Sakana AIの本質に直結する問いです。
なぜ東京で起業したのか|Sakana AIが「日本でAIをやる」を選んだ理由
「日本でAI起業?シリコンバレーに行ったほうがいいんじゃないの?」——正直に言います。僕も最初、そう感じました。
それは偏見だったと、今は分かっています。
なぜなら、これまで「日本でAIスタートアップを成功させた前例」が、ほとんどなかったからです。
シリコンバレーには、OpenAI、Anthropic、Perplexity、Cognitionなど、トップAI企業が集中している。投資家も、人材も、技術コミュニティも、全部西海岸に集まっている。「日本でAIをやる」ことの構造的不利は、誰の目にも明らかでした。
それでも、デビッド・ハさん、ライオン・ジョーンズさん、伊藤錬さんの3人は、意識的に東京を選んだんです。
なぜか。理由は2つあります。
理由1:「シリコンバレーの巨大化路線」へのアンチテーゼ
1つ目の理由が、これが一番重要なんですが、「シリコンバレーの巨大化路線への意識的な対抗」です。
2023年の生成AI業界は、こんな状況でした。
- OpenAIがMicrosoftから100億ドル超を調達
- AnthropicがGoogle・Amazonから巨額調達
- GPU100万枚規模の調達競争が始まる
- AI研究は「資本力勝負」になりつつある
これに対して、デビッドさんは公式ブログや各種インタビューで、明確にアンチテーゼを打ち出しました(要約)。
「AIの未来は『より大きく』だけじゃない。『より賢く』『より効率的に』という方向性も必ずある。自然界の生物が大型化だけで進化してこなかったように、AIにも多様な進化の道筋がある」
これが、Sakana AIの社名の由来です。
「サカナ」というのは日本語の「魚」ですが、Sakana AIが意味するのは「群れで動く魚(小さな個体が群れで知性を発揮する)」です。1匹のクジラ(巨大モデル)ではなく、100匹のイワシの群れ(小さなモデルの集合)で世界を見る、というメタファー。
これってつまり、「巨大企業が兆円を使って作るクジラには絶対勝てないけど、100匹のイワシが群れで動けばクジラを翻弄できる」という戦略宣言です。
経営者として超重要な視点なんですよ。シリコンバレー型の「巨大化路線」では、3人組の小さなスタートアップは絶対に勝てません。資本力で負ける、人数で負ける、GPUで負ける。
でも、「巨大化しない方向」を選べば、巨大化路線の企業が真似できない領域に陣を構えられる。
シリーズ前作のCognition記事で「巨人が組織DNA的に追いつけない領域に最初に陣を構える」と書きました。Sakana AIは、戦略の方向性そのものを変えることで、巨人が追いつけない場所を作っている。
理由2:日本の研究文化と「進化的アルゴリズム」の相性
2つ目の理由が、「日本の研究文化との相性」です。
デビッドさんとライオンさんが研究している「進化的アルゴリズム」「進化的モデルマージ」は、生物の進化の仕組みをAI開発に応用する手法です。欧米の主流研究(巨大モデルを大量のデータで学習させる「スケーリング則」)とは、まったく別の路線です。
そして、進化的アルゴリズム研究は、日本が世界トップクラスの蓄積を持っている分野なんです。
東京大学、東京工業大学、京都大学、理化学研究所——日本の研究機関には、進化計算、遺伝的アルゴリズム、ニューロエボリューションといった分野で世界的な研究者が多数います。デビッドさん自身、Google Brain東京時代から、日本の研究者コミュニティとの強い繋がりを持っていました。
「自分の研究テーマと、その分野で強い研究文化を持つ場所に、会社を立てる」——めちゃくちゃ合理的な意思決定なんですよ。
逆に、シリコンバレーで進化的アルゴリズムをやろうとすると、みんなスケーリング則の研究に集まっているから人材獲得競争で不利になる。東京なら、進化的アルゴリズム研究者のトップ層を、相対的に有利な条件で採用できる。
経営者として、この「研究分野の地理的偏在を見抜いて、そこに陣取る」発想は、すごく勉強になります。
いわば、「金鉱がどこにあるか」を地図で見抜いてから、そこに採掘場を立てた、ということです。多くの経営者が「人材獲得競争が激しい」と嘆くのは、金鉱の場所を確認せずに一番混んでいる場所に掘りに行っているからです。
