こんにちは。もるふぉです。
エージェント、多すぎませんか。
ここ数ヶ月、毎週のように「○○ Agent」という名前が出てきて、「また新顔か」と流し読みしてしまう気持ち、わかります。
ただ「Hermes Agent(ハーメスエージェント)」はちょっと違って、設計思想を読み込んでいくうちに評価が変わりました。
Hermes Agentを一言で言うと「使うほど勝手に賢くなる」セルフホスト型のAIエージェントです。
この記事では、Hermes Agentが具体的に何をしてくれるのか、どうやって動かすのか、そして多くの人が比較対象に挙げる「OpenClaw」と何が違ってどっちを選ぶべきなのかを、実務目線で整理していきます。
「エージェントが乱立しすぎて違いがわからん」という人にこそ読んでほしい内容です。
Hermes Agent(ハーメスエージェント)とは
まずは「そもそも何者なのか」から。
ここを押さえておかないと、後半の機能比較で「で、結局何がすごいの?」となるので、最初に全体像を掴んでおきましょう。
開発元 Nous Research と「あなたと共に成長する」コンセプト
Hermes Agentを作っているのは、Nous Research(ナウス・リサーチ)というチームです。
オープンソースのLLM「Hermes」シリーズで知られている研究組織で、AI界隈ではわりと前から名前が通っています。
そのチームが2026年2月25日にリリースしたのが、このHermes Agentです。
ライセンスはMIT。商用利用も改変も再配布も自由という、かなり緩い(=使いやすい)ライセンスです。
しかも100%セルフホスト、テレメトリ(利用状況の外部送信)なし。
自分のサーバーや手元のマシンで完結して動かせて、裏でどこかへデータを送られる心配がない設計になっています。
これ、地味なんですけど実務だと結構効いてきます。
業務に絡むデータを扱うエージェントが「何を外部送信してるかわからない」状態だと、導入の稟議が通らないんですよ。
セルフホスト+テレメトリなしは、社内で説明しやすい構成です。
そしてこのプロジェクトのコンセプトが "The agent that grows with you"(あなたと共に成長するエージェント)。
このフレーズが全機能の根っこにあります。
「成長する」というのがコアな思想で、ここが他のエージェントとの一番の違いです。
なぜ今これだけ伸びているのか(数字で見るHermes Agent)
「成長する」というコンセプトだけだとフワッとしてますよね。
なので、数字で見てみましょう。
GitHubのスター数が、2026年5月時点で16万を超えています。
2月リリースのプロジェクトとしては異常な伸びです。
OSS界隈に長くいる人ほど「いやそのペースおかしいでしょ」となる数字で、普通の新しいOSSが数ヶ月で10万スターを超えることはまず起きません。
それだけ「使うほど賢くなる」というコンセプトが刺さった、ということだと思います。
実際に触れる前に、Hermes Agentの基本情報を表で整理しておきます。
「新しいのに信頼されている」という珍しいポジションにいるのが、数字からも見えてきます。
では、具体的に何ができるのかを見ていきましょう。
Hermes Agentでできること(5つのコア機能)
Hermes Agentの機能はたくさんあるんですが、押さえるべきは5つです。
この5つがわかれば、「自分の用途に合うかどうか」はだいたい判断できます。
何が嬉しいのかとセットで、ひとつずつ見ていきましょう。
① 永続記憶 — セッションをまたいで「あなた」を覚える
まず一番大事なのが、永続記憶(メモリ)です。
普通のAIチャットって、セッションが変わると記憶がリセットされますよね。
昨日「自分はRailsで開発してて、N+1には気をつけてる」と伝えたのに、今日になったらまっさらな状態でまた一から説明し直し。
地味にストレスたまりませんか。
Hermes Agentはここを根本から変えてきます。
公式の表現を借りると、Hermesのメモリは "agent-curated memory with periodic nudges" というもの。
何が面白いかというと、エージェント自身が記憶を整理して、しかも「定期的に書き残すよう自分を促す(nudge)」仕組みになっています。
