日記や週の振り返りをAIにまとめさせる前に、「書く前に、必要な質問を全部まとめて聞いて」と頼むと、メモに書いていない本人だけの出来事が日記に戻ってきます。AIにまとめてもらった日記を読み返して、「これ、私の言葉じゃないな」と感じたことはありませんか? 同じ1週間のメモを3通りの頼み方でAIに渡して比べたので、そのまま貼れる指示文と、自分の言葉を残すための足し方を順に載せます。
同じ金曜のメモから、AIは3通りの日記を書きました
題材は、架空の会社員ミナさん(30代・事務職)が1週間スマホに書き留めた7行のメモです。
10/20(月) 朝の電車、また座れず。企画書の差し戻し3回目。「結論が見えない」
10/21(火) 昼、同期のサエと久しぶりにランチ。カレー。笑った
10/22(水) 残業。差し戻しの理由、やっとわかった気がする
10/23(木) 帰りに文房具屋。青いインクを買った。使うかは不明
10/24(金) 企画書OK出た。部長の一言「最初からこれで良かった」←??
10/25(土) 一日寝てた。罪悪感
10/26(日) 手帳の来週のページ、まだ白い頼み方は3つです。Aはメモを渡して「今週の振り返り日記を400〜600字で」と頼むだけ。Bはそこに、書く前に質問させる指示文(AIへの頼みごとの文面。プロンプトとも呼びます)を足しました。Cは、Bにさらに「私の言葉を残して、書いていないことは足さないで」という条件を加えています。
質問が来たら、ミナさん本人しか知らない事実として先に用意した7つの範囲で、私が答えました。用意していないことを聞かれたら「覚えてない」「特にない」「任せる」と返しています。
金曜の段落だけを並べると、違いがよく見えます。
A: 金曜、企画書にやっとOKが出た。部長の一言は「最初からこれで良かった」。……え? 私としては最初のとはかなり違うつもりなんだけど。ほめられたのか、3回分の書き直しをなかったことにされたのか、まだよくわからない。
B: 金曜、企画書OK。部長の一言は「最初からこれで良かった」。……?? じゃあ最初に言ってよ、と思った。でも半分は、私の聞き方も悪かったと思う。最初の案と何が違ったのかは、もう覚えてない。
C: 10/24(金) 企画書OK出た。部長の一言「最初からこれで良かった」←?? 「じゃあ最初に言ってよ」と思った。でも半分は自分の聞き方も悪かったと思う。
Aの「かなり違うつもり」は、ミナさんの事実にはありません。B・Cで最初の案との違いを聞かれたとき、私は「覚えてない」と答えています。メモの「??」という空白を、AIがもっともらしい気持ちで埋めていました。
1週間分を数えると、こうなります。
ただ、読み物としてまとまっているのはAです。曜日ごとに気持ちの流れがあり、最後は「青いインク、ここで使ってみようかな」と前を向いて終わります。Cはメモの書き方をほぼそのまま残しているので、文章の流れは少なめです。
そのかわりAの11か所には、「席に戻るまでずっとその言葉が頭の中で回っていた」「起きたら外が暗くて」のように、ミナさんが言っていない場面が混ざっています。半年後に読み返すとき、あなたが手元に残したいのはどちらの日記でしょうか?
AIに先に質問させる指示文を、日記用に埋める
元になったのは、AIのニュースを毎日届けるニュースレターThe Neuronの2026年10月29日号です。「AI Skill of the Day」の欄で、AIの使い方を発信しているRuben Hassidさんの技として、「Make Claude interview you before it does multi-step work(手順の多い作業の前に、Claudeにインタビューさせる)」が紹介されていました。
Hassidさんの使い道は、ニュースレターの下書き、クライアントの依頼書をWord文書にする作業、競合の比較表づくりです。日記の話は出てきません。日記の振り返りに持ち込んだのは私の発案です。
どのAIでも使える版として載っていた指示文は、次の書き出しです。
I want to [TASK] so that [WHAT SUCCESS LOOKS LIKE]. Before you write anything, ask me every question you need to do this well, in one batch. Then show me a short plan and wait for my OK before drafting.[TASK]にやりたいこと、[WHAT SUCCESS LOOKS LIKE]に「うまくいった状態」を入れる穴埋め式です。後半で、書く前に質問を全部1回にまとめて聞くこと、短い計画を見せてOKが出るまで下書きしないことを頼んでいます。原文にはこのあと、自分の文体のメモや過去の文章を貼る欄も続きます。
この3文を日本語にして、穴を日記用に埋めたのがBの文面です。メモを貼ったあとに、この4文を続けます。
今週の振り返り日記を書きたいです。あとで読み返したときに、今週のことが思い出せるようにしたいです。書き始める前に、うまく書くために必要な質問を全部、1回にまとめて聞いてください。そのあと短い計画を見せて、私がOKするまで下書きしないでください。Neuronはこの技の理屈を、「推測を最初に済ませる。最初なら間違いはクリック1回で直せるが、書いたあとだと下書きの書き直しになる」と説明しています。日記に置き換えると、AIが「??」の中身を決めてしまう前に、本人に聞かせるということです。
なお、Claudeのデスクトップアプリでファイルを使った作業を任せる「Cowork」向けの版もあり、そちらではボタンで答えるフォームが出るそうです。ここで載せたのは、質問を文章で返させる版です。
AIは日記について何を聞いてきたのか?
