こんにちは。AI経営者の参謀@ひでです。
スタートアップを2社立ち上げ、いまは「経営者の意思決定をAIで加速する」ことに注力しています。
今日は中小企業の経営者に刺さる、人手不足×AI内製の話を持ってきました。
先日、横浜の学校法人アルコット学園が、Google Apps Script(以下GAS)とGeminiを組み合わせて、保護者対応や補助金申請書の作成までAIエージェント化した、というニュースが日経xTECHで報じられました。
幼稚園です。
ITベンダーに数百万払って外注した話ではなく、職員さんが内製で組み上げたんですよ。
これ、僕はかなり象徴的な事例だと思ってて、「AIエージェントは大企業のもの」という前提が崩れた瞬間だと感じています。
今日は、この事例を経営判断のフレームに落とし込んで、「自社でAI業務自動化を内製すべきか、外注すべきか、そもそも今やるべきか」という意思決定をどう下すかを話します。
ぶっちゃけ、技術の話は最小限です。
経営の話だと思って読んでください。
人手不足は「採用」ではなく「AI自動化」で解くという経営判断
採用がなかなか決まらない、応募が来ない、やっと入ってくれた人がすぐ辞める。
中小企業の人手不足は、採用活動を頑張れば解決できるフェーズを、もう超えていると思ってて。
それでも「もう1人採れれば」と追いかけ続けるのが現実だと思いますし、そのしんどさはよく分かります。
ただ、最初に結論から言います。
中小企業の経営者にとって、いまAI業務自動化は「コスト削減ツール」ではなく、「採用代替の経営判断」として捉えるべきフェーズに入ったと思ってて。
これ、人手不足をAIで解決するという文脈で考えると分かりやすいんですよ。
採用コストとAI導入コストの現実的な比較
中途採用1人を入れると、初年度でだいたい500〜600万円のコストがかかります(2年目以降の年間ランニングは460〜470万円程度)。
内訳をざっくり並べるとこんな感じです。
- 給与: 400万円前後
- 社会保険料の会社負担: 60〜65万円程度(年収の約15〜16%)
- 採用エージェント手数料: 想定年収の30〜35%が一般的(専門職では40〜50%になるケースもあり)で、120〜140万円前後
- 入社後の教育コスト: 数十万円
エージェント手数料は1回限りなので、2年目以降はランニング負担が軽くなる、というのもポイントですね。
しかも、採用市場は売り手市場が続いていて、求人を出しても応募が来ない、来ても辞退される、というのが中小企業のリアルだと思います。
一方、AIエージェントを内製した場合のランニングコストは月数千円以内に収まるケースが多い。
採用エージェント手数料(120〜140万円)だけでも、API利用料を十数年分まかなえる計算なんですよ。
つまり経営判断としては、「採用コストの一部をPoCに使って、定型業務を吸収できるか検証する」という発想自体はリスクが低い。
もちろん、AIが採用者1人分の業務をまるまる代替するわけじゃないです。
それでも、定型業務の多くをAIで吸収して、人間は判断と顧客対応に集中する、という発想に切り替えるだけで、経営の景色がかなり変わります。
横浜の幼稚園が内製で実現したこと(アルコット学園の事例)
アルコット学園の事例で何が起きたかを整理します。
報じられている範囲だと、自動化対象はこのあたりです。
- 保護者からの問い合わせ対応(メール一次回答)
- 定期的に発生する文書作成(お便り、案内文など)
- 補助金申請書のドラフト作成
- 園児への教育支援(個別の関わり方の提案など)
技術スタックは、Google Apps Script + Gemini API + Google Workspace + 一部の音声系ツール、という構成です。
ポイントは、これを外注ではなく内製で組み上げているところなんですよ。
幼稚園の職員さんが、です。
なぜそんなことが可能だったのか。
理由はシンプルで、Google Workspaceがすでに導入されていて、定型業務の構造が明確で、内部で実行できる人がいた、この3つが揃っていたからだと僕は見ています。
これは幼稚園特有の話じゃありません。
中小企業の多くが、すでにこの3条件を満たしているか、満たせる距離にあります。
中小企業でもAIエージェントを内製できる3つの条件
自社が内製に向いているかを判断する3条件を出します。
条件1 — Google WorkspaceなどSaaS基盤がすでにある
ゼロからシステムを組む必要はない、というのがAIエージェント内製のキモなんですよ。
Google WorkspaceやMicrosoft 365を使っているなら、メール、カレンダー、ドキュメント、スプレッドシート、ストレージ、これらがすべてAPIでつながった状態ですでに揃っています。