東京で起業した理由が見えたところで、いよいよプロダクトの中身です。
Sakana AIの正体|進化的モデルマージとAI Scientist、そしてNamazu
「Sakana AIって何を作ってるの?」——経営者の方からよく聞かれます。
正直、テックメディアの記事を読んでも分かりにくい。翻訳します。
「小さなAIモデルを掛け合わせて、効率的に強いAIを作る研究」をしている会社です。
具体的なプロダクトは、大きく4つに分けられます。
進化的モデルマージ——「小さなモデルを掛け合わせて進化させる」発想
Sakana AIの代名詞的な技術が、「進化的モデルマージ(Evolutionary Model Merge)」です。
既存のオープンソースAIモデル(複数)を、進化的アルゴリズムで自動的に組み合わせて、新しい強いモデルを作る手法です。
料理に例えると、こんなイメージです。
- 和食シェフ、中華シェフ、フレンチシェフがそれぞれ得意料理を持っている
- それぞれのレシピを混ぜ合わせて、新しい料理を作る
- ただ混ぜるんじゃなく「進化」させる——美味しい組み合わせは残し、不味い組み合わせは捨てる、を何世代も繰り返す
- 結果として、「3つのシェフの強みを併せ持つ新しい料理」が完成する
何が嬉しいかというと、「巨額のGPU投資なしで、強いAIモデルが作れる」ことです。
これってつまり、普通なら何百億円、何千億円もかけてGPUを買い、数ヶ月かけてゼロから学習させるところを、「既に世界に公開されているオープンソースモデルを組み合わせるだけ」で済む、ということです。計算コストが圧倒的に小さい。
経営者として翻訳すると、「巨大企業がスケーリング則で殴ってくる市場に、小さな会社が別の武器で参入する道」を示している、ということです。
AI Scientist——AIが自分で論文を書く衝撃
Sakana AIで、世界中の研究者を震撼させたのが、「AI Scientist」です。
AIが自分で研究テーマを設定し、実験を行い、論文を書くシステムです。2024年8月にSakana AIが公式ブログで発表し、世界中のメディアが取り上げました。
具体的な流れはこうです。
- AIが「研究すべきテーマ」を自動で提案する
- そのテーマに沿って実験を設計する
- 実験コードを書いて実行する
- 結果を分析する
- 学術論文の形式で報告書を執筆する
- 査読プロセス(peer review)もAIが模倣する
これってつまり、「博士課程の研究者がやっていた仕事のプロセス全体をAIが回す」ということです。
研究の世界では衝撃でした。「AIが研究者を自動化する」というアイデアは、シンギュラリティ論で長年議論されてきましたが、それを実際にプロトタイプとして実現した会社は、Sakana AIが事実上初めてです。
シリーズ前作のCognition記事で「Devinはエンジニアの自動化を狙う」と書きました。Sakana AIは、「研究者の自動化」という、さらに上流の知的労働を狙っている。
「コードを書く人だけじゃなく、研究テーマを発見する人もAIに置き換わりうる」——この衝撃を世界で最初に証明した会社が、東京の3人組スタートアップだったわけです。
Namazu——日本特化LLM、2026年3月公開
2026年3月24日、Sakana AIは「Namazu」という日本特化LLMを公開しました(Sakana AI公式ブログ、Ledge.ai他複数報道)。
「海外のオープンソースモデルを、事後学習で日本仕様に調整する技術」を実用化したプロトタイプモデルです。
例えば、ベースモデルとして中国のDeepSeek-V3.1-Terminusを使い、それを日本仕様に事後学習させる。すると、こんな変化が起きます。
- ベースモデル:日本に関する質問の72%を「回答拒否」
- Namazu(事後学習版):回答拒否がほぼ0%に改善
これってつまり、今まで海外モデルが「この質問は答えられません」と拒否していた日本語の質問に、Namazuはきちんと答えられるようになる、ということです。
海外のAIモデルって、日本に関する質問に対して、変な検閲や偏った回答を返すことが多いんです。中国モデルなら中国寄り、米国モデルなら米国寄りの価値観で回答する。
