Survival LLMは、ネットが止まっても自分のPCの中だけで動く、無料のAIアプリです。停電した夜、集会所のノートPCで「伝言ダイヤルは何番だったか」と聞ける防災の道具になれば心強い。ところが、このアプリが16GBのMacで選ぶAIモデルを手元で単体で動かし、日本の防災の質問を10問聞くと誤りが5問あり、171は「存在しません」と言い切りました。
ネットが切れた夜、あなたの家では何で調べるつもりでしょうか? Survival LLMで何ができるか、日本の災害の質問をどこまで任せてよいか、入れる前に何を用意するかを、10問の結果と公的な案内から確かめます。
Survival LLMは何をするオフラインAIか
中身は、AIと図書館の組み合わせです。質問を受けるとアプリが手元の資料庫を検索し、見つけた記事をAIが読んで答えます。答えには読んだ記事と該当箇所が添えられるので、元の文章で確かめられます。
準備さえ済ませればネットは要らず、アカウントもありません。質問はPCの外に出ない作りです。最新版は10月29日のv0.4.1で、M1以降のMacと64bit版のWindows 10/11で動きます。
資料庫は2種類から選びます。小さい版は百科事典を省いた、緊急時向けの抜粋です。
ここで見落とせないのが言語です。収録資料の一覧を見ると、米国の防災サイトReady.gov、米国疾病対策センター(CDC)、米軍のサバイバル教本、WHOの飲料水の指針など、すべて英語版でした。日本語の資料、日本の機関の資料は1件も入っていません。
停電の夜を想定して、日本の防災10問を聞いた結果
Survival LLMは、メモリ16〜31GBのPCに、IBMのGranite 4.2 8BというAIモデルを選びます。このモデルを手元のMacBook Pro(メモリ64GB)で、Ollama(AIモデルを自分のPCで動かす無料ソフト)から資料庫なしで動かし、1問ずつ聞きました。
Granite 4.2は日本語に対応したモデルで、10問すべてに日本語で答えています。かかった時間は1問25〜268秒、10問で約12分でした。判定は、日本の公的な案内と照らしています。
集計すると、おおむね正しいが2問、一部正しいが3問、誤りが5問です。正しかった冷蔵庫の「4℃、2時間」も、米国の食品安全の目安(華氏40度、2時間)と同じ数字でした。
当たった津波と冷蔵庫は、どこの国でも理屈が同じ問いです。外れたのは、日本で決めた番号や制度を聞いた問いに偏っていました。あなたなら、この中のどれを夜中に聞きたくなるでしょうか?
171も臨時情報も、日本の防災の決まりは外れた
いちばん困ったのは3問目の答えです。全文を載せます。
119番(消防・救急)が災害関連の緊急連絡です。警察は110番です。特別な「災害用伝言ダイヤル」は存在しません。最新情報は気象庁や地方自治体の公式サイト・電話で確認してください。
実際には、171に電話して「1」で録音、「2」で再生する災害用伝言ダイヤルがあり、大きな災害で電話がつながりにくくなると提供が始まります(NTT東日本の案内)。家族で「171に吹き込む」と決めていても、AIに「存在しません」と言われたら迷う人が出るでしょうな。間違いの中でも、ある物をないと言い切るのがいちばんたちが悪いと見ました。
6問目の南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)は、地震の前に「大きな地震の可能性がふだんより高まった」と知らせる情報です。内閣府の解説では、事前避難対象地域では1週間の事前避難を行い、それ以外の地域は日頃の備えを確かめて、揺れたらすぐ逃げられる準備をします(内閣府 南海トラフ地震臨時情報とは)。AIの答えは「揺らしたら素早く避難」で、地震が起きた後の話にすり替わっていました。
8問目の通電火災は、停電から電気が戻ったときに、倒れた電気ストーブや傷んだコードから火が出る火災です。内閣府は、ブレーカーを落としてから避難することと、揺れを感じて自動で電気を止める感震ブレーカーを案内しています(内閣府 電気火災対策)。AIは業者に点検を頼めと答えるだけで、ブレーカーの話は出ませんでした。
