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オントロジーとはなにか:PalantirがSOMPOで$60M改善した"データ地図"入門

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こんにちは。仕様書を書かないPM、カイです。

「オントロジー とは何か?」を、PMの実務目線でガッツリ整理します。哲学用語の解説ではなく、「BIダッシュボードで止まっている」「AIを入れたのに社内データと噛み合わない」と感じているPM/PdM、事業企画、スタートアップの経営層に向けて書いてます。

きっかけは、Zennで見つけた1本の記事でした。

channnnsmさんのこの記事を読んで、正直ハッとしたんですよ。

私はPMとして、ロードマップを描いたりPRDを書いたりするときに「データはあるのに、意思決定に繋がらない」というモヤモヤをずっと抱えてました。BIダッシュボードを眺めて「で、ここからどうする?」となるあの感覚です。

その違和感の正体が「オントロジーがないから」だと、この記事で言語化されたんですね。

本記事では、元記事のエッセンスをリスペクトしつつ、PMの実務にどう落とすかという視点で再解釈します。PalantirがSOMPOで2025年8月時点の直近3年で$60M(約90億円)の利益改善を実現した事例も交えながら、明日から使える5原則まで一気に解説します。

結論を先に言うと、こうです。

「BIダッシュボードは"読むだけの地図"。オントロジーは"仕事ができる地図"だ」

これがこの記事の通底メッセージです。それでは行きましょう。

1. なぜ今「オントロジー」なのか——2026年のデータ活用の転換点

BI・ダッシュボードで「止まっている」企業の共通課題

PMやってると、よくこんな場面に遭遇しませんか。

経営会議で立派なダッシュボードが映し出される。MAUのトレンド、CVRのファネル、ARPUの推移。数字は綺麗に並んでる。でも会議の最後、誰かが必ず言うんですよ。

「で、結局どうする?」

ここで沈黙が流れる。データはあるのに、次のアクションが出ない。これ、自分は何度も経験してます。

毎週火曜の週次レビューで、前週の数字を30分かけて読み解いて、「じゃあ施策どうする?」ってなった瞬間に「それ、Salesforceで確認してから決めましょう」「CSに聞かないと」「一旦スプレッドシートにまとめます」って話になって、意思決定は翌週に持ち越し——こういうループ、身に覚えありませんか。

このモヤモヤの正体を整理するとこうです。

  • ダッシュボードは「過去の結果」しか見せてくれない
  • 「数字が動いた原因」を聞こうとすると、別のツール(Salesforce、Slack、社内DB)に飛ばないといけない
  • 意思決定して「アクションを実行」するには、また別のツール(基幹システム)を開く必要がある

つまり、「見る」と「考える」と「動く」が完全に分断されてるんですね。BIはあくまで「見る」専用ツール。だから、ダッシュボードを眺めた後の「で、どうする?」で詰まる。

ここを埋める概念が、オントロジーなんですよ。

AIエージェント普及がオントロジーを必須にした理由

もう1つの転換点が、AIエージェントの普及です。

2025年以降、ChatGPTClaudeにToolを持たせて社内システムを操作させる、いわゆる「AIエージェント」を本気で実装し始めた企業が一気に増えました。自分の周りのPMも、半数くらいは「社内AIエージェントPoC」みたいなプロジェクトに巻き込まれてます。

ただ、ここで大量に発生してるのが「AIが社内データの意味を理解できない問題」なんですね。

具体例で言うと、こんな感じです。

  • 「先月の解約率を教えて」とAIに聞く
  • AIは社内DBにクエリを投げる
  • でも「解約」の定義が3つある(自動更新OFF / 退会申請 / 期限切れ)
  • AIはどれを返せばいいか分からず、適当に1つ選ぶ
  • PMが「あれ、数字違くない?」となる