GASやPower Automateで、その上にAIを差し込むだけで「業務をまたいで動くエージェント」が作れる時代になりました。
逆に、Excelをローカル保存している、メールが個人GmailとOutlookでバラバラ、みたいな状態だと、まずSaaS基盤を整えるところからやる必要があります。
経営判断としては、「うちは何のSaaSが入ってるか」を即答できる状態かどうか、が最初のチェックポイントですね。
条件2 — 繰り返し業務(定型・高頻度・文書系)がある
AIエージェントが圧倒的に強いのは、定型・高頻度・文書系の業務です。
具体的にはこんな業務ですね。
- 顧客からの問い合わせ一次回答
- 見積書・請求書のドラフト作成
- 申請書・報告書のテンプレート埋め
- 会議議事録の作成と要約
- 数値レポートの定期作成
ここに時間を取られている社員が複数人いるなら、AI内製の費用対効果は高いです。
逆に、「毎回違う内容で、判断が必要で、月に数回しか発生しない」業務はAI化に向きません。
整理すると、社員の業務時間の上位3つを書き出して、そのうち何時間が定型業務に消えているかを把握することが先です。
ぶっちゃけ、この「業務の棚卸し」をやらずにAI導入を進めると、たいてい失敗します。
条件3 — 実行できる人間が1名以上いる
技術者である必要はありません。
「ChatGPTやGeminiを業務で触っていて、Google スプレッドシートの関数くらいは自分で書ける」レベルの人が、社内に1人いるかどうかが分水嶺だと感じます。
アルコット学園の事例も、職員さん(IT経験のある副園長)がGASを触っているわけです。
「誰でもいい」ではなく「手を動かせる人が1人いた」というのが本質ですね。
新卒のエンジニアを雇う必要はなくて、いまいる社員のなかで「AIに興味があって、手を動かす人」を1人見つけられるかどうか。
ここが見つからないなら、内製はあきらめて外注かSaaSに振ったほうが早いです。
逆に1人見つかれば、その人に月10〜20時間の検証時間を渡す。これだけで、3カ月以内に最初のAIエージェントが動きます。
内製 vs 外注 — 経営者が使う判断基準
AIを内製でいくか外注でいくかについて、明確な答えを持っている経営者はまだ少ないと思います。
僕なりの整理を出します。
内製が正解のケース
以下のすべてに当てはまるなら、内製でいきましょう。
- 自動化したい業務が、自社固有の業務フローと深く結びついている
- 月の発生頻度が高く、業務時間を多く消費している
- 試行錯誤して精度を上げる必要がある(一発で完成しない領域)
- 社内に手を動かせる人が1名以上いる
- 自社のAIノウハウを資産化したい
特に重要なのは「自社固有の業務フロー」です。
外注で作ってもらったエージェントは、業務の細かい変化に追従しづらい。
毎回ベンダーに改修を頼むと、コストもスピードも厳しくなります。
外注・SaaS活用が正解のケース
以下に当てはまるなら、無理せず外注かSaaSに振りましょう。
- 業界共通のユースケース(チャットボット、議事録AI、議事要約など)
- 社内に手を動かせる人材がいない、かつ採用予定もない
- セキュリティ要件が厳しく、自社運用のリスクを取りたくない
- すぐに結果が必要で、PoCに時間をかけられない
Notion AI、ChatGPT Enterprise、議事録系の専用SaaSなど、業界共通のユースケースはもうSaaSが揃っています。
「内製=偉い」みたいな話じゃなくて、自社固有の領域だけ内製、共通領域はSaaS、という使い分けが王道です。
「まずPoC、判断は後」が資金効率を最大化する
最初から内製か外注かを決めようとしないでください。
ROIで考えると、「2週間でPoCを回して、その結果を見てから決める」が圧倒的に資金効率が良いです。
PoCに必要なのは、社員1人の業務時間を週5〜10時間、2週間分。API利用料は数百円〜数千円。
このコストで「内製でいけるかどうか」「外注に振るべきか」が見えるんですよ。
数百万のシステム発注を、PoCなしで決める経営者は、はっきり言ってリスクを取りすぎだと思います。
AI業務自動化のROI試算 — 月数百円のコストで何が変わるか
数字で語ります。
GAS + Gemini APIのコスト実態
ランニングコストの内訳はこんな感じです(2026年5月時点の概算)。
Geminiの料金体系はトークン課金で、業務文書の作成・要約・問い合わせ応答といったユースケースなら、月の処理回数が数百〜数千回でも月額数千円以内に収まることが多いです。
正確な金額は使うモデルと処理量で変わるので、PoCで実測するのが一番ですね。