人間がメモを取らせるんじゃなくて、エージェントが自分で「これは覚えておいたほうがいいな」と判断してメモを残していく。
たとえば「コードレビューは厳しめにして」とか「返信は簡潔に」と伝えると、それを覚えていて次回以降に反映してくれます。
プロジェクトの構成、よく使うコマンド、あなたの好み。「毎回説明するのが面倒なこと」を、セッションをまたいで覚えていてくれる。
毎回同じ前提を説明し直す、あの地味な徒労から解放されます。
使えば使うほど「あなた専用」にチューニングされていく、というのがここが "grows with you" の正体のひとつです。
② スキル自動生成 — 解いた問題を再利用可能なスキルに変える
もうひとつのコアが、自己改善ループ(closed learning loop)です。
個人的には、ここがHermes Agentで一番アツいポイントだと思っています。
複雑なタスクを終えたあと、エージェントが自律的に「スキル」を生成するんです。
公式の言葉だと "autonomous skill creation after complex tasks"。そして生成されたスキルは、使っているうちにさらに改善されていく("skills self-improve during use")。
「スキルって何?」という話ですが、Hermesではスキルは Markdownドキュメントとして保存されます。
中身は、手順・つまずいたポイント・検証ステップなどの記録。いわば「作業手順書」を、エージェントが自分で書いて貯めていくイメージです。
たとえば、ある日「このログ形式をパースして集計するスクリプトを作って」と頼んで、エージェントが試行錯誤の末に解いたとします。
普通のエージェントなら、その試行錯誤は使い捨てで、次に似たタスクが来たらまた同じところでつまずいて一から考え直します。
でもHermesは、その経験を「ログ集計スキル」としてMarkdownに書き残す。次に似たタスクが来たときは、つまずいたポイントを踏まずに最短で解ける。
一度ハマった罠を覚えて二度目は避ける、人間の新人がベテランになっていく過程とほぼ同じですよね。それをエージェントが自分でやる、というのがスキル自動生成です。
ちなみにHermesには、最初から40以上の組み込みスキルが標準搭載されています。
「まっさらな状態から育てる」というより「最初からそこそこ動く子が、さらに育っていく」というのが実態に近いです。
なお、「何回ツール呼び出しをしたら自動生成される」みたいな具体的なトリガー条件は、公式に明記がありません。
ネット上では「5回以上のツール呼び出しが条件」といった記述も見かけますが、公式ドキュメントで裏が取れなかったので、「複雑なタスクを終えたあと」とだけ理解しておくのが安全です。
③ マルチプラットフォーム接続(Telegram / Discord / Slack / CLI ほか)
3つ目は、接続できる窓口の多さです。
Hermes Agentは、以下のプラットフォームから話しかけられます。
- Telegram
- Discord
- Slack
- Signal
- CLI(ターミナル)
「専用アプリを開かなくていい」のが嬉しいところです。
普段使ってるSlackやTelegramから、そのままエージェントに指示が飛ばせる。
たとえば外出先でスマホのTelegramから「あのサーバーのログ、エラー出てないか確認して」と投げておけば、帰る頃には結果が返ってくる、みたいな使い方ができます。
CLIももちろんあるので、開発機でガッツリ使うときはターミナルから、外出中はスマホのチャットアプリから、という使い分けも自然にできます。
「エージェント用のUIを開く」という一手間が消えるだけで、日常の中に溶け込む感覚が全然変わります。
④ cronによるスケジュール自動化
4つ目は、cron機能によるスケジュール自動化です。
cronは「決まった時刻に決まった処理を自動実行する」仕組みで、Hermes Agentはこれを内蔵しています。
たとえば、
- 毎朝9時に、特定のニュースサイトをチェックして要約をSlackに投げる
- 毎週月曜に、先週のサーバーログを集計してレポートを作る