これ、RAGを入れただけでは解決しないんですよ。データに「ビジネス上の意味」が紐づいてないから、AIがハルシネーションを起こす。

つまり、AIに会社のデータを正しく使わせるためには、その前に「データの意味を定義した地図」が必要になる。それがオントロジーです。

ここから本題に入ります。オントロジーという概念、実は「知ってると知らないとでPMのアウトプットが変わる」レベルの話なんですよ。

2. オントロジーとは何か——PMが理解すべき本質的な定義

オントロジーの定義:哲学用語から「ビジネスの地図」へ30秒で理解する

「オントロジーって、なんか哲学っぽくて難しそう」——そう感じてる人、多いと思います。

オントロジー(Ontology)はもともと哲学の用語で、「存在論」と訳されます。「世の中に何が存在し、それらはどう関係しているか」を扱う学問領域ですね。

PMがこの語源を覚える必要はありません。重要なのは、ビジネス文脈での意味です。

PMにとってのオントロジーを30秒で定義すると、こうです。

オントロジー=会社にとっての「顧客」「契約」「案件」が何を意味するかを定義し、それらの関係性とアクションをひとつの地図にまとめたもの。

たとえば「顧客」という言葉。営業は「商談中のリード」を顧客と呼ぶし、CSは「契約済みアカウント」を顧客と呼ぶし、経理は「請求先」を顧客と呼ぶ。同じ言葉なのに、部署ごとに指してるモノが違うんですよ。

これ、エンジニアとの仕様詰めでも毎回発生しませんか。「ユーザーっていうのは、ここでは誰のことですか?」「ログインしてる人ですか、会員登録した人ですか?」——PMが「え、そういう話だったっけ」ってなるアレです。

オントロジーは、この「会社の中で言葉と実体の対応を1枚の地図にする」作業のことです。

Palantirの公式ドキュメントでは、オントロジーは組織のオペレーション層であり、多くの場面において組織のデジタルツインとして機能する、と表現されています。

@Palantir Foundryのオントロジー解説を読むと、データセットやモデルといった「デジタル資産」を、現実世界の「モノ」(工場、機器、顧客注文、金融取引)と接続する層だと書いてあります。

データベースのテーブル定義ではなく、「会社という組織がデジタル空間にもう一度立ち上がっている状態」を作るための地図、ということですね。

DBスキーマ・ナレッジグラフとオントロジーの違い(PM向け対比)

「それってDBスキーマと何が違うの?」と思ったPMの方、鋭いです。自分も最初そう思いました。

PMが押さえるべき違いを、ざっくり対比すると以下です。

概念
主な目的
誰が読む?
アクションを持つ?
DBスキーマ
データを正しく保存する
エンジニア
持たない
ナレッジグラフ
データ間の関係を可視化する
データサイエンティスト
持たない
オントロジー
ビジネスを動かすための地図
PM・現場・AI
持つ(書き込み可能)

ここがミソなんですが、オントロジーの最大の特徴は「アクションを持つ」ことなんですよ。

DBスキーマは「テーブル定義書」、ナレッジグラフは「関係性の図」。どちらも見るための情報設計です。でもオントロジーは違って、「このオブジェクトには、こういう動詞(アクション)を実行できる」が組み込まれてる。

たとえば「顧客」オブジェクトに対して、「契約を更新する」「請求を保留する」「担当営業を変更する」といったアクションが、地図そのものに紐づいてるイメージです。

「見る」だけじゃなく「動かす」設計になってる。これがオントロジーの本質です。これがどう実務を変えるか、次のセクションで具体的に見ていきましょう。

3. BIダッシュボードとオントロジーの決定的な違い

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BIダッシュボードは「Read Only」、オントロジーは「Read/Write」

ここからが、PMにとっていちばん大事なパートです。

BIダッシュボードとオントロジーの違いを、エンジニアっぽく言うと「Read Only」と「Read/Write」の違いなんですよ。

BIダッシュボード
オントロジー
データ操作
Read Only(見るだけ)
Read/Write(見て、書き戻せる)
ユーザー行動
「数字を見て会議する」
「数字を見て、その場で決定し、システムに反映する」
業務との関係
業務の外側で動く(分析ツール)
業務の中で動く(運用層)
AIとの相性
データを見せるだけ
AIにアクションを実行させられる

