Anthropicが2026年10月16日に公開した雇用データで、27%から9%に下がったのは「技術職の採用者に占める若手の割合」だ。新卒の採用割合ではない。同じデータでは、面接の評価コメントで「自律性と判断」への言及が一番増えていた。だからESや職務経歴書には、AIを使ったことより、AIの出力をどこで止めたかを書いたほうがいいと僕は思う。
減ったのは分かった。じゃあ何を書けばいいんだろう。ガクチカに「Claude Codeで開発しました」とだけ書こうとしていないだろうか? 架空の学生の材料でAIにESを2通り書かせてみたら、差を生んだのは頼み方に足した4行だった。
Anthropicの若手採用、27%から9%は何の割合?
元になったのは、Anthropicの研究者4人がまとめた「How employment is changing at Anthropic」というページだ。社内の雇用データ、AIの使い方、社員アンケート、カレンダー、採用判断の記録に、17人の社員インタビューを重ねている。
若手に関する数字は2つあって、混ざりやすい。
どちらも2025年はじめからの変化として、同じ段落に並んでいる。いる人の割合より、新しく採る人の割合のほうが速く下がった。若手向けの求人は、2025年12月から特に大きく減ったとも書かれている。
一方で、書かれていないこともある。若手が何年目までを指すのか、9%がいつ時点の数字なのか、何人なのかは出ていない。「新卒の採用が3分の1になった」と読むのは言いすぎだと思う。それにこれはAnthropicという1社の社内データで、日本の新卒採用全体にそのまま当てはまる数字でもない。
それでも読む価値はあった。採用の割合より、面接で何にコメントが付いたかの記録のほうが、書く側にはずっと役に立つ。
仕事はAIエージェントを監督する側へ
2026年4月の社内アンケートで、AIで日々の仕事がどう変わったかを自由に答えてもらったところ、20%が「実際に作業する役」から「Claudeを管理する役」に移ったと書いていた。エージェントを見張る仕組みや、出力を見える化する道具をつくる仕事を、ページはメタワークと呼んでいる。これが対話型のClaudeセッションに占める割合は、2025年秋の10%から2026年春の22%に増えた。
8月には、対話型で動かしたAIエージェントの稼働時間が、社員の労働時間の6倍になった。エンジニア1人あたりのコミット数は、半年前の5倍だという。
作る手は増えた。じゃあ足りないのは何か。ページの答えは「人間の注意」だった。非技術職の社員でさえ、自分のエージェントの出力を全部読むと週の労働時間の半分がかかるらしい。出てきたものを読んで、使うか止めるかを決める人の時間が詰まっている。
面接で一番増えたのは、自律性と判断への言及
Anthropicは、2024年以降に採用した数千人分の面接評価シートを自動で分類している。技術職の面接で一番増えたのは、応募者の「自律性と判断」へのコメントだった。専門知識の話は、評価全体に占める割合が小さくなった。非技術職では、顧客やミッションへの向き合い方への言及が増えて、実行スキルの話は減っている。
見落としやすいのが、AIツールを使ってきた実績への言及だ。2024年には技術職の評価の約5%、非技術職の約7%で触れられていた。2026年には、技術職で3倍、非技術職で4倍になっている。
AIを使えるかは前より見られていて、そのうえで一番伸びたのが判断の話、という並びになる。ページ自体に就活生への助言は書かれていないので、ここからは僕の読み替えなんだけど、「AIを使った」はもう前提で、差がつくのは「AIの出力を前に、何を自分で決めたか」のほうだと思う。
あなたのガクチカには、自分で決めた場面が入っているだろうか?
