自己分析が進まないからAIに聞いてみたら、それっぽい強みが3つ返ってきた。
でも読み返すと、自分の言葉として入ってこない。
転職活動中にこの引っかかりを感じている人は、かなり多いと思います。
どこまでをAIに渡して、どこを自分で持つのか。
その線引きのヒントが、OpenAIの社長のインタビューに入っていました。
OpenAI社長が語った「雑務を任せる未来」とは。
2026年9月4日、Stratecheryというメディアにグレッグ・ブロックマンさんのインタビューが掲載されました。
OpenAIの社長で、共同創業者でもある人です。
話の軸は、AIの使い方がチャットからエージェントへ移っていくという予測です。
そこでブロックマンさんは、個人の生活での使い道をこう語っています。
「個人的な生活では、チケットの予約を頼んだり、散髪の予約を取ってもらったり、そういう個人的なことを頼めるようになってほしい」。
原文では "to be able to book your haircut" という言い方をしています。
散髪の予約です。
モデルの性能ではなく、暮らしの中の小さな用事が例に出てきました。
このインタビューが公開されたのは、OpenAIが新しい主力モデルのGPT-6 Astraを発表した翌日でした。
発表のブリーフィングでブロックマンさんが「AGIの時代へようこそ」と締めたことは、海外メディアが一斉に見出しにしています。
収録自体は発表前ですが、AGIの時代を宣言した人が個人向けの未来として挙げていたのは、散髪の予約でした。
これまで秘書に頼んでいたような用事をAIに頼む。
そういう時代が、もう具体的な話になってきています。
AIに奪われるのは仕事か、それとも作業か。
予約も日程調整も資料の下書きも引き受けてもらえるなら、自分の手元には何が残るのか。
不安になりますよね。
ただ、同じインタビューでブロックマンさんは、もう一歩踏み込んだことを話しています。
「人間の判断、人間による監督、人間によるコントロール。それらすべてを維持することが絶対的に重要で、永遠に維持し続けなければならない」。
原文の "to maintain forever" という言い方がかなり強いです。
AIを作っている側の社長が、人間が判断を握り続ける前提を外していない。
ここで不安の形が変わります。
代行されるのは作業で、残るのは判断です。
散髪の予約は頼めても、「なぜその店にするのか」は渡していません。
そして転職活動でこの線が一番はっきり出るのが、自己分析です。
自己分析で、AIに任せていい部分はどこまでか。
仕分けは3つの問いでできます。
自分の経歴から仕事を1つ選んで、順番に当ててみてください。
1: その仕事の結果を、数字か事実で言えるか。
2: なぜそのやり方を選んだのか、自分の言葉で言えるか。
3: 途中で迷った場面を、1つ思い出せるか。
1に答えられるなら、そこから先の整理はAIに任せて問題ありません。
経歴の棚卸し、時系列の並べ替え、強みの言い換え候補を10個出す、書き漏れの指摘。
この辺りは作業なので、自分でやってもAIがやっても仕上がりは変わりません。
網羅性でいえばAIのほうが上です。
危ないのは、2と3に答えられないまま、そこまでAIに埋めさせることです。
判断の理由が自分の中で言葉になっていないと、AIは「ありそうな理由」を置いてきます。
しかもそれが文章としては読めてしまうので、完成した気になります。
僕が転職活動をしていた頃、自己分析のメモをまとめてAIに整えてもらったことがあります。
出てきた文章はきれいでした。
でも面接で「その判断の背景を聞かせてください」と返されて、自分の書類に書いてある根拠を説明できませんでした。
あれは自分の分析ではなく、自分の経歴を素材にした一般論だったんです。
AIが書ける一文と、自分にしか書けない一文の違い。
同じ経験を2通りに書いてみます。
AIが書ける一文。
「チームの業務フローを見直し、月間20時間の工数削減を実現しました」。
自分にしか書けない一文。
「削減できそうな工程は3つありましたが、現場の負担が一番軽い1つから着手しました。全部同時に変えると日常業務が止まると判断したからです」。
前者は、結果と数字さえあれば誰でも組み立てられます。
後者には、選ばなかった2つの話が入っています。
この素材は本人の頭の中にしかないので、AIがどれだけ上手でも出てきません。
面接で会話が続くのは後者です。
「工数削減しました」には「どうやって」が返ってくるだけですが、「この1つから着手した」には「では残りの2つはどうしたんですか」と話が伸びます。
そこで詰まらないのは、自分で決めたことだからです。
AIに添削を頼めば、前者の文章は確実に読みやすくなります。
語順も整うし、余計な修飾も落ちます。
ただ、後者が書ける状態まで持っていくのは添削の仕事ではありません。
素材を出すところは自分でやる工程です。
雑務が消えた先で、何を語れる人になるか。
散髪の予約をAIに頼める未来が来ても、職務経歴書に残るのは判断の痕跡です。
どの選択肢を捨てたか、なぜそちらを選んだか、何に迷ったか。
作業ではないので、代行の対象になりません。
今日やれることを1つだけ挙げるなら、直近1年で判断に迷った場面を3つ、箇条書きでメモすることです。
うまく書かなくていいです。
「Aにするか迷ったけどBにした。理由は」で止まっていても構いません。
その3行ができてから、AIに整えてもらう。
順番を逆にしないだけで、自己分析の手応えは変わります。
AIが雑用を引き受けてくれるなら、空いた時間は自分の判断を言葉にするほうに使えます。
転職活動でAIを使うのは、手抜きとは逆方向の話です。


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