元ネタのZenn記事で、channnnsmさんがめちゃくちゃ秀逸な対比を示していました。

  • BIツール: 売上が落ちている事実を確認して終わる。アクションは別システムへ移動する必要がある
  • オントロジー: 売上低下に気づいたその画面で、発注などのアクションまで完結する

これですよ、これ。

PMの感覚で言うと、ダッシュボードは「報告書」で、オントロジーは「ハンドル」みたいなものです。報告書を見ても車は動かないけど、ハンドルを握れば動かせる。

「見るだけ」から「動ける」データ基盤へ

もう少し具体的にPMの実務に引きつけてみます。

たとえば、サブスクサービスのChurn(解約)対策を考えるシーンを想像してください。

BIの世界(よくあるPMの月曜朝):

  1. ダッシュボードでChurn率を見る → 「先月3.2%、悪化してる」
  2. 別タブでSalesforceを開いて、解約理由の自由記述を読む → 「価格面が多そう」
  3. SlackでCSチームに「重点フォロー対象のリストください」と依頼 → 翌日返信
  4. その後、自分でスプレッドシートに整理 → PRDを書く → エンジニアに相談 → リリースまで2週間

ここまでの工程、PMの体感として「3日くらい潰れる」感じです。自分も身に覚えがあります。

オントロジーの世界:

  1. オントロジーで「解約リスクが高い顧客一覧」を開く → AIが既に予測スコア付き
  2. 「高リスク顧客」オブジェクトに対して「フォロー施策を実行する」アクションをクリック
  3. CSへのアサイン、メール配信、Slack通知が一気に走る
  4. 結果は同じ画面でリアルタイムに反映

「データを見る場所」と「仕事をする場所」が統合されてるんですよ。

これがオントロジーが「仕事ができる地図」と呼ばれる理由です。BIが地図帳なら、オントロジーはGoogleマップで「ルート案内→ナビ開始」までやってくれる、と言うとイメージしやすいかもしれません。

このBefore/Afterの違いが「概念の話」ではなく「実際の現場で起きている」と証明したのが、次のSOMPO事例です。

4. Palantir Foundryが証明したビジネスオントロジーの実力

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Palantir×SOMPOのオントロジーで3年$60M改善した仕組み

「で、それって本当に効果あるの?」というPMの方、ここが楽しいパートです。

代表事例が、PalantirとSOMPOホールディングスのパートナーシップです。

Palantirの公式SOMPO事例ページや複数の報道によると、SOMPOは2025年8月時点の直近3年間で約$60M(約90億円)の利益改善を実現しました。さらに今後3年で追加$100M(約150億円)の改善が見込まれてます。

$60M、約90億円です。中堅スタートアップなら年商が丸ごと改善したレベルの数字ですよ。これが「概念実証」ではなく「3年間の本番運用」から生まれてる。

具体的に何をやったかというと、保険金請求プロセスを「エンドツーエンドで再設計」したんですね。

  • 不正検知(Fraud Detection)
  • 請求の優先度付け(Triage)
  • 継続モニタリング
  • アンダーライティング(引受判断)の自動化

これら全部をPalantir Foundry上で支えて、保険金請求プロセス全体を「ひとつの仕事ができる地図」として再構築したわけです。

特に注目すべきは、日本のSOMPOで8,000人以上の社員がこのプラットフォームを日常業務で使ってることなんですよ。

8,000人ですよ。PoCで終わってる事例じゃなくて、本番運用で組織全体が動いてる。

PMの目線で見ると、これは「機能のリリース」ではなく「業務OSの入れ替え」レベルの話です。元ネタ記事で言われていた「『現場の手作業』が『オントロジー上のアクション』に置き換わった」という表現が、まさにこの実態を捉えてます。

提供:Palantir Technologies

富士通×Palantirが示す日本市場の本格展開フェーズ

もう1つ、私が注目している動きがあります。

このパートナーシップで富士通は、2029年度末までに約$100M(約150億円)の売上を目標として掲げています。

私がこの発表で注目したのは、数字の大きさだけじゃないんですよ。

日本のSIerの巨頭がPalantir Foundryを取り込んで、自社の業務SI領域にビジネスオントロジーの実装を持ち込もうとしている。これはオントロジーが「理屈の話」から「日本企業の現場ツール」に降りてきたサインだと読んでいます。