Namazuは、「世界中のオープンソースモデルを、日本の価値観・文脈に最適化する技術」を提供しています。
「日本企業が、安心して海外モデルを業務利用できる基盤ができる」——特に金融、医療、政府、防衛といった「データを海外に出せない」業界にとって、Namazuの存在は決定的です。
Sakana Chat——無料の日本特化AIチャット
Namazuと同時に公開されたのが、「Sakana Chat」という無料AIチャットサービスです(2026年3月公開)。
Webブラウザでアクセスして、アカウント登録なしですぐに使える。日本国内からのみ利用可能。
ChatGPTやClaudeの日本語版だと思ってください。違いは、「Sakana AI独自の日本特化技術で動いている」こと。
経営者として注目してほしいのは、「無料で公開している」点です。シリーズ前作のDeepSeek記事で「無料化することで市場のスタンダードを取りに行く戦略」と書きました。Sakana AIも同じ発想で日本市場のスタンダードを取りに行っています。
「日本人が、日本語で、安心して使える生成AIチャット」というポジションを早期に押さえる。これが、日本企業との協業契約や、政府案件の獲得に直結します。
プロダクトの中身が見えたところで、いよいよ戦略の核心に踏み込みます。
デビッド・ハの戦略|「巨大化しない」逆張りの正体
「うちもAIスタートアップを立ち上げたいけど、OpenAIみたいに兆円規模の調達はできない」——多くの経営者の方が抱える本音です。
僕も同じです。
そんな中で、Sakana AIは「兆円規模の調達をしない戦略」で、評価額4,000億円のユニコーンになっている。日本の経営者にとって、めちゃくちゃ希望のあるケーススタディなんですよ。
デビッドさん、ライオンさん、伊藤さんがやっているのは、シンプルに言うと3つの戦略の組み合わせです。
- 戦略1:「巨大化しない」技術選択(進化的アルゴリズム、モデルマージ)
- 戦略2:「日本大企業との協業」中心の事業モデル
- 戦略3:「ソブリンAI」という国家戦略への組み込み
この3つが有機的に組み合わさっていることが、Sakana AIの本当の強さです。
ビジネスモデルの核心——日本大企業×高単価×少数精鋭
Sakana AIのビジネスモデルの妙を3点で整理します。
顧客セグメント: 日本大企業(KDDI・ソニー・MUFG等)+日本政府+研究機関。グローバルな中小企業ではなく、少数の超優良顧客に絞っている。
価値提案: 「日本仕様・日本データで安心」+「進化的アプローチで効率的」+「Transformer著者という技術権威」。この3点セットは、海外モデルには再現できない。
収益構造: 大企業エンタープライズ契約+政府案件+API利用料。KDDI、ソニー、MUFGといった日本トップ企業との契約単価は年間数億円〜数十億円規模。10社契約すれば年商数十億〜数百億円規模に到達できる。
シリコンバレー型の「数百万ユーザーから1人月10ドル取る」モデルとはまったく違う事業構造です。
これってつまり、「ターゲットを絞ることで、少数精鋭の組織でも事業を回せる」ということです。100人で日本トップ企業10社を深耕する設計なら、3人組の創業チームでも回せます。
「巨大化しない」技術選択——進化的アルゴリズムの戦略的意味
戦略の核として、もう一つ深掘りしたいのが、「巨大化しない技術選択」です。
2023年の業界トレンドは「スケーリング則」でした。「モデルのパラメータ数を10倍にすれば性能も上がる」という法則に乗って、巨大企業が兆円規模の投資をしていく。OpenAI、Anthropic、Google、Meta——全部この路線です。
これに対して、Sakana AIは進化的アルゴリズムという別路線を選んだ。具体的には、
- 巨大モデルを作るのではなく、既存の小さなモデルを掛け合わせる
- データセンターを大量に建てるのではなく、少ない計算資源で最大の効果を出す
ぱっと見「規模で負けている」ように見えます。でも、ここに戦略的な意味があるんですよ。
スケーリング則の限界が見え始めた瞬間に、進化的アルゴリズムが主流の代替案として浮上する可能性が高い。そして、その分野で世界トップクラスの研究蓄積を持っているのは、Sakana AIです。