ちなみにGASには「1回の実行が6分まで」という制限があります。
処理を分割して中断・再開する仕組みを作れば回避できる、というのがアルコット学園の事例でも示されていました。技術的には解決可能な制約なので、意思決定の障害にはなりません。
人件費・採用コストとの比較計算式
シンプルな比較を出します。
AIエージェント内製は「採用1名の代替」までは届きません。
ただ、「採用1名の業務のうち、定型部分の30〜50%を吸収する」ことは現実的にできます。
年600万の人件費が必要なバックオフィス業務のうち、月30時間分の定型作業をAIに巻き取らせると、年100万円相当の社員の時間が、より付加価値の高い業務に振り向けられるようになります。
「月数千円以内の投資で、年100万円相当の人時を再配分できる」という構造です。
採用1人分のコストで10年分以上のAPI料金が賄える計算であり、しかも採用と違って採用できないリスクがゼロなんですよ。
自社への適用ステップ — 明日から動くための3ステップ
「AIに興味はあるけど、何から手をつければいいか分からない」という状態から、2週間で最初の結果を出すための流れです。
Step1 自動化したい業務を1つ選ぶ(選定基準)
最初の選定基準はこの3つです。
- 頻度: 週5回以上発生する業務
- 定型性: 入力と出力のパターンがおおよそ決まっている
- 痛み: いま誰かが「面倒くさい」「時間が足りない」と言っている業務
この3つを満たす業務を、社内で1つだけ選んでください。
「あれもこれも」とやると、必ず失敗します。
「最初の1つで成功事例を作る」が最優先で。成功すれば社内に勢いが生まれて、2つ目、3つ目は自然にスピードが上がります。
Step2 GASかノーコードツールかを選ぶ
選定軸はシンプルです。
最初は「いま使っているSaaSにそのまま組み込める選択肢」を選ぶのが最短ルートです。
新しいツールを導入するコストは想像以上に大きいので、既存スタックで完結させる発想が大事ですね。
Step3 PoCを2週間で回してROIを確認する
PoCの設計はこんな感じで進めます。
- 1日目〜3日目: 対象業務の現状フローを、社員にヒアリングして可視化する
- 4日目〜7日目: AIに任せる範囲と、人間がチェックする範囲を決める
- 8日目〜10日目: 実装する(ここはエンジニアか手を動かせる社員に任せる)
- 11日目〜14日目: 1週間ほど実務で回し、削減工数とエラー率を計測する
この2週間でわかるのは、「AIで本当に時間が浮くか」「業務品質が維持できるか」「社員が使い続けたいと思えるか」の3点です。
ここで数字が出れば本格展開に進む。数字が出なければ撤退するか、別の業務で再挑戦する。
経営判断としては、PoCの結果を経営会議に上げて、横展開するかどうかを30分で決められる状態にすることが大事です。
ダラダラ続けるのが一番コストが大きいので。社員1人の業務時間20〜40時間と、API利用料数千円。このリソースを2週間だけ投下して判断できるなら、踏み出さない理由はないはずです。
まとめ — AI内製は「経営判断」であり、技術の話ではない
今日の話を整理します。
- 採用は限界に近い: 中小企業の人手不足は、採用だけでは埋まらない構造になっている
- AI内製は意思決定の問題: 技術ではなく、経営者が「どこをAIに任せるか」を決める問題
- 3条件で内製可否を見極める: SaaS基盤、繰り返し業務、手を動かせる人、この3つが揃えば内製はワークする
- 内製と外注は併用が王道: 自社固有の業務は内製、業界共通はSaaS、これがコスト最適
- PoC2週間で判断する: 月数千円以内のPoCで、数百万の投資判断を前倒しでテストする
- ROIは「再配分できる人時」で測る: コスト削減ではなく、社員の時間を高付加価値業務に再配分する経営行為
横浜の幼稚園がやったことは、特別な才能や予算が必要だったわけじゃないんですよ。
「自社のSaaS基盤の上に、AIで定型業務を巻き取る」という、ごく普通の経営判断を実行しただけ。
いまこの判断を3カ月遅らせると、競合が同じことを始めて差を広げてくる時期に入っています。
完璧な計画は要らないです。
明日、業務の棚卸しから始めてみてください。
社員の業務時間の上位3つを書き出して、定型業務が何時間あるかを把握する。
そこから最初の1業務を選んで、社員1人にPoCの時間を渡す。
2週間後に数字を見て、経営判断を下す。
このシンプルなサイクルを一度回すだけで、人手不足の景色が変わります。



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