PRDでベンダー選定や全社データ基盤の議論をするとき、これまで「オントロジー基盤を入れる」という選択肢は、外資系大企業か先進的なスタートアップの話でした。でも今は、富士通経由でそれが日本の中堅・大企業の実装オプションになろうとしている。

自分の周りのPMでも「次のデータ基盤どうする」という議論が増えてますが、その文脈にオントロジーという観点を入れておくのは、2026年以降のPMとして素直にアリだと思ってます。

では、実際にPMがどう動けばいいか。ここからが実践編です。

5. オントロジーとAIの関係——ハルシネーションを減らし実務に使う仕組み

AIが社内データの「文脈」を誤解する理由

AI活用に取り組んでるPMなら、一度はこの壁にぶつかってると思います。

ChatGPTは超賢いのに、社内データを渡した瞬間にハルシネーションが激増する」

原因はLLM側にあるんじゃなくて、社内データに「意味」が紐づいてないからなんですよ。

たとえば、こんなテーブルがあるとします。

customers
- id: 12345
- name: "株式会社A"
- status: "C"
- updated_at: "2026-05-30"

AIにこのテーブルを渡して「アクティブな顧客を教えて」と聞いても、status: "C"が何を意味するか分からない。Cは「Cancel(解約)」かもしれないし、「Contract(契約中)」かもしれない。

人間のベテラン社員は、Cを見た瞬間に「あ、これは契約中だな」と分かる。でもAIには分からない。なぜなら、社内で共有されてる「Cは契約中を意味する」という暗黙知が、データに書かれてないからです。

これがハルシネーションの正体です。LLMが嘘をついてるんじゃなくて、「文脈が書かれてないから推測するしかない」状態なんですね。

「それ、AIに壁打ちした?」って聞く前に、そもそもAIに渡す「地図」が整ってるかどうか——これを先に確認するのが、AI時代のPMの仕事だと思ってます。

オントロジーはAIへの「業務マニュアル」である

ここでオントロジーが効いてきます。

オントロジーは、データ自体に「ビジネス上の意味」を埋め込む設計です。先ほどの例で言うと、こんな感じになります。

顧客(Customer)オブジェクト
- ID: 12345
- 名称: 株式会社A
- ステータス: 契約中("C"="Contract")
- 補足: ステータスは "C"=契約中, "X"=解約, "P"=保留 を意味する
- 関連アクション: 契約更新, 請求保留, 担当変更
- 注意: 売上集計時は税抜き、返品分は除外する

これをAIが読むと、status: "C"を「契約中の顧客」と正しく理解できるし、「契約更新」というアクションを実行できる、と認識します。

channnnsmさんの記事で印象的だったのが、この一節でした。

「新入社員に教えるように、AIにも説明を書く」

これ、めちゃくちゃ的を射てるんですよ。

新人がジョインしたとき、PMは何をやるか。データの読み方、用語の定義、暗黙のルール、関連部署の連絡先を「業務マニュアル」として渡しますよね。オントロジーは、まさにAI向けの業務マニュアルです。

一般的な役割の違いとして言えば、RAGが「社内ドキュメントをAIに渡す」仕組みなら、オントロジーは「社内データに業務文脈を埋め込む」仕組みです。前者は知識検索、後者は実行基盤。役割が違うんですよ。

ハルシネーション対策でRAGを入れてるPMの方、それだけでは限界があります。データに意味を埋め込む設計がないと、AIは結局推測で答えるしかない。ここがオントロジーが必要な理由です。

理解が深まったところで、実際にPMが明日から使える原則に落としていきましょう。

6. PMが明日から実践できる「オントロジー思考」5原則

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ここからは、Palantir Foundryのような本格的なオントロジー基盤がなくても、PMが明日から思考のフレームワークとして使える5原則を紹介します。