「現在の主流路線が限界を迎えたとき、次の主流になりうる路線で世界トップを取っておく」——いわば、「今は誰も使っていない道路の建設許可を先に取っておく」ような長期戦略です。渋滞が起きたとき、バイパスを持っているのは自分だけ。
逆張りで世界を取る——これが、Sakana AIの戦略の核心です。
なぜ日本の大企業(KDDI・ソニー・MUFG)が選んだのか
戦略を理解する上で外せないのが、日本大企業がなぜSakana AIを選んだかです。
KDDI、ソニーグループ、MUFG(三菱UFJフィナンシャル・グループ)、ジャフコ——日本を代表する大企業・金融機関がSakana AIに投資・協業しています。
理由は、「日本独自のAI(ソブリンAI)」への国家的・産業的需要があるからです。
2025年以降、世界各国で「ソブリンAI(Sovereign AI、国産AI)」の議論が活発化しています。
- 国家機密・産業データを海外モデル(OpenAI、Claude、Gemini)に渡したくない
- 国家戦略として、自国のAI基盤を持つべきだ
- 経済安全保障の観点から、AI基盤の海外依存はリスクだ
その文脈で、「日本拠点で、Transformer著者がCTOで、日本特化技術を持つAI企業」として、Sakana AIが唯一無二の選択肢になっています。
KDDI、ソニー、MUFGといった日本大企業からすると、
- 自社の顧客データ・取引データを安心して扱える
- 日本語・日本文化に最適化されたモデル
- 政府案件でも採用される信頼性
- 海外モデルから日本仕様への切り替えが容易
——という条件を満たす唯一の選択肢がSakana AIだった、ということです。
シリーズ前作のDeepSeek記事で「中国の国家戦略との接続でDeepSeekが躍進した」と書きました。Sakana AIは、日本のソブリンAI戦略と接続することで、巨額の調達と契約を引き寄せているわけです。
戦略の全体像が見えたところで、いよいよ調達ストーリーの核心に踏み込みます。
NEA・Khosla・Googleが賭けた理由|Sakana AIに世界トップVCが集まった構造
「3人組のスタートアップに、なぜシリコンバレーのトップVCが投資するんだ」——経営者なら必ずこの問いが浮かぶはずです。
Sakana AIの投資家リストを見ると、誰でも目を疑います。
シードラウンド・Series A・Series Bを通じて、以下の投資家が参加しています。
- NEA(New Enterprise Associates):米国大手VC、運用資産2.5兆円超
- Lux Capital:米国ディープテック特化VC
- Khosla Ventures:ビノッド・コースラさん率いる伝説的VC(Series B新規)
- Macquarie Capital:豪州系投資銀行
- In-Q-Tel(IQT):米国CIAの戦略投資ファンド
- MUFG:日本最大の金融機関(Series B新規)
- KDDI、ソニーグループ、ジャフコ:日本大企業
- Google:戦略的パートナーシップ+出資(2026年)
「シリコンバレーのトップVC+日本大企業+米国安全保障系資金+Google」という、極めて異色の投資家ミックスです。なぜ、こんな多様な投資家を引き寄せられたのか。
「Transformer著者がCTO」というブランド力
まず大きいのが、ライオン・ジョーンズさんという「Transformer著者」のブランド力です。
Transformer論文「Attention Is All You Need」は、世界で最も引用されている機械学習論文の1つです(2025年時点で被引用数17万件超)。
その共著者8人のうち、
- 1人はOpenAI幹部
- 数人は他のAIスタートアップ創業者・CTO
- そして、ライオン・ジョーンズさんはSakana AIのCTO
これってつまり、「8人のうちの1人がCTOにいる」という事実だけで、シリコンバレーVCの投資判断は半分以上決まるということです。
シリーズ前作のCognition記事で「IOI金メダリスト集団が最大の堀」と書きました。Sakana AIにとっての堀は、「Transformer論文共著者がCTOにいる」という、世界レベルの研究権威です。