ESの頼み方に4行足したら、判断の場面が出てきた
題材はESの「学生時代に力を入れたこと」400字。依頼文だけを渡したClaudeに、条件を変えて1回ずつ書かせた。材料はこういう架空の学生だ。
- 情報系の大学3年で、軽音サークル40人の出欠とスタジオ予約のWebアプリをClaude Codeで作った
- ログイン部分を自分で読み、パスワードが平文で保存されていたのに気づいて直させた
- 何を入れても必ず通るテストが1件混ざっていたのを見つけ、書き直させた
- 予約の重複チェックを頼んだら関係ない画面まで書き換えたので、止めて1画面ずつに分け直した
- 今は部員40人が毎週使っている
材料だけ渡したA
「400字で書いて」とだけ頼んだAは390字。3つの出来事を順番に全部拾っていて、中身は正確だった。ただ3つが同じ重さで並ぶので、この人が何を決めたのかがぼやける。締めはこうだ。
この経験から、AIに任せるほど、何を頼みどこを自分で確かめるかを決める力が要ると学びました。入社後も、出てきた結果を自分の目で確かめてから使う姿勢を貫きます。
「判断」という言葉は1回も出てこない。きれいな決意表明なんだけど、どこかで読んだ気がする締めだ。
4行の条件を足したB
Bでは、同じ材料にこの4行を足した。
- 「AIに任せた作業」と「自分が判断したこと(止めた・直させた・採用しなかった)」を分けて書く。書いたコードの量ではなく、判断した場面で自分を語る
- 判断した場面は1つに絞って具体的に書き、なぜそう判断したかの理由を1文入れる
- 読んだ面接官が「この人は自分で判断して、AIの出力に責任を持てる人か」を確かめられるようにする
- 「AIを使いこなした」「効率化した」のような言葉で締めない出てきたのは367字。ログインの場面1つに絞って、理由がこう入った。
部員のパスワードを預かる以上、誰が書いたコードでも漏れたときの責任は作った自分にあると考え、採用を止めてハッシュ化して保存するよう直させました。
この直前に「AIのコードは問題なく動きました」と書いてから止めているのがいい。動くかどうかと、使っていいかどうかを分けて考えた人だと伝わる。
Bにも弱いところはある。テストと予約の2件が「気づいて止められました」の1文に押し込まれて、具体性が落ちた。それに各条件1回ずつ書かせただけなので、毎回この差が出るとは言えない。
職務経歴書とESに書くのは、AIを止めた場面
Bの依頼文でAIにESを書かせよう、という話がしたいわけじゃない。AIが書いた文章をそのまま出したら、それこそ「出力を読まずに採用した」ことになってしまう。4行は、自分で書いた下書きを読み返すときのものさしに使えばいい。
ESの400字なら、Bと同じで場面は1つでいい。残りは面接で聞かれたときの材料に取っておく。職務経歴書やインターンの応募書類のように行数が使えるなら、Bで潰れた2件を1つずつ書き分けられる。さっきの架空の学生なら、こう並べられる。
任せたこと: スタジオ予約の重複チェックの実装
止めたこと: 関係ない画面まで書き換えた変更を採用せず、頼む範囲を1画面ずつに分け直した
理由: (そのとき自分が考えたことを1文で)1行目と2行目が分かれているだけで、読む人は「どこまでがAIで、どこからがこの人か」を探さずに済む。
面接で深掘りされたとき、理由の1文を自分の言葉で話せるだろうか? Bの3行目の条件は、そこを確かめるためのものだと思う。
書けるのは、本当にやったことだけだ。止めた場面がまだ無いなら、盛って作るより、次にAIに何か頼んだとき、出力を読んで使うかどうか決めたことをメモに残すところから始めたほうがいい。応募先によってはES作成でのAI利用に決まりがあるので、募集要項も先に読んでおきたい。
若手採用が減る数字を、新卒はどう読むか
27%から9%は、Anthropicという1社の、技術職の採用者に占める若手の割合だ。そこから日本の新卒の行方までは言えない。ただ同じページには、面接で何が見られるようになったかという、書く側がすぐ使える記録も載っていた。
今日やるなら、最近AIに頼んだ作業を1つ思い出して、任せたこと、自分で止めたか直させたこと、その理由を3行で書いてみてほしい。3行目が埋まらなかったら、そこが次に作る経験だと思う。
あなたが最後にAIの出力を「これは使わない」と決めたのは、いつだった?

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