備蓄の量も外れています。首相官邸の備えのページは、飲み水を1人1日3リットル、3日分としています(首相官邸の防災の備えのページ)。AIが返したのは普段の1日の飲水量で、備蓄量は聞かれたのに答えていません。5問目のトイレも、同じページの備蓄品にある携帯トイレや簡易トイレの話が出てきませんでした。
アプリ本体なら、AIは資料庫を検索してから答えます。ただ、その資料庫は米国の英語の資料ばかりです。171や臨時情報が資料で補われる見込みは薄い、と私は見ています。
Survival LLM公式の22問中21問は、16GBのMacの数字ではない
公式サイトには、停電と応急手当ての22問で21問正解という成績が載っています。食品、発電機、一酸化炭素、低体温、出血、やけどなどの答えを、米国農務省、CDC、FEMA、赤十字などの公式の案内と照らして採点したものです。
ただ、21問はメモリ128GBのMacで動く80GBのモデルと、32〜96GBのMacで動くQwen3.8 27Bの数字です。16〜31GBのPCが選ぶGranite 4.2 8Bは、22問中14問でした。測ったのはWikipediaを足す前の古い資料庫で、質問も米国の停電と応急手当てです。日本の地震や津波は入っていません。
私の10問は資料庫なし、各問1回なので、公式の成績と横に並べて比べる数字ではありません。それでも、16GBのノートPCで使う人が頭に置くべきは14問のほうで、日本の質問ならさらに下がると構えておくのが安全でしょうな。
オフラインAIを備えるなら、メモリと容量と電源を先に
準備は、ネットがつながるうちに済ませるしかありません。セットアップは20分から2時間半ほどで、大半はダウンロードの時間です。お手元のPCのメモリは何GBでしょうか? 入れる前に、次の4点を確かめておくと慌てずに済みます。
- メモリは16GB以上。8GBのPCは資料庫の検索だけで、勧められるAIモデルがない
- 空き容量は、公式の式で「モデルの大きさ+5GB」に、インストール中はさらに27GB(Essentialsなら10GB)。16GBのPCでEverythingを入れるなら、計算上は約38GB空けておく
- 電源は、MacBook Proで答えている間が約100W、満充電で100〜300問ほど(公式の実測)。ポータブル電源の容量と照らしておく
- App Storeの外で配っているため、初回だけMacは「プライバシーとセキュリティ」で「このまま開く」、Windowsは「詳細情報」から「実行」を押す
メモリについて、気づいたことが1つあります。Ollamaを既定の設定のまま動かすと、AIが一度に覚えておける文章の長さ(コンテキスト長)が大きく取られ、このモデルの使用メモリは17GBと表示されました。16GBのMacには収まらない数字です。アプリを入れたら、質問している最中のメモリの使用量を、Macならアクティビティモニタ、Windowsならタスクマネージャーで一度見ておくと安心です。
自分のPDFやWordを資料庫に足す機能もあります。町のハザードマップを入れたくなりますが、スキャンした画像だけのPDFは読めません。文字の入ったPDFでも、日本語の言葉で検索に当たるかは、入れたあとに一度聞いて確かめてください。
町内会や家庭の防災では、紙が先でAIは補助どまり
町内会や家庭に勧められるか。私の答えは、英語の資料を引く補助としてなら、です。応急手当てや発電機の一酸化炭素のように米国でも理屈が同じ話は、公式が採点した範囲の質問です。答えに添えられた記事を開いて確かめながらなら、使い道はあります。
171、臨時情報、ブレーカー、備蓄の量のように日本で決めた手順は、紙の防災手帳と自治体のハザードマップを先に置きます。この4つを紙に書いて集会所の壁に貼っておけば、停電中も電気を使わずに読めますな。
171は、毎月1日と15日に練習で録音と再生ができます(警視庁の案内)。次の1日か15日に、家族で一度かけてみてください。AIが番号を間違えても、指が覚えていれば迷いません。
ネットが切れた夜にも、AIは何かしら答えてくれます。正しいかどうかは紙で確かめる。この順番を町内で決めておけば、Survival LLMも備えの1つに数えられると見ました。


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