Transformer論文の共著者は世界に8人しかいない。その1人がCTOにいる時点で、競合との差別化は事実上不可能です。
In-Q-Tel(CIA関連ファンド)の意味
Sakana AIの投資家リストで、経営者の方が一番ざわつくのが、In-Q-Tel(IQT)の参加です。
In-Q-Telは、米国CIAが設立した戦略投資ファンドです。米国の国家安全保障に資する技術を持つスタートアップに投資する目的で運営されています。
過去の投資先には、Palantir Technologies、Keyhole(後のGoogle Earth)、FireEyeなど、米国安全保障の中核技術を支える企業が並びます。
そのIn-Q-Telが、日本拠点のAI企業に投資した——これ、相当異例です。
何を意味するかというと、「Sakana AIの進化的AI技術が、米国安全保障の観点からも戦略的価値がある」と判断された、ということです。
- 進化的アルゴリズムによる効率的なAI開発技術
- 日本という地政学的に重要な拠点
- Transformer著者という技術的信頼性
- 日米同盟の文脈での技術連携
これらが、In-Q-Telの投資判断を引き寄せた可能性が高い。
「自社技術の地政学的価値を発信する」戦略は、すごく勉強になります。普通のAIスタートアップは「商用市場での競争力」だけを発信します。Sakana AIは、「日本拠点・日本企業として、地政学的に意味のある技術を持っている」ことを発信できた。これが、In-Q-Tel、米国VC、日本大企業、Googleと、極めて多様な投資家を引き寄せられた構造的理由です。
Google出資の衝撃——「競合のはずが、戦略的パートナー」
Sakana AIの投資家リストで、もう一つ重要なのが、2026年に発表されたGoogleとの戦略的パートナーシップ+出資です。
これ、よく考えると相当ヘンな話なんですよ。Googleは、Gemini(自社の生成AIモデル)を持っている、世界最大のAI企業の1つです。Sakana AIと真っ向から競合します。
その競合が、なぜSakana AIに出資して、戦略的パートナーシップを組むのか。
理由は、「日本でGeminiを広げたいGoogleと、世界に出たいSakana AIの思惑が合致したから」です。
Googleからすると、
- 日本でGeminiの利用を広げたい
- でも、日本企業は「米国モデルへのデータ送信」に抵抗がある
- Sakana AIの日本特化技術(Namazu)と組めば、日本市場での障壁が下がる
Sakana AIからすると、
- Googleの技術・データセンター・グローバル基盤を活用できる
- 競合ではなく協業パートナーになることで、リソース格差を埋められる
このWin-Win構造を、伊藤さんの経営実務スキルで設計したと考えられます。
シリーズ前作のAnthropic記事で「Google・Amazonとの戦略的提携でクラウド基盤を確保した」と書きました。Sakana AIは、さらに進んで「Googleと組むことで日本市場と世界展開の両方を一気に取りに行く」戦略を選んでいる。
「競合と組むことで、両者にメリットがある構造を作る」発想は、めちゃくちゃ巧妙です。
投資家ストーリーが見えたところで、最後に経営者として一番大事なパートに入ります。
Sakana AIから経営者が学ぶ3つのこと
「すごいのは分かった。でも、うちの会社に関係あるの?」——それが正直なところだと思います。
関係あります。めちゃくちゃ。しかも、日本の経営者にとって、シリーズで一番関係がある会社だと思います。
示唆1:「日本拠点」は不利じゃない。設計次第で武器になる
「日本拠点って、やっぱりハンデですよね」——1社目のとき、僕自身がそう思い込んでいた時期がありました。
Sakana AIが証明したのは、「日本拠点でも世界トップクラスのAIユニコーンが作れる」ということです。
これまでの常識は逆でした。
- 「AIをやるならシリコンバレーに拠点を移すべき」
- 「日本では世界トップのVCから投資を集められない」
- 「日本では世界トップの研究者を採用できない」
