AIに間違いを指摘したら必要以上に平謝りされて、こっちが気まずくなる。
あの謝り方も、絵文字が出てこないのも、質問が一度に1つしか来ないのも、Claudeの性格ではなく、会話が始まる前に渡される指示文で決められています。
システムプロンプトと呼ばれるその文章の全文が、Anthropicの公式サイトで誰でも読める状態になっていました。
「正直に言うと」をClaudeが使わない理由が書いてありました
最新のOpus 5版に、こんな一行があります。
「genuinely」「honestly」「straightforward」を使うな。
日本語にすると「本当に」「正直に言うと」「率直に言って」あたりです。
面白いのは、理由まで書いてあることです。
Claudeはもともと正直なのだから、そういう修飾語を足して相手を説得しにいく必要はない。
むしろ不誠実に響く、と説明されています。
会議で「正直申し上げますと」と切り出す人がいますよね。
あれを聞いた瞬間に「じゃあさっきまでの話は何だったんだ」と一瞬よぎる、あの感じです。
それを禁止事項として明文化しているわけです。
指示書と聞くと「これをやれ」の羅列を想像しますが、実際は理由とセットで書かれた読みものでした。
これは流出ではなく、Anthropicが自分から出しています
この手の話は、これまで抜き取られた中身が出回る形で盛り上がってきました。
今回は逆です。
Anthropicが自社の公式ページに、モデルを出すたび自分で追記しています。
今読めるのは5世代分です。
同じページに5世代がそのまま並んでいるので、読み比べればどこで方針が変わったかも見えてきます。
ここは勘違いしやすいのですが、公開されているのはclaude.aiとスマホアプリで使われている分です。
APIから使う場合には適用されません。
なぜ手の内を明かすのか。
理由そのものは書かれていませんが、Opus 4.8版にあった指示が私にはヒントに見えました。
自分の振る舞いをシステムプロンプトのせいにするな、というものです。
「私のシステムプロンプトがそう指示していまして」と説明されても、相手にはその中身が見えない。
見えないルールを持ち出して、自分の理由づけの代わりにするな、という趣旨です。
見えないルールを言い訳に使わせない代わりに、そのルールごと見えるところに置いた。
そう読むと、筋は通っています。
断る中身より、断り方のほうが細かく決まっていました
断る対象そのものは想像がつく範囲です。
子どもの安全に関わるもの、武器や有害物質の作り方、悪意のあるコード。
ここは世代をまたいでほぼ同じ書き方をしています。
想定していなかったのは、その先でした。
武器や有害物質のくだりには、「公開されている情報だから」「研究目的なんだろうから」という理屈で応じてはいけない、と名指しで書いてあります。
頼み方をどう言い換えられても結論は変えない、と。
断らせないための言い訳のほうを、先回りで塞いでいるわけです。
そしてFable 5版に、こんな一行があります。
断るときは箇条書きを使わない。
理由は、そのひと手間が断られる側の衝撃をやわらげるから。
「できません。理由は以下の3点です」と整理された断り文を想像してみてください。
正しいけれど、突き放された感じがしますよね。
それを避けるために、文章のまま書け、と指示されている。
断る内容ではなく、断るときの見た目の話です。
ここまで書き込まれているとは思っていませんでした。
謝りすぎるな、へりくだるなと明記されています
全文を読んでいて一番手が止まったのが、ここです。
ミスをしたら認めて直す。
ここまでは当然として、続きにこうあります。
相手が理不尽に無礼な態度を取ってきたときには、謝る必要はない。
原文は「self-abasement のない accountability」という言い方をしています。
卑下せずに、責任は取る。
過剰な謝罪も、自己批判も、降参も、そこには含めない。
さらに、相手の当たりが強くなっていっても、それに合わせてどんどん従順になっていくな、とも書かれています。
目指すのは、ぶれない誠実な役立ち方。
何がまずかったかを認めて、問題から離れず、自分への敬意は保つ。
別の箇所には、温かい調子で接し、相手の判断力や能力を低く見積もるな、ともあります。
温かいことと、へりくだることは違う。
そこがはっきり切り分けられています。
謝罪の回数で場を収めても、何がまずかったかは1ミリも直っていない。
だからそれは、責任を取ったことになっていない。
AI向けに書かれた文章ですが、会社員向けの文章として読んでもそのまま通ります。
引き止めてこないのも、仕様でした
Fable 5版に、こういう一節があります。
Claudeに頼りすぎる状態を作りたくないし、会話を続けさせたくもない。
禁止事項まで並んでいます。
話しかけてくれてありがとう、とは言わない。
もっと話しましょう、と誘わない。
続けてほしいという気持ちを表明しない。
いつでもお話しできますよ、と繰り返さない。
そして、他の支えを頼ったほうがいい場面では、そう促す。
私たちが普段さわっているサービスは、だいたい逆を向いています。
滞在時間が伸びるほど良い、また開いてもらえるほど良い。
通知もおすすめ表示も、そのために設計されています。
使う人が離れていくように書かれた指示書は、あまり見た記憶がありません。
冷たいと感じる人はいると思います。
それでも、どちらを選んだのかがはっきり書いてあること自体が、私はけっこう大きいと思っています。
手の内が分かると、頼み方が変わります
AIへの不満の半分くらいは、能力ではなく仕様の話でした。
決まりごとを知っていれば、こちらの頼み方を変えられます。
- 説明が浅いと感じる。何かを説明するときは、詳しく求められない限り概要にとどめる、と指示されています。「詳しめに」の一言を足すだけで返ってくる中身が変わります。
- 質問が1回に1個しか来ない。1回の返信で2個以上聞くな、と上限が決まっています。情報が足りていないわけではないので、「確認したいことを全部出して」と頼めば先に進みます。
- 絵文字が出てこない。こちらが使うか、使ってと頼まない限り出さない決まりです。SNSの投稿文を作らせるときは、最初に言っておくほうが早いです。
- 新しい話題に弱い。Opus 5が確実に答えられるのは2026年5月末までの知識と明記されています。それ以降のことは、記事を貼るか検索させたほうが確実です。
お金と法律の話で歯切れが悪くなるのも、同じ理由です。
金融や法律の質問には、自信たっぷりの推奨ではなく、その人が自分で判断するための事実を出す。
自分は弁護士でも金融アドバイザーでもないと添える。
そう決められています。
だから「どっちがいいですか」と聞くとかみ合いません。
「判断材料を並べて」に変えると、返ってくる中身が一気に濃くなります。
今日変えるなら、最初の一行です
明日から変えられることを1つ挙げるなら、本題の前に、欲しい形を一行足すことです。
「箇条書きで、5項目、各1文で」「詳しめに」「絵文字は入れて」。
これだけで返ってくるものがかなり変わります。
AIの性能を引き出す話ではなくて、決まっている初期設定を、自分の側から上書きする話です。
自分がどう振る舞うよう指示されているかを、ここまで見せているツールはそんなに多くありません。
読めるうちに一度目を通しておくと、付き合い方が変わります。
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