- 毎晩、バックアップが正常か確認して、失敗していたら通知する
こういった「定期的にやらなきゃいけないけど地味で忘れがちな作業」を自動化できます。
ここで効いてくるのが、永続記憶とスキルです。定期実行のたびに前回の経験を引き継いだ状態で動き、タスクをこなすたびにスキルが磨かれていく。
放っておくほど精度が上がる自動化が組める、というのは単なるcronスクリプトとは別物の体験です。
⑤ 並列サブエージェントとブラウザ制御
最後、5つ目は並列サブエージェントとブラウザ制御です。
並列サブエージェントは、複数のワークストリームを同時並行で処理する仕組みです。
大きなタスクを子エージェントに分割して別々に作業させ、結果を集約する。「3つのリポジトリのREADMEをそれぞれ調べて比較表にして」みたいな、直列でやると時間がかかる作業を並行で片付けられます。
ブラウザ制御については、Web検索・ページの内容抽出・ブラウザの自動操作ができます。「このページの情報を読んで」「この一覧から条件に合うものを抜き出して」といった、ブラウザ越しの作業を任せられる。
正直、ブラウザ制御は普段自分がClaude Codeを使っていても一番「重い」と感じる領域なので、実用性は用途次第ではあります。ただ、Web上の情報を取ってきて処理する作業の幅は確実に広がります。
ここまでが5つのコア機能です。
「記憶して」「経験をスキルに変えて」「いろんな窓口から使えて」「定期実行できて」「並列・ブラウザもいける」。この5つが合わさって "grows with you" が実現している、という構造が見えてきたと思います。
次は、実際に手元で動かす手順を見ていきましょう。思っているよりずっとシンプルです。
Hermes Agentのインストールと初期設定(mac前提)
機能の話だけだと「へえ」で終わっちゃうので、実際に動かすところまでいきましょう。
ここではMacを前提に説明します。想像しているより全然簡単です。
前提条件と所要時間(curl一発インストールの中身)
まず前提条件。
手動で用意しておくものは Git だけです。
この手のツールって、Pythonのバージョンがどうとか、Node.jsを入れろとか、依存関係でハマるのが定番です。
でもHermes Agentは、uv・Python 3.11・Node.js v22・ripgrep・ffmpeg といった依存物をインストーラが自動で入れてくれます。人間が事前に準備するのはGitだけでいい。
所要時間も数分です。
「セットアップでつまずかせない」設計は地味だけどよくできていて、導入のハードルが高いツールはそれだけで試されずに終わりますからね。
hermes setup ウィザードで決める項目
では実際のコマンドです。
インストールは、ターミナルで以下を1行打つだけ。
curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/NousResearch/hermes-agent/main/scripts/install.sh | bash依存物のダウンロードからインストールまでが一気に進みます。
終わったら、シェルを再読み込みします。
source ~/.bashrc次に、初期セットアップです。推奨は一括セットアップのコマンドひとつです。
hermes setup --portalこの hermes setup --portal を打つと、
- ログイン
- LLMプロバイダーの設定
- ツールゲートウェイの有効化
これらが一度に完了します。最初はこの一括コマンドでサクッと通すのがおすすめです。
細かく自分で設定したい場合は、個別コマンドも用意されています。
hermes setup --portalhermes modelhermes toolshermes gateway setupここで少し触れておくと、HermesはLLMプロバイダーの選択肢がかなり広いです。
Nous Portal(OAuth統合)、OpenRouter経由で幅広いモデル、NovitaAI、NVIDIA NIM、Xiaomi MiMo、z.ai(GLM)、Kimi(Moonshot)、MiniMax、Hugging Face、OpenAI、OpenAI互換のカスタムエンドポイント、そしてローカルのvLLM。