Sakana AIは、この3つを全部ひっくり返しました。東京拠点で、NEA・Lux Capital・Khosla Ventures・Google・In-Q-Telから投資を集め、Transformer著者を含む世界トップクラスの研究者を採用している。
なぜ可能だったか。「日本拠点の不利を、構造的に消す設計をしたから」です。
- 言語の壁 → 英語ネイティブ2人+日本語ネイティブ1人の3人組構成
- 投資家ネットワークの壁 → 米VC経験者(伊藤さん)が橋渡し
- 研究コミュニティの壁 → 日本に強い研究分野(進化的アルゴリズム)を選択
- 顧客獲得の壁 → 日本大企業+政府という、日本拠点だからこそ有利な顧客層
「日本拠点の不利を嘆くんじゃなく、それを消す設計をする」という発想です。
応用例を考えると、
- 日本大企業との関係構築 → 日本拠点の方が有利
- 日本政府案件 → 日本拠点の方が有利
- ソブリンAI、経済安全保障の文脈 → 日本拠点の方が有利
これら全部、シリコンバレーに拠点を移すと、むしろ不利になる要素です。
あなたの事業、本当にシリコンバレーに行く必要がありますか?日本拠点だからこそ取れる戦略、考えたことありますか?
示唆2:「ニッチを選ぶ勇気」が巨人に勝つ唯一の道
Sakana AIが証明したのは、「巨大化路線に乗らないことで、巨大化路線の企業が真似できない領域に陣取れる」ということです。
2023年〜2026年の生成AI業界は「スケーリング則」が主流でした。OpenAI、Anthropic、Google、Meta——全部、モデルを大きくする方向で競争している。
ここに、3人組の小さなスタートアップが真正面から殴り込んでも、絶対に勝てません。Sakana AIは、「進化的アルゴリズム」という別の領域を選んだ。当時は「マイナーな研究分野」「主流じゃない」と言われていました。
でも、デビッドさんとライオンさんは、「スケーリング則の限界が見え始めたとき、進化的アルゴリズムが次の主流になる」と読んでいた。
「主流が限界を迎えたとき、次の主流になりうる分野で世界トップを取っておく」——めちゃくちゃ巧妙な長期戦略です。
僕も1社目で痛感したんですが、スタートアップが大企業に勝てる唯一の道は、「大企業が無視している領域」を選ぶことです。
「自分の事業領域で、業界の主流が見落としている『次のメインストリーム候補』は何か?」——これを問い続ける癖が、長期的な競争優位を作ります。
Sakana AIは、「ニッチは弱さじゃなく、未来の主流の予約席」と捉え直すことを証明している。
示唆3:3人組の役割分担モデルが、経営速度を上げる
Sakana AIの最大の特徴は、「研究×技術×経営実務の3人組」という創業チーム構成です。
デビッド・ハさん(研究ビジョン・対外発信)、ライオン・ジョーンズさん(技術アーキテクチャ・実装)、伊藤錬さん(経営実務・対外折衝)——この3人が、それぞれの専門領域を100%担当することで、「全員が全部やる」というスタートアップの罠を最初から回避しています。
普通のスタートアップは、創業者1〜2人が事業計画書も、ピッチ資料も、エンジニア採用も、営業も、資金調達も全部やる。経営者の時間が分散して、本当に重要な意思決定が遅くなる。
Sakana AIは違う。3人で完全に専門領域を分けている。それぞれが自分の領域で100%の意思決定権を持ち、高速で回している。
これってつまり、いわばプロ野球チームで「投手も野手もできる万能選手を1人雇う」のではなく「投手のエース、4番打者、優秀な監督の3人で作る」チーム設計の違いです。万能選手が疲弊して全部中途半端になるより、専門家が3人いる方が圧倒的に強い。
僕の1社目では、「CEOの僕が全部やる」みたいになっていた時期がありました。事業計画も、資金調達も、採用も、営業も、技術判断も、全部僕。その結果、意思決定が完全にボトルネックになって、組織のスピードが落ちました。
Sakana AIを見て改めて思ったのは、「創業チームの構成は、事業モデルそのものだ」ということです。
3人それぞれが「その領域で世界トップ」と言える人材なら、組織の意思決定速度は3倍になる。
あなたの創業チーム・経営チームの構成は、事業モデルに最適化されていますか?
