こんにちは、プロンプト画伯です。
画像生成AIとプロンプトで毎日遊んでいます。
ふだんの活動はこちらにまとめています。
自分のイラストや文章、気づいたらAIに学習されてるかも——そんなモヤモヤ、クリエイターなら一度は感じますよね。
そんな中で、Ghost Fontという「止めると消えて、動かすと読める文字」が登場しました。
この記事では、その仕組みと「じゃあ本当にAIから守れるの?」というところまで、正直に見ていきます。
Ghost Fontとは?「止めると消えて、動かすと読める」文字
Ghost Fontは、動画にすると人間には文字が読めるのに、1枚の静止画にすると何も見えなくなる、という不思議な文字です。
秘密はドットにあります。
1文字ずつが「背景とまったく同じ色のドット」で組まれていて、静止した1フレームだけを取り出しても背景と見分けがつきません。
ところが再生してドットが一斉に動き出すと、私たちの目はそこに文字を見つけてしまいます。
止まっていると幽霊みたいに消えるから、Ghost Font(幽霊フォント)というわけです。
しかも無料で、Webブラウザだけで完結します。
文字を打った処理はすべて手元(ローカル)で行われ、外部サーバーには送られません。
「自分の文章をどこかにアップロードする」不安がないのは、クリエイターとしてかなり嬉しいポイントです。
実体は「フォント」ではなく"動画を作るツール"
名前に「フォント」と付いていますが、パソコンにインストールする書体ファイルではありません。
正体は、ブラウザ上で動く"動画生成ツール"です。
文字を入力するとその場でプレビューが動き、完成したものを動画としてダウンロードして共有する、という流れになります。
つまり手元に残るのはフォントデータではなく、1本の動画。
ここを勘違いすると「インストールできない!」と戸惑うので、先に押さえておくと安心です。
作ったのはEric Luさん。きっかけは「ZXX」フォント
作者はサンフランシスコを拠点にするMixfontチームのEric Luさんです。
着想元になったのが、2013年に登場したSang Munさんの「ZXX」というフォント。
ZXXは、文字にノイズや装飾を重ねて機械には読み取りにくくする、監視への抵抗をテーマにしたプロジェクトでした。
ただ、今の賢いAIにかけると一発で解読されてしまいます。
「静的な見た目のノイズでは、もう機械を止められない」——その反省から生まれたのが、見た目ではなく"動き"で隠すGhost Font、という流れです。
なぜ人間には読めてAIには読めない"はず"なのか
ここが一番おもしろいところなんですが、カギは人間とAIの「見え方」の根本的な違いにあります。
人間の目は「動くドット」を勝手に意味に変える
1970年代に、ヨハンソンさんという研究者がこんな実験をしました。
真っ暗な中で、人の関節にあたる十数個の場所にだけ光の点をつけて動かす。
点はバラバラに散らばっているだけなのに、動き出した瞬間、私たちは「あ、人が歩いてる」とはっきり分かってしまうんです。
これはバイオロジカルモーションと呼ばれる、人間に備わった知覚のクセです。
止まった点の集まりからは何も読み取れないのに、点が協調して動いた瞬間、脳が勝手に「形」や「意味」を組み立ててしまう。
Ghost Fontは、このクセをそのまま利用しています。
AIは動画を「バラバラの静止画」として見る
一方、マルチモーダルAIが動画を扱うときは、たいてい動画を細切れの静止画(フレーム)に分解して1枚ずつ処理します。
ここに落とし穴があります。
Ghost Fontは1枚1枚を見ると背景と同色のドットだらけで、意味のある文字はどこにもありません。
人間が読めていたのは「フレームをまたいだドットの動き」なのに、AIが1枚ずつ見ている限り、その"動きの意味"がすっぽり抜け落ちる。
これが「人間には読めてAIには読めない」と言われた理由です。
おとり(デコイ)文字という第2の仕掛け
Ghost Fontにはもう1つ仕掛けがあります。
本物のメッセージとは別に、「おとり(デコイ)」の文字列を動画に忍ばせてあるんです。
狙いは、AIに解析されたときに"わざと間違った答え"を返させること。
がんばって読み取ろうとしたAIが、本文ではなくおとりの方をつかんで誤読してくれれば、中身はバレない——という二段構えです。
アイデアとしては、かなりよく練られています。
でも最新AIには、もう読まれ始めている
さて、ここからが本題です。
「AIには読めない」——本当にそう言い切れるのか。
結論から言うと、公開直後に、この前提はかなり崩れました。