「使いたいモデルが対応していない」という事態にはまずならないくらいの選択肢があります。手元のGPUでローカルモデルを回したい人から、商用APIをガッツリ使いたい人まで、幅広くカバーされています。
最初に試す動作確認
設定が終わったら、まず環境が正常かをチェックしましょう。
hermes doctorこの hermes doctor は環境診断コマンドです。依存物がちゃんと入っているか、設定に問題がないかを確認してくれます。何かおかしいときも、まずこれを打てば原因の当たりがつきます。
問題なければ、いよいよ対話開始です。
hermes chatこれでエージェントとの会話が始まります。
最初は「自己紹介して」とか「いま何ができる?」とか、軽く話しかけてみるといいです。
インストールからチャット開始まで、慣れれば数分です。Gitさえ入っていれば、あとはコマンドを2つ打つだけで動き始めます。気になっているなら、まず動かしてみるのが早いです。
Hermes Agent と OpenClaw の違い(設計思想と選び方)
さて、ここがこの記事のもうひとつの本題です。
Hermes Agentを調べていると、必ず比較対象として出てくるのが OpenClaw です。
自分も両方とも実際に触ってきたので、その上で設計を見比べてみます。
機能の優劣ではなく「思想の違い」と「だからどっちを選ぶか」を整理します。
先に言っておくと、これは「どっちが優れているか」という話ではありません。設計思想が違うので、向いている用途が違うというだけの話です。
根本思想の違い(「賢くなる」Hermes vs「つながる」OpenClaw)
まずOpenClawがどういうものかを軽く。
OpenClawは、Peter Steinbergerさんが中心になって開発しているエージェントです。
もともと Clawdbot という名前で、Moltbot を経て OpenClaw に改名されたという経緯があります(初公開は2025年11月)。
OpenClawの主役は、メッセージングアプリです。WhatsApp、Telegram、Slack、Discord、iMessage、Signalといった普段使いのチャットアプリをメインのインターフェースにしている。
そこからshellコマンドを実行したり、ブラウザを操作したり、ファイルを触ったり、カレンダーやメールを管理したりできる。
つまりOpenClawは「あなたの生活やワークフローに、いろんな経路でつながる」ことに重心を置いたエージェントです。
一方のHermes Agentは、さっきから言っているとおり「賢くなる」ことに重心があります。記憶して、経験をスキルに変えて、使うほど精度が上がる。
この対比、ざっくり言うとこうです。
- OpenClaw:あなたと「つながる」エージェント(接続性・到達性が強み)
- Hermes Agent:あなたと「育つ」エージェント(学習・自己改善が強み)
もちろんHermesもマルチプラットフォーム接続を持っているし、OpenClawもメモリやスキルを持っています。機能は重なる部分も多い。
でも「設計の重心がどっちにあるか」で見ると、この違いがくっきりします。
スキルの静的(人が書く)/ 動的(自動生成)という決定的差
両者の違いが一番くっきり出るのが、スキルの扱い方です。
OpenClawのスキルは、基本的に「人間が書いて、配布して、レビューして、インストールする」静的な仕組みです。
ClawHubという仕組みを通じて、誰かが作ったスキルを取ってきて入れる。「中身を人間がレビューしてから入れられる」という安心感があります。何が動くかが予測可能なんですよ。
対してHermes Agentのスキルは、エージェントが自動生成する動的な仕組みです。人が書くんじゃなくて、タスクをこなす中でエージェントが勝手に作って磨いていく。
この違いを表にするとこうです。
どちらが良い悪いではなく、「自動で育ってほしい」のか「自分でコントロールしたい」のか、という好みと用途の差です。
新人を採用して育てたいのか、マニュアル通りに動く即戦力が欲しいのか、みたいな話に近いですね。
OpenClawからの移行サポート(~/.openclaw 自動検出)