Sakana AIは、「人材密度を、創業チーム3人の段階で完成させる」ことを証明している。
で、意思決定は?
ここまで読んでくださった経営者の方に、最後に問いを置かせてください。
あなたの会社、本当にシリコンバレーに拠点を移す必要がありますか? 日本拠点だからこそ取れる戦略、考えたことありますか?
あなたの業界で、主流が見落としている「次のメインストリーム候補」は何ですか? そこに陣取る勇気、ありますか?
あなたの創業チーム・経営チームの構成は、事業モデルに最適化されていますか? 3人で完全に専門領域を分担する設計、できていますか?
デビッド・ハさん、ライオン・ジョーンズさん、伊藤錬さんがやったことを「すごい話」で終わらせないために、この3つを経営の意思決定に持ち帰ってほしいんです。
Sakana AIの次へ|AIユニコーン解体新書 次回予告
ここまでお付き合いありがとうございました。
「AIユニコーン解体新書」シリーズ、これまでに6社見てきました。
- 第1弾:Anthropic(アモデイ兄妹)——「安全性で防衛壁を作る戦略」
- 第2弾:Perplexity(アラビンド・スリニバスさん)——「巨人の本丸を真正面から再発明する戦略」
- 第3弾:Cognition(スコット・ウーさん)——「人材密度を最大の堀にする戦略」
- 第4弾:ElevenLabs(マティ・スタニシェフスキーさん)——「個人的怒りを1.6兆円TAMに変換する戦略」
- 第5弾:DeepSeek(梁文鋒さん)——「副業+自己資金+オープンソースで巨人を揺らす戦略」
- 第6弾:Sakana AI(デビッド・ハさん)——「東京×3人組×逆張りで日本最速ユニコーンになる戦略」
6社とも戦略のベクトルが違いますが、共通点があります。「巨人が組織DNA的に追いつけない領域に最初に陣を構える」ことです。
今回、Sakana AIで新しく加わった視点は、「日本拠点でも、設計次第で世界トップクラスのユニコーンが作れる」ということです。
「日本からAIユニコーンが出るか」という議論がよくありますが、答えはもう出ました。出ます。しかも、すでに出ています。
Sakana AIが証明したのは、
- 日本拠点でも世界トップVCから投資を集められる
- 日本拠点でも世界トップ研究者を採用できる
- 日本拠点だからこそ、日本大企業・日本政府との戦略的協業ができる
- ニッチな技術選択でも、巨大化路線の巨人を出し抜ける
- 3人組の役割分担で、組織の意思決定速度を3倍にできる
——という、日本の経営者全員に直結する示唆です。
次回は、AI×音楽という別ベクトルで世界を変えようとしている、Suno(スノ)の共同創業者マイキー・シュルマンさんを解剖する予定です。
「ボストンの音楽好きエンジニアが、なぜ評価額数千億円の音楽AI会社を作れたのか」を、経営者目線で深掘りします。
このシリーズは「AIユニコーン解体新書」タグでまとめていきます。気になる方はぜひ追いかけてください。
経営の意思決定にAIを活用する具体的なテクニックや、スタートアップ向けのAI戦略については、連載しているAimanaVoで他にも記事を書いています。よかったらプロフィールから他の記事も覗いてみてください。
それでは、また次回。





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