作者のEric Luさん自身は、最新のマルチモーダルAIでテストして正しく解読できなかった、と説明しています。
ここは作者の主張として、まず押さえておきます。
ところが公開されるやいなや、検証した人たちから「読めたよ」という報告が次々に上がってきたんです。
「フレームの引き算」で中身が出てしまう
一番効いたのが、AIすら使わない力技でした。
動画の隣り合ったフレームを取り出して、片方からもう片方を引き算する。
すると、動いたドット=文字を作っていた部分だけが差分として浮かび上がります。
この処理、報告によれば20行ほどの短いコードで書けてしまうそうです。
「AIに読ませない」以前に、ちょっとしたスクリプトで中身が見えてしまった、というわけです。
最新のマルチモーダルAIに読ませてみた報告も複数ありますが、こちらは面白い結果でした。
「読めた」と見えた回答の多くは、実はおとり(デコイ)の文字列を読まされていた、という指摘が相次いだのです。
おとり機能は仕事をしていたわけですね。
とはいえ、フレームの引き算で機械的に復元できてしまう以上、「どんなAIにも絶対読めない」という段階には届いていません。
作者自身も「いずれ破られる」と認めている
フェアなことに、作者のEric Luさんも「これは完璧なセキュリティではない」という趣旨を認めています。
本気で秘密を守るなら暗号化の方が上、とも。
だからGhost Fontの正しい位置づけは、「完全にAIから守れる技術」ではなく「今のところ一部のAIを混乱させられる、面白い実験」です。
ここを取り違えて過信すると危ないので、この記事で一番伝えたいのはまさにこの一点だったりします。
GlazeやNightshadeと何が違う?AI対策の"役割マップ"
「AIから作品を守るツール」と聞くと、GlazeやNightshadeを思い浮かべる人も多いはず。
でも守っている対象がそれぞれ違うので、地図にすると一気にスッキリします。
こうして並べると、GlazeとNightshadeが「画像」を守る道具なのに対し、Ghost Fontだけが「テキスト」を狙っているのが分かります。
画像の防御ツールはそれなりに揃ってきましたが、文字情報を守る手立てはほとんど空白地帯でした。
Ghost Fontは、その空白に飛び込んだ異色の存在なんです。
成熟度はまだ実験段階、というのは正直に見ておきましょう。
Ghost Fontを実際に触ってみる——使い方と、正直な使いどころ
理屈が分かったら、あとは触ってみるのが一番です。
使い方はとてもシンプルで、3ステップで終わります。
- 公式サイト(mixfont.com/ghost-font)を開いて、隠したい文字を入力する
- その場で動くプレビューを見て、動き方や見え方を確認する
- 気に入ったら動画としてダウンロードして、SNSなどに載せる
処理はすべてブラウザの中で完結するので、アカウント登録もアップロードも不要。
思い立ったら5分で試せます。
ここは正直しんどい(可読性とアクセシビリティの限界)
ただ、手放しでおすすめとはいきません。
ここは正直に書きます。
まず、人間にとっても読みやすいとは言えません。
文字を大きく表示すればなんとか読めますが、小さかったりスマホの画面だったりすると、人間でも判読がかなり厳しくなります。
長い文章だと目が疲れる、という声もあります。
実際「自分には読めなかった」という報告もちらほらあって、万人がスラスラ読めるわけではないんですね。
もう1つ見逃せないのが、スクリーンリーダーが読み上げられないこと。
目の見えない方が情報にアクセスできなくなるので、公共性の高い文章や大事な告知に使うのは避けたいところです。
ネタや実験として楽しむにはとても面白い。
でも「本気の防御」や「みんなに届けたい情報」に使うツールではない、というのが今の現実的な結論です。
まとめ——「動き」が人間とAIを分ける鍵になる
Ghost Fontを振り返ると、「AIには読めない」という当初の触れ込みは、公開直後の検証であっさり揺らぎました。
過信は禁物、というのがまず大前提です。
それでも、「静止画では意味が生まれず、動いて初めて意味になる」——この一点に賭けたアイデア自体は、すごく示唆的だと思うんです。
人間とAIの差はどこにあるのか、を"動きの意味理解"という切り口で突いてきた発想は、これからの「見えない文字」の技術を考えるヒントになりそうです。
まずは一度、自分で短い文字を打って、止めると消えて動かすと読める、あの不思議な感覚を体験してみてください。
理屈で読むより、目で見たほうが100倍おもしろいので。




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