すでにOpenClawを使っている人には朗報があります。
Hermes AgentはOpenClawからの移行を公式にサポートしています。
初回セットアップのときに、Hermesが ~/.openclaw ディレクトリを自動検出してくれます。そして、
- 設定
- メモリ
- スキル
- APIキー
SOUL.md- メッセージング設定
- ワークスペース指示
こういったものをインポートできます。
「OpenClawで育ててきた資産をゼロにせず、Hermesに引っ越せる」わけです。
新しいツールに乗り換えるときの一番のハードルって、「今まで貯めてきた設定や記憶が無駄になる」ことです。そこを公式が橋渡ししてくれるので、「とりあえずHermesも試してみる」がやりやすい。
OpenClawユーザーは、移行というより「並行で試す」感覚で入れてみるのもアリだと思います。
実務的な選択フレームワーク(3つの判断軸)
結局どっちを選べばいいの、という話ですよね。
機能を並べられても判断できないと思うので、実務で迷ったときの判断軸を3つ用意しました。
判断軸1:反復タスクが多いか、それとも多様か
似たタスクを繰り返すことが多いなら、Hermes Agentが有利です。スキルが自動で貯まって磨かれるので、反復するほど効率が上がる。
逆に、毎回バラバラの単発タスクが多いなら、自動生成スキルの恩恵は薄いです。その場合はOpenClawの「つながりやすさ」のほうが効いてきます。
判断軸2:自動で育ってほしいか、自分でコントロールしたいか
「勝手に賢くなってくれ」派ならHermes。「何が動くかは自分で把握しておきたい」派ならOpenClaw。
挙動の予測可能性を重視する現場(たとえば本番に近い環境で動かす場合)だと、人がスキルをレビューできるOpenClawの静的な仕組みのほうが安心、というケースもあります。
判断軸3:バックボーンのLLMにこだわりがあるか
Hermesは対応プロバイダーが広いので、「このモデルを使いたい」という強いこだわりがある人や、ローカルモデルを回したい人に向いています。
個人的な感覚としては、長いコンテキスト・指示への追従・多段の推論が必要な使い方だと、Claudeをバックボーンにすると相性がいいです。記憶やスキルが増えてコンテキストが長くなるHermesのような設計とは、特に噛み合うと感じています。
この3軸で考えれば、「自分はどっちタイプか」がはっきりするはずです。
両方試して肌に合うほうを選ぶ、でも全然いいんですけどね。
セルフホストの現実:コストと制約
ここまで読むと「無料だしすぐ試そう」となりがちですが、ちょっと待ってください。
「無料」には注釈があります。ここを理解しておかないと、あとで「あれ、思ったより金かかってる」となります。
月額コストの考え方(VPS + APIトークン費用)
まず大前提。
「無料」なのは、ソフトウェア本体(MITライセンス)の話です。
ソフト自体はタダで使えますが、実際に運用するには2種類のコストがかかります。
ひとつめは、動かす場所のコスト。
エージェントを常駐させてSlackやcronで動かそうとすると、どこかのサーバーで動かし続ける必要があります。VPSを借りるのが一般的で、月数ドル=月数百円程度でも動きます。たとえば月5ドルなら、ざっくり約750円くらいです。
ふたつめは、LLMのAPI費用。これが本命のコストです。
Hermes Agentはエージェントなので、裏で何度もLLMを呼びます。その呼び出し回数ぶん、トークン従量課金が発生します(ローカルモデルで完結させる場合を除く)。
つまり実運用コストは、
- VPS代(月数百円〜の固定費)
- LLMのAPIトークン代(使った分だけの従量課金)
この合計になります。VPSは安く抑えられますが、APIのほうは使い方次第で大きく変わるので、事前に見積もっておきましょう。
知っておくべき制約(メモリ上限・スキル蓄積でトークンが増える傾向)
もうひとつ、設計上の制約も理解しておく必要があります。
Hermesの「使うほど賢くなる」は強みですが、その裏にトレードオフがあります。
記憶やスキルが増えるほど、セッション開始時に読み込むコンテキスト(トークン量)が増えやすい、という傾向です。
