AIエージェントに重めのタスクを投げて、離席して戻ってきたら、どこで何をどう変えたのか追えなくなっていた。そういう経験があるなら、DeepSeek-Reasonixの設計思想はかなり刺さると思います。公開から4か月弱で33,000スターを超えていますが、売りは機能の多さではなく「6時間動かし続けても壊れない」の一点なんですよ。
席を外している数時間が主戦場 DeepSeek Reasonixの前提
普通のコーディングエージェントは対話駆動が前提ですよね。指示を出して、結果を見て、また指示を出す。人間が横についていることを織り込んで設計されています。
Reasonixはここを反転させています。公式サイトのコピーが「A coding agent you can leave running」。人間が離れている数時間のほうを主戦場にする、と決めて機能を組み立てているわけです。
面白いのは、公式が「長く走らせられること」自体を売りにしていない点です。何時間も走らせるのが役に立つのは、何をやったかを見られて要らない部分を取り消せる場合だけだ、と書いてある。設計の中心にあるのは走る力ではなく、事後に検証して巻き戻す力のほうなんですね。
Go製でライセンスはMIT。ターミナルのTUI、デスクトップアプリ、ブラウザ、VS Codeなどのエディタという4つの入口から同じエンジンを叩けます。
plan gate checkpoint 6時間放置しても壊れない三層構造
この3つ、機能の並列に見えて、効くタイミングが全部ずれています。
gateが別々に確認を求めてくるのが効きます。「ファイルを読むのは全部許可、シェルだけ毎回聞いて」という線を引けるので、放置中に何回止まるかを自分で決められる。
checkpointは1ターンごとにgitの外側へスナップショットを書きます。ターン開始時に開いて、そのターンで触ったファイルだけを編集前の状態で保存する。git履歴を汚さないので、コミット前の試行錯誤もそのまま戻せます。
巻き戻しは、入力欄が空の状態で Esc Esc、または /rewind でピッカーが開きます。ラベルには自分が打ったプロンプトがそのまま並ぶので、「この指示から先が要らない」が目で分かる。
一番よくできてると思ったのが、復元範囲を選べることです。コードと会話の両方、会話だけ、コードだけ。会話を残したままコードだけ戻せるので、文脈は活かして実装だけやり直す、ができるんですよ。
checkpointが戻せないもの bashの副作用は追跡されない
ただ、ここは正直に書いておきます。
checkpointが追跡しているのは write_file edit_file multi_edit の編集系3ツールだけです。bash は完全に対象外。つまり rm も mv もDBへの書き込みもデプロイも巻き戻りません。
ファイル編集は全部戻せるという安心感があるぶん、シェル経由の副作用だけが素通りする構造になっている。「放置できる」を「何をやらせても安全」と読むと事故ります。
裏を返すと、gate層が本当に効くべき場所がはっきりします。読み書きはcheckpointが後ろで受けてくれる。受けてくれないのは bash だけ。だから確認を省略するなら読み書き側で、bash の確認は最後まで残す。この線引きが放置運用の肝になります。
もう1点、ターンとターンの間にエディタで直接ファイルをいじっていると復元時に上書きされます。走らせている最中は同じファイルに手を出さない、が前提ですね。
Claude Codeと何が違うのか Go単一バイナリという選択
Goで書かれていること自体より、その先の配布形態のほうが効いてきます。
Reasonixは CGO_ENABLED=0 の単一バイナリとして配られます。1コマンドで6ターゲットにクロスコンパイルでき、出来上がるのは完全に自己完結した静的バイナリ。動かす側のマシンには何も入れなくていい。
Node.jsやPython製のエージェントだと、まずランタイムを揃える話から始まりますよね。常駐前提だとこの差が効きます。数時間動かし続けるプロセスほど、バージョン差やグローバルパッケージの汚染に足を引っ張られるので。
インストールは経路を選べます。
npm i -g reasonixbrew install esengine/reasonix/reasonix- GitHubのリリースからビルド済みアーカイブを取得
- ソースを取って
make build
なぜDeepSeekネイティブなのか prefix cacheとAPIキーの話
リポジトリの説明文にある prefix-cache stability という一語が、このプロジェクトの本音です。会話の先頭から共通する部分をサーバー側で使い回す仕組みを、設計の軸に据えたということですね。
なぜそこまで重視するのかは料金表を見ると一発で分かります。執筆時点のDeepSeek APIは、deepseek-v4-proの入力がキャッシュミスで100万トークンあたり約65円、キャッシュヒットだと約0.5円。120倍の差です。
6時間走らせるというのは、毎ターン同じ長いコンテキストを送り直すということですよね。システムプロンプト、環境のサマリ、これまでの履歴。この塊がキャッシュに乗るかどうかで請求額の桁が変わる。
しかもprefix cacheには、先頭から1トークンでもズレると以降が全部無効になる性質があります。起動時に現在時刻みたいな毎回変わる値を混ぜたら、それだけで崩れる。
だからReasonixは、起動時に注入する環境サマリを安定した内容に固定して、古くなったツール出力はサマリの圧縮より前に刈り取ります。プレフィックスを揺らさないための設計なんですよ。
「動かしっぱなしにできる」は、技術的に安全というだけでは成立しません。放置しても金額が破綻しない裏付けがあって初めて成り立つ。機能一覧ではなくキャッシュ安定性を看板に掲げている理由がここにあります。
ただし安くなるのは入力のキャッシュ部分だけです。出力トークンはproで100万あたり約130円かかりますし、公式も値上げの可能性を明示しています。
鍵は自分のDeepSeekキーを持ち込む形で、エンジンはローカルで動き、コードは設定したモデルにだけ行く、と説明されています。コードがどこにも出ないわけではありません。あいだにベンダーが1枚挟まらない、という話として読むのが正確です。なおOpenAI互換のエンドポイントなら、設定を1エントリ足すだけで使えます。
試すなら reasonix.tomlで最初に触る3行
インストールしたら reasonix setup でプロバイダとモデルの資格情報を設定します。あとは全部 reasonix.toml です。
モデルがコードに焼き付いていないので、プロバイダを差し替えるのに再ビルドが要りません。reasonix.example.toml が同梱されているので、そこから写すのが早いです。
最初に見るべきなのは3か所。
- providers どのキーでどのエンドポイントを叩くか
- agent executorとplannerを分けるかどうか
- 有効にするツール
bashを許すかどうか
特に3番。checkpointが bash を追跡しない以上、最初は絞っておくほうが安全です。慣れてから緩める順番でいい。
2番も面白くて、executorとplannerに別々のモデルを当て、それぞれ独立したキャッシュ安定セッションとして走らせられます。計画は賢いモデル、実行は安いモデル、という組み方が素直にできる。
最初の一手としては、1時間だけ走らせて /rewind を一度叩いてみるのが早いです。何が戻って何が戻らないかを手で確かめてしまえば、どこまで放置していいかの感覚がつかめます。そこから逆算して bash の許可範囲を決める。これが一番安全な入り方だと思います。

💬 コメント
ログイン か 会員登録 するとコメントできます