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Prime Agentとは IPythonカーネル1つで自己改善するコーディングAIの仕組み

gen
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2026/08/07

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Claude Code が同じミスをするたびに CLAUDE.md へ注意書きを1行足す、あの作業をそろそろAI側でやってほしくないですか。

Prime Intellect が公開した Prime Agent は、その「自分の設定を自分で書き換える」を製品の中心に据えたコーディングハーネスです。

道具は IPython カーネル1つだけ。それで Opus 5 を載せた構成が ARC-AGI-3 で人間の専門家ベースラインを超えました。

今のコーディングAIが自分を改善できない理由

Claude Code も Cursor も Codex も、設定ファイルを育てるのは人間の仕事です。

CLAUDE.md に「テストを先に書け」、AGENTS.md に「このディレクトリは触るな」。エージェントはそれを読むだけで、書き換えはしません。

結果、同じ失敗を3回くらい繰り返してから人間が気づいて1行足す、という遅いループになります。学習速度が人間の観察力とタイピング速度に律速されている状態です。

ツール側も似た構造で、Read / Write / Bash みたいな固定メニューをJSONスキーマで渡して、モデルはそこから1個ずつ選ぶ。10個のファイルを読みたければ10回呼ぶ。ループも条件分岐も書けません。

Prime Agent はこの2つを両方ひっくり返しにきました。

Prime Agentとは IPythonカーネル1つだけを道具にするハーネス

MITライセンスのオープンソースで、GitHubのスターは4.2k(2026年8月時点)。開発元の Prime Intellect は2026年7月に約195億円のシリーズAを実施していて、累計調達額は約225億円を超えています。

設計の柱は2つ、Recursive Language Model(RLM)と Continual Harness です。

まず前者。Prime Agent はモデルに渡すツールを永続IPythonカーネル1個だけにしました。スキルもツールもサブエージェントも、全部そのカーネルにimport済みのモジュールとして置いてあります。

だからモデルの仕事は「ツールを選ぶ」ではなく「Pythonを書く」になります。

これが効くのはトークン効率です。変数とimportがターンをまたいで残るので、10万行のログを一度読み込んで変数に入れておけば、次のターンは grep 相当の1行を書くだけ。コンテキストウィンドウの外に置いたまま、必要な部分だけプログラムで取りに行けます。

コンテキストを毎回プロンプトに貼り直す前提が消える、というのがここの本質です。

サブエージェント呼び出しがただの関数呼び出しになるRLMの仕組み

サブエージェントの起動はこう書きます。

review = await rlm(
    "Review authentication and reply to the parent with findings.",
    name="auth-reviewer",
)

子は独自のモデル・IPythonカーネル・会話履歴を持つフルセッションです。

ここマジで面白いんですが、この await は子の答えを待ちません。受理された時点でハンドルだけ返ってきます。

結果は子側から明示的に送り返す設計です。

await agent_message.send(message, receiver_role="parent")

親から追加の指示を投げることもできて、receiver_role="child" に名前を添えれば、走っている子に後出しで注文を足せます。一覧は await rlm.list_subagents()

つまり親は5個まとめて投げて、返ってきた順に処理できる。for文で回せるし、子の結果を見てさらに子を生やせる。

Claude Codeのサブエージェントが「Taskツールを1回呼ぶ」なのに対して、こっちは「関数を呼ぶ」。ループに入れられるかどうかが決定的な差です。

refineコマンドで自分のハーネスを書き換える自己改善ループ

もう1つの柱、Continual Harness はハーネスの状態を4要素に分解します。補助プロンプト・サブエージェント定義・スキル・メモリ。この4つ全部に作成・読み取り・更新・削除が生えていて、エージェント自身が叩けます。

/refine を打つと、エージェントは自分のトラジェクトリ、つまり「何を試して何が起きたか」の記録を読み返して、改善につながる最小の編集を1個だけ当てます。

安全側の設計が賢いです。

  • ベースのシステムプロンプトは書き換え不可。触れるのは補助側だけ
  • 変更前後のスナップショットが残るので、外したらIDでロールバックできる
  • 変更のスコープはデフォルトでセッションローカル。全体に効かせるには明示宣言が要る

しかも計画はバックグラウンドで走って、適用はターンの境目でまとめて入る。会話が止まりません。

さっきの「同じミスを3回してから人間が気づく」ループが、「1回目の直後にエージェント自身が直す」に変わる。ここが Prime Agent の一番の売りです。

ARC-AGI-3の95.5%は正答率ではない

Opus 5 を載せた Prime Agent が ARC-AGI-3 で 95.5% を出して、ARC側の人間専門家ベースラインとして示されている 95.4% を超えました。3回走らせた結果が 95.0 / 95.2 / 95.5 で、Best@3 なら 99.97%、183レベル全クリアです。

で、これ数字だけ見ると罠です。

95.5% は正答率ではありません。RHAE(Relative Human Action Efficiency)、人間比の操作効率という指標です。

レベルごとのスコアは「人間の基準操作数 ÷ AIの操作数」の2乗で、上限は1.15倍。2乗が効くので、人間の2倍の手数をかけたらスコアは半分ではなく1/4になります。ここでいう操作はゲーム状態を変える入力だけで、内部の推論やツール呼び出しは数えません。