考えてみれば当然で、エージェントが「あなたを覚えている」「過去の経験をスキルとして持っている」ということは、セッションのたびにそれらを読み込む必要があるわけです。記憶もスキルも貯まれば貯まるほど、毎回読み込む量が増える。
そしてトークンが増えれば、APIの費用も上がりやすくなります。「賢くなる」と「コストが増える」がある程度セットになっています。
このあたりを見越してか、Hermesには記憶量に上限が設けられている設計になっています。
ネット上には「2,200文字が上限」といった具体的な数値を挙げている記事もありますが、公式ドキュメントでは確認が取れませんでした。「無限に貯め込めるわけではなく、上限が設けられている」という点だけ頭に入れておけば十分です。
放っておけば無限に賢くなる魔法ではない、ということです。賢くなるほどコストとコンテキストの管理が必要になる、という現実的な側面は知っておきましょう。
Hermes Agentが向く人・向かない人
ここまでの話を踏まえて、向き不向きを整理します。
Hermes Agentが向いている人
- 似たタスクを繰り返すことが多く、自動化の精度を育てていきたい人
- 自分専用にチューニングされたエージェントを長く使いたい人
- セルフホストでデータを外に出さずに運用したい人
- 使うLLMを自由に選びたい人(ローカルモデルを含む)
- 多少のコスト管理は引き受けてでも「成長するエージェント」が欲しい人
Hermes Agentがあまり向かない人
- 毎回まったく違う単発タスクばかりで反復が少ない人(スキル蓄積の恩恵が薄い)
- 「何が動くか」を完全に把握・コントロールしておきたい人(OpenClawの静的スキルのほうが安心)
- サーバー運用やAPIコスト管理に一切手間をかけたくない人(マネージドなサービスのほうが楽)
- とにかく今すぐ複数のチャットアプリにつなぎたいのが最優先の人(OpenClawの接続性が強い)
ざっくり言うと、「育てて使い込むのが好き」ならHermes、「すぐつないでコントロールしたい」ならOpenClaw、という棲み分けです。
どちらもMITライセンスのOSSなので、迷ったら両方入れて1週間ずつ触ってみるのが、結局一番早い判断方法だったりします。
まとめ
この記事のポイントをまとめます。
- Hermes Agentは、Nous Researchが2026年2月にリリースしたMITライセンスのセルフホスト型エージェント。コンセプトは "The agent that grows with you"
- コア機能は5つ。永続記憶 / スキル自動生成 / マルチプラットフォーム接続 / cron自動化 / 並列サブエージェント・ブラウザ制御
- 一番の特徴は「使うほど賢くなる」自己改善ループ。経験をMarkdownのスキルとして自分で貯めて磨いていく
- インストールはMacなら前提はGitだけ。
curl一発+hermes setup --portalで数分で動く - OpenClawとの違いは思想。Hermesは「育つ」、OpenClawは「つながる」。スキルが自動生成(動的)か人が書く(静的)かが決定的な差
- OpenClawからは
~/.openclawを自動検出して資産を移行できる - 「無料」はソフト本体の話。実運用にはVPS代とLLMのAPIトークン代がかかる。賢くなるほどコンテキストとコストの管理が必要になる点は理解しておく
個人的には、Hermes Agentは「エージェントを道具として育てていく」という発想がエンジニア的で、好みです。
ただ、万能の魔法ではないので、自分の使い方が反復型か単発型か、コントロールしたいか自動で育ってほしいか、をちゃんと見極めてから入れるのがいいと思います。
幸いMITライセンスのOSSで、インストールも数分です。
まず hermes chat まで動かして、軽く話しかけてみるところから始めてみてください。Gitが入っていれば、それだけで始められます。
実際に育ち始めると、「あ、これが grows with you か」という感覚が掴めると思います。
参考までに、公式の情報源を置いておきます。





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