元ネタのchannnnsmさんの5原則をベースに、PM実務の言葉で再解釈してます。

原則1:オントロジー的対象化——テーブルではなく「モノ」で考える

失敗あるある: PRD書くとき、つい「usersテーブルにlast_loginカラムを追加する」みたいなDBスキーマ起点で書いてしまう。エンジニアと話すと「それuserじゃなくてsessionの話じゃない?」と齟齬る。

原則: データを「テーブル」ではなく「ビジネス上のモノ」として捉える。usersではなく「顧客」、ordersではなく「注文」「契約」「請求」と分けて考える。

PM実務での使い方: PRDの冒頭に「登場する主要オブジェクト」セクションを設けて、ビジネス用語で書き出す。

登場オブジェクト
- 顧客: ログイン可能な利用者(法人/個人を含む)
- 契約: 顧客と弊社の間の月額利用合意
- 請求: 契約に基づき毎月発生する支払い義務

これ、エンジニアとの会話が劇的にスムーズになります。私は今、PRDテンプレに「登場オブジェクト」セクションを必ず入れてます。

「前から欲しいと思ってたやつだ」ってエンジニアに言ってもらえると、ちょっと嬉しいんですよ。

原則2:アクション設計——データに「動詞」を紐づける

失敗あるある: 機能仕様を書くとき、画面とデータ構造ばかり考えて「ユーザーが結局何のアクションを取りたいのか」が曖昧になる。

原則: オブジェクトに対して「実行可能な動詞」を必ずセットで設計する。「顧客」だけじゃなく「顧客に対して何ができるか」までを地図に書く。

PM実務での使い方: オブジェクトごとに「許可アクション一覧」を作る。Marty Caganさんが言う「Outcome指向のプロダクト設計」を実装する具体策として、これが効きます。

顧客に対する許可アクション
- プラン変更(誰が?: CS or 本人)
- 契約一時停止(誰が?: CSのみ、要承認)
- 支払い方法更新(誰が?: 本人のみ)

これを書いておくと、後で「この機能、誰が使えるんだっけ?」という議論が一発で終わります。

原則3:メタデータ充実——AIが読める「文脈」を書く

失敗あるある: ダッシュボードの売上数字を見て「あれ、これって税込?税抜?返品分は引いてある?」とSlackで聞きまくる。毎月。

原則: データに「定義」「除外条件」「集計ルール」をメタデータとして書く。人間にもAIにも読める形式で。

PM実務での使い方: 各KPIの横に「定義書」を必ず添える。本当に1行でいいから書く。

MAU(月間アクティブユーザー)
- 定義: 当月に1回以上ログインしたユーザー
- 除外: 社内テストアカウント、退会者
- 注意: タイムゾーンはUTC+9で集計

これがないと、AIに「先月のMAUを教えて」と聞いた瞬間にズレた数字が返ってくるんですよ。AI時代のPMにとって、メタデータの整備は「コードを書かないコーディング」だと思ってます。

原則4:データ名寄せ——複数システムの「同一存在」を統一する

失敗あるある: Salesforceの「Account ID」、基幹システムの「顧客コード」、決済システムの「Customer ID」が別々。同じ会社なのに、システムごとにIDが違って集計できない。

原則: 別システムにある「同じ実体」を1つに統合する。単純な文字列一致ではなく、ビジネスロジックで判定する。

PM実務での使い方: 主要オブジェクト(顧客、契約、商品)について「マスターIDは何か」を定義する。「Single Source of Truth」をどこに置くか、PMが決め切る。

