ChatGPTやGeminiに「大ヒット漫画のプロットを考えて」と頼んで、なんとなく物足りない答えが返ってきた経験はありませんか。
「AIってすごいのに、なんでこんなに普通なんだろう」というモヤモヤ、わかる気がします。
実はこのモヤモヤの正体を、深津貴之さん(THE GUILD代表)がnoteで見事に言語化していました。
生成AIでワンピを超える名作は作れるか、深津貴之さんが自分のnoteで書いていました
深津貴之さんが2026年8月24日に自身のnoteで公開したのは、「生成AIでワンピを超える大ヒット名作を生成できるか?」という論考です。
タイトルだけ見ると身も蓋もない話に思えるかもしれません。
でも中身を読むと、「AIと創作」の関係をまったく違う角度から捉え直すヒントが詰まっていました。
しかも、その答えは拍子抜けするくらいシンプルでした。
答えは「問いの立て方自体が間違っている」というものでした
深津さんの答えは明快でした。
「AIにプロンプトを1回入れてワンピースを超えるものを作らせる」という問いの立て方自体が、そもそも間違っているというものです。
深津さんはこの状況を「世紀末覇者とデビュー前新人を比べている」と表現していました。
片方は何十年も生き残ってきた歴代最強の存在で、もう片方はまだ何のキャリアも積んでいない新人です。
同じ土俵で比較すること自体に無理があるというわけです。
言われてみれば当たり前の話なのに、AIに何かを作らせるとき、私たちは無意識にこの無理な比較をしてしまっています。
心当たり、ありませんか。
傑作を作る力と、傑作を見つける力はまったく別物だという指摘です
深津さんの指摘の核心はここにあります。
傑作を作る能力と、傑作を見つける能力は、まったく別の能力だということです。
大量にアイデアを出す作業と、その中からどれが一番良いかを見極める作業では、必要なスキルがまったく違います。
料理に例えるなら、次々に食材を切り出す人と、味見をして一皿を選び抜くシェフくらい、求められる腕が違うということです。
AIは前者の生成が得意ですが、後者の評価や選抜になると話は一気に難しくなります。
生成AIの実力を測るとき、私たちはつい「1回の出力が傑作かどうか」で判断しがちです。
でも本当に問うべきなのは、生成の能力ではなく「選ぶ」能力の方でした。
ここ、盲点じゃないでしょうか。
ワンピースが生き残ったのは、編集者と読者アンケートを何十年も勝ち抜いたからでした
ワンピースがなぜ「世紀末覇者」なのか、深津貴之さんは制作プロセスをかなり具体的に分解していました。
想像してみてください。
ネームを作る、編集者が見る、直す、連載会議を通す、掲載する、読者アンケートを取る、生き残ったものだけ続ける、単行本化する、口コミが広がる、アニメ化する、そして広い市場で評価される。
ここまでの段階を、何十年もかけて勝ち抜いてきた結果が今のワンピースです。
深津さんはこれを「人類が何千万回も試行錯誤した末に残った歴史的異常値」と表現していました。
数と時間という2つの試練に耐え抜いた、厳選されたサバイバーだということです。
一方でAIが1回のプロンプトで出す作品は、この試行錯誤のプロセスをまだ一度も通っていません。
比較のスタートラインにすら立っていない、というのが実際のところです。
では、AIが同じだけの数を出せたら、話は変わるのでしょうか。
AIが100万本作っても、その中の一本を選び出す方法は誰も持っていません
「じゃあAIに100万本作らせて、その中から一番良いものを選べばいいのでは」と考えたくなりますよね。
ところが深津さんは、ここに大きな壁があると指摘しています。
AIが大量の候補を生成すること自体は、もう技術的に可能です。
問題はその先です。
100万本の中から本当に売れる一本を見抜く確実な方法を、人間もAIもまだ持っていません。
編集者の目利きも読者アンケートも、生き残ったものを後から確認する仕組みであって、事前にどれが傑作かを言い当てる仕組みではありません。
この違いは、思っている以上に大きいものです。
数を増やすだけでは、答えにたどり着けないというわけです。
深津貴之さんが必要だと言うのは、生成から再選抜まで回すループでした
では、生成AIと創作の間にあるこの溝を埋めるにはどうすればいいのか。
深津貴之さんが提示していたのは、生成、評価、選抜、改稿、市場投入、反応、再選抜という一連のループを回す仕組みでした。
1回作って終わりではなく、作ったものを評価し、良さそうなものだけ選び、直し、実際に世に出し、反応を見て、またそこから選び直す。
この繰り返しを回す基盤こそが、AIに足りていない部分だという主張です。
ワンピースが何十年もかけて通ってきたプロセスを、圧縮して高速に回せる仕組みを作れるかどうか。
深津さんが見ているのは、そこでした。
この仕組み、あなたの手元でも再現できたらと思いませんか。
AIに聞くべきなのは「何を作るか」より「どう選ぶか」なのかもしれません
この話、漫画や小説だけの話に聞こえるかもしれませんが、会社員の仕事にもそのまま当てはまります。
企画書のたたき台をAIに1本だけ書かせて、それをそのまま提出していませんか。
深津さんの指摘に沿うなら、これは「世紀末覇者を1発で出せ」と頼んでいるようなものです。
複数パターンを出させて比べる、良さそうな案を人が選んで磨く、出した後の反応を見てまた直す。
この生成と選抜のループを自分の手元で回せるかどうかが、AIをうまく使えるかどうかの分かれ目になりそうです。
次にAIに何かを作らせるときは、1本で終わらせず、まず複数並べてみてください。
選ぶところから、AIとの付き合い方は変わっていきます。
AIに聞くべきなのは「何を作るか」だけではなく、「どう選ぶか」なのかもしれません。

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