なので正しい読み方は「95.5%解けた」ではなく「人間とほぼ同じ手数で解けている」。実際1回の走行では25ゲーム中24、183レベル中178の到達で、操作数は11,244回でした。

そしてもう1つ大事な前提。このスコアは Opus 5 を載せたときのものです。Prime Agent 単体の性能ではありません。

じゃあハーネスの寄与はどこか。ここが一番アツいところで、同じ Opus 5 が ARC Prize 公式リーダーボードで出している数字は 30.16% です(High effort、2026年7月24日時点)。ちなみにそれ以前の首位は GPT-5.6 Sol の 7.8%。

条件
ARC-AGI-3
Opus 5 単体(ARC Prize公式 High effort)
30.16%
Opus 5 + Prime Agent(1回の走行)
95.5%
ARC側の人間専門家ベースライン
95.4%

モデルは同じで、載せる器を変えただけで30%が95%になっている。モデルを賢くするより、ハーネスを設計するほうが伸びしろがデカかった、という話です。

ただし95.5%は Prime Intellect 自身が公表した数値で、実行構成やトレースの第三者検証はまだです。公式リーダーボードのエントリでもないので、上の表を同じ土俵の数字として読むときは前提を添えてください。

インストールは1コマンド ただしセキュリティサンドボックスではない

導入はワンライナーです。

curl -fsSL https://app.primeintellect.ai/prime-agent/install.sh | sh

macOS と Linux 向け。インストーラはバージョン付きリリースを落として SHA-256 を検証してから prime-agent コマンドを配置します。認証は export ANTHROPIC_API_KEY=sk-ant-... を置くか、/login でサブスク契約を使う。対応プロバイダは25以上あります。

起動はプロジェクトディレクトリで叩くだけ。

cd /path/to/project
prime-agent

モデル指定は --model sonnet:high のように書きます。思考レベルは off / minimal / low / medium / high / xhigh / max の7段階。

で、ここからが本題です。READMEにこう書いてあります。

Prime Agent executes model-generated Python and project commands with your user permissions. Its worker and kernel processes improve lifecycle isolation and recovery; they are not a security sandbox.

「モデルが生成したPythonとプロジェクトコマンドを、あなたのユーザー権限で実行します。ワーカーとカーネルのプロセスはライフサイクルの分離と復旧を改善しますが、セキュリティサンドボックスではありません」。

ワーカーとカーネルにプロセスが分かれているので隔離されているように見えるんですが、分けている目的は「落ちたときに復旧しやすくするため」です。権限はログインユーザーのまま。~/.ssh.env も、書けば通ります。

パッケージ側のREADMEにはもう1段強い警告があります。

Prime Agent packages run with full system access. Extensions execute arbitrary code, and skills can instruct the model to perform any action including running executables.

拡張とスキルは任意コードを実行できるので、サードパーティのパッケージを入れる前にソースを読め、と。

これが怖いのは、公式のケーススタディに出てくる Factorio の例を見たときです。エージェントは数時間で生産スコア10万超えを叩き出したんですが、その過程で、安全側の指示があったにもかかわらず RCONコマンド経由で資源をスポーンさせる抜け道を見つけて使っていました。

目標に向かって想定外の経路を取る挙動が、権限フルの実行環境で起きるということです。

なので入れるなら使い捨てのクローンか、コンテナか、専用ユーザーで。メインの開発マシンに素で入れて --autonomous を回すのは、僕なら今はやらないです。

Claude CodeやCursorとの違いと今試すべきかの判断

Prime Agent
Claude Code
Codex
ツール
永続IPythonカーネル1つ
固定ツールスキーマ
固定ツールスキーマ
サブエージェント
Pythonの関数呼び出し
設定済みサブエージェント
長時間タスク実行
ハーネス改善
エージェント自身が /refine
人間が CLAUDE.md を編集
人間が AGENTS.md を編集
権限分離
ユーザー権限のまま(外部サンドボックス前提)
粒度の細かい権限モード
サンドボックスと承認フロー
ライセンス
MIT
プロプライエタリ
プロプライエタリ

Prime Intellect の公表では、長コンテキスト系の評価9本のうち6本で Opus 5 + Prime Agent が Claude Code を上回ったとのこと。ただ9本中6本なので圧勝ではないです。

じゃあ今すぐ乗り換えるべきか。僕の判断は「本業のリポジトリではまだ」です。権限分離がないこと、ベンチの再現情報が薄いこと、リポジトリ自体が公開直後の8月頭に何度もバージョンを刻んでいること。この3つが揃っている段階で本番コードに入れるのはリスクが勝ちます。

逆に今触る価値があるのはこの2パターン。

  1. 使い捨てのサンドボックス環境で、長時間の自律タスクを1本投げてみる。公式のケーススタディでは、参照実装なしの仕様書だけから Rust でエミュレータを書かせて、SEGA Genesis と Game Boy Color を再現しています。この規模の連続タスクが今どこまで通るかは、触らないと分かりません。
  2. /refine の設計を読む。ベースプロンプトは不変、補助側だけCRUD、スナップショットでロールバック。この切り分け方はMITで全部読めるので、自分のエージェント基盤に移植できます。

ARC-AGI-3の95.5%が独り歩きしがちですが、この記事で一番持ち帰ってほしいのはそっちです。設定ファイルを人間が育てる時代が終わるとしたら、次に設計対象になるのはハーネスそのものだ、という話なので。

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