「うちはSalesforceを顧客マスターにする。他システムは全部そこに紐づける」みたいな判断ですね。技術判断に見えて、これは完全にPM/事業の意思決定です。

ここを曖昧にしたまま走り出すと、後で必ず数字が合わなくなって地獄を見ます。自分も過去にやらかしてます。

原則5:オントロジーの段階的実装——1つのドメインから始める

失敗あるある: 「全社データを統合する大プロジェクト」を立ち上げて、半年経っても何も動かない。気がつくと予算だけ消えてる。

原則: 全社統合から始めない。「1つのユースケース」「1つのドメイン」から始めて、価値を出してから広げる。

PM実務での使い方: 最初のオントロジー対象を1つに絞る。「カスタマーサポートの問い合わせ対応」とか「営業の商談管理」とか、明確に範囲を切る。

channnnsmさんの言葉を借りると、こうです。

「全社のデータを統合した完璧なオントロジーを作ろうとすると100%失敗する」

PMの感覚で言うと、これはOpportunity Solution Tree(OST)の考え方そのものなんですよ。

Teresa Torresさんが提唱するOSTは、Outcome(成果)から逆算してOpportunity(機会)を絞り、さらに具体的なSolutionを実験で検証していく考え方です。オントロジーも同じで、「1つのOutcomeに紐づく1つのドメイン」から始めるのが鉄則です。

スモールスタートで成功体験を作り、隣接ドメインに広げる。これがオントロジーを定着させる王道パターンです。

5つの原則を手に入れたところで、最後に「じゃあ明日からどう動くか」を整理していきましょう。

7. まとめ:オントロジーはPMの「Opportunity Solution Tree」の地盤になる

あなたのプロダクトにオントロジーの「データ地図」はあるか

整理します。

  • BIダッシュボードは「読むだけの地図」。データを見せてくれるが、そこから動けない
  • オントロジーは「仕事ができる地図」。データに意味とアクションを紐づけ、人もAIも実行できる
  • AI時代の必須インフラ。社内データの意味を定義しないと、AIはハルシネーションを起こす
  • PalantirがSOMPOで直近3年$60M改善、富士通との日本市場パートナーシップも本格始動。絵空事ではない
  • PMが明日から使える5原則: 対象化、アクション設計、メタデータ充実、名寄せ、段階的実装

PMにとってのオントロジーは、Marty Caganさんの言う「Empowered Team」が機能するための前提インフラだと思ってます。

データに意味が紐づいていないチームは、いくらAIを導入してもOutcomeに繋がらない。逆に、オントロジーが整っているチームは、AIエージェントを「業務に組み込む」レベルで活用できる。

「AIを導入した。でも、なんか使いこなせてない」——そういうチームの多くは、AIの問題じゃなくて「AIに渡すデータに地図がない」問題なんですよ。ここに気づけるかどうかが、PMとして2026年以降のAI活用の差になる、と自分は思ってます。

オントロジー思考の第一歩:自社の「顧客」「契約」「案件」を言語化する

最後に、私が今取り組んでる「明日からできるオントロジー思考の第一歩」を共有します。

来週の月曜、いきなりPalantir Foundryを契約する必要はありません。まずはこれ1枚を書いてみてください。

「自社における『顧客』『契約』『案件』の定義書(A4・1枚)」

書く項目はシンプルです。

  • それは何を意味するか(部署ごとの呼び方の違いも書く)
  • どのシステムにマスターデータがあるか
  • 関連する主要アクションは何か(更新、変更、解約、請求など)
  • 集計時の注意点は何か(除外条件、税込/税抜など)

このA4・1枚が、あなたのプロダクトにとっての「オントロジー思考の出発点」になります。

地味に見えてめちゃくちゃ効果あるんですよ。次にAIに業務を任せようとしたとき、この1枚があるかないかで、AIの出力精度が全然変わります。

もしA4・1枚すら書けないとしたら、それはあなたのプロダクトにまだ「地図がない」サインです。逆にここから始めれば、AIに振れる仕事の幅が一気に広がります。

書いてみたら、その1枚を持ってエンジニアとCSと営業を5分ずつ巻き込んでみてください。「顧客ってどういう定義でしたっけ」と聞くだけで、チームの認識のズレが一気に可視化されます。それだけで、次のPRDの質が上がりますから。

AIに壁打ちする前に、まずは自社の用語を1枚にまとめてみる。ここから始めましょう。

最後の意思決定は自分でやる。でも、その前提となる「地図」は、組織として整えていく必要がある。それがPMの新しい仕事だと、私は思ってます。

今日もお読みいただきありがとうございました。

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