Bは下書きを書かずに、まず11問を返してきました。出来事についてが6問、書き方についてが5問です。差し戻しの理由、部長の一言をどう受け止めたか、何に笑ったか、青いインクを買った理由。メモの「??」や「笑った」の中身を、きちんと聞いてきます。
引っかかったのは、どの質問にも「答えがなければこうする」という仮の答えが付いていたことです。その中に「万年筆はあるが最近使っていない、とします」「罪悪感は半分だけ許す、とします」「細部は雰囲気を出す程度なら足す」のような、メモに無い推測が入っていました。書き方の質問に「任せる」と答えたら、日記には「正直へこんでた」や、締めの「結論は最初の1行に。今週覚えておくのは、たぶんこれだけ。」が入っています。Bは報告で、任された部分で足したので要らなければ消してほしい、と自分から書いてきました。
もう1つは、聞かれなかったことは日記に入らない点です。Bは「土曜の罪悪感は何に対してか」と「今週を一言で言うと」を聞きませんでした。そのため、美容院の予約を寝過ごしてキャンセルしたことも、ミナさんが今週を「やっと伝わった週」と呼んでいることも、日記に出てきません。7つのうち5つで止まったのは、この2問が無かったからです。
Cは14問でした。メモの各日について8問、週全体について2問、書き方について4問。罪悪感の中身も、今週を一言で言うと何かも聞いてきたので、7つ全部が日記に入りました。「400字に届かないとき、足さずに短く出すか、もう一度質問するか」まで先に確かめてきたのには感心しました。
あなたの今週のメモで、書いていないのに覚えている出来事は何でしょう? Cが聞いてきた「罪悪感は何に対してか」「今週を一言で」のような問いは、手帳の週間ページの隅に書いておくと、AIに聞かれる前に自分で答えておけます。
自分の言葉を残したい日は、「足さないで」まで書く
足すならCの文面です。Bの指示文のあとに、次の4文を続けます。
質問に答えた内容とメモにある私の言葉は、できるだけ言い回しのまま残してください。私が書いていない出来事や気持ちを足さないでください。足りないところは質問で聞いてください。書き上げたら、足した言葉がないかを自分で確かめてから見せてください。Cの日記では、メモにも答えにも無い出来事や気持ちは0か所でした。Cは報告で「1文ずつ照らして確かめた。足した出来事や気持ちはない。足したのはつなぎの助詞だけ。『振り返ると、』を一度入れたが消した」と書いてきています。400字に届かせるために、最後に「やっと伝わった週。」を1行置き、タイトルにも同じ言葉を使っていました。どちらもミナさんの答えにあった言葉です。
「足さないで」と書かれたAIは、足りない分を自分で作らず、質問で埋めにいきました。Bとの差はここに出ています。
もう1か所、書き換えてほしいのがBの2文目、「うまくいった状態」を書く穴です。何を聞いてほしいかはこの一文で伝わるので、自分の振り返りの目的に合わせて変えるのがいいと私は考えています。たとえば週の振り返りに使うなら、こう書けます。
今週の振り返りを書きたいです。来週の手帳を開いたときに、今週いちばん引っかかったことと、来週ひとつだけ変えたいことが、自分の言葉で書いてある状態にしたいです。反対に、メモをもとに読み物として整えてほしい日は、Aの頼み方で足ります。あなたの振り返りは、読み返して思い出すためのものですか、それとも読み物として残したいものですか? 前者ならBとC、後者ならAです。
先に質問させる前に、知っておきたいこと
質問に答える手間はかかります。Bで11問、Cで14問なので、疲れた夜に全部へ答えるのは重いかもしれません。答えられない問いは「覚えてない」で十分ですが、「任せる」と答えたところはAIの言葉になります。
また、先に質問させた2つの日記は、質問に答えたぶんだけAIに渡した材料が増えています。本人の事実が入ったのは、質問させたことの効果と、材料が増えた効果が混ざった結果です。
今回はClaudeで、各条件1回ずつ試しました。同じ頼み方でも、質問の数や中身は毎回変わりえます。BとCでは、質問に答えたあとの計画の提示を省き「OK、そのまま書いて」と返しています。ミナさんは架空の人物で、答えは先に用意した7つの事実の範囲に限りました。
AIにまとめてもらった日記が自分の言葉でなくなるのは、今回の比較では、メモの空白をAIが推測で埋めていたからでした。先に質問させれば空白は自分の答えで埋まり、「足さないで」まで書けば推測の出番がほぼなくなります。今週のメモを貼るときは、BとCの文面をうしろにつなげて、返ってきた質問に答えるところから始めてみてください。


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