なぜOpenAIはSoraを手放したのか。ブロックマンが語る絞り込みの基準

カイ@プロダクトマネージャー
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GPT-6 Astraのベンチマークばかりが話題ですが、その裏でOpenAIが人気プロダクトを1つ畳んでいたことは、あまり語られていません。

動画生成のSoraです。

この絞り込みの経営判断を、共同創業者で社長のグレッグ・ブロックマンさんが言葉にしていて、自分の担当プロダクトで何を削るか決めるときにそのまま効く内容でした。

話題のAstraの裏で、Soraは静かに終了した

2026年9月3日に発表されたGPT-6 Astraは、PC操作の指標であるOSWorld 2.0で72.6%を記録しました。

フォーム入力やCRMの更新を人の代わりに進める、いわゆるエージェント的な使い方に大きく寄せたモデルです。

気になるのは、同じOpenAIが今年に入ってSoraを終了させていることです。

動画生成であれだけ話題をさらったプロダクトが、2026年3月に終了を発表され、2026年4月にWeb版とアプリ版のサービスを終えました。

「不人気だったから切った」なら話は簡単なんですが、事実はその逆でした。

最後に残ったSoraのAPIも、今月で止まる

Web版とアプリ版が消えたあとも、API経由の提供だけは残っていました。

それも2026年9月中に終了する予定です。

Astraという最新モデルを出した月に、かつての看板プロダクトの最後の窓口が閉じる。

この並びは偶然じゃないと思っていて、片方を手放したから片方に資源を寄せられた、という話なんですよ。

ブロックマンが語った、絞り込みという経営判断

Soraの位置づけについて、ブロックマンさんはBig Technology Podcastのインタビューではっきり説明しています。

Soraのモデルは、ちなみに素晴らしいモデルなんですが、コアの推論GPTシリーズとは別のテックツリーの枝なんです

注目したいのは「incredible models(素晴らしいモデル)」とわざわざ挟んでいるところです。

品質を否定していないんですね。

良いものだと認めた上で、置き場所が違うと言っている。

そして続けて、両方の枝を追いかけるのは自分たちには非常に難しい、とも語っています。

別のテックツリーにある、という見立て

同じインタビューで、GPTの音声や画像やテキストについてはこう言っています。

全部が1つのモデルで、それを少しずつ違う形に調整しているだけだ、別のテックツリーの枝ではない、と。

つまり判断の軸は、その機能が優れているかどうかではありません。

同じ幹から伸びているかどうか、です。

音声も画像もテキストも、同じ幹の枝だから同時に伸ばせる。

動画は別の木なので、育てるには別の土と別の水がいります。

プロダクトを削るだけでなく、束ねてもいる

この考え方は、プロダクト組織の作り方にもそのまま出ています。

2026年5月16日、ブロックマンさんがOpenAIのプロダクト戦略の指揮を執ることがTechCrunchなどで報じられました

そのときのコメントが、エージェント的な未来に向けて最大限のフォーカスで実行するためにプロダクトの取り組みを集約している、というものでした。

具体的にはChatGPTとCodexとAPIを1つのプラットフォームにまとめ、コアプロダクトチームも1つにすると報じられています。

背景には、OpenAIのCEOであるサム・アルトマンさんが社内に「code red」を宣言し、ChatGPTのコア体験に立ち返る必要があると号令をかけた経緯があります。

絞り込みというと機能を消すイメージが先に立ちますが、実際にやっているのは、散らばっていたものを1本に束ね直す作業でもあるわけです。

なぜプロダクトは「全部やる」で壊れるのか

同じインタビューでブロックマンさんが言っていた一言が、個人的には一番刺さりました。

需要がありすぎる、みんながやりたいことがありすぎる、と。

切った理由は需要がなかったからではないんです。

需要はあった。

ただ、計算資源が有限だった。

それだけです。

これ、規模を落とすと自分たちのプロダクトでも全く同じ構図ですよね。

機能削減の議論が毎回進まないのは、「使ってる人がいます」という一言が最強の反論として機能してしまうからです。

でも、使っている人がいることは残す理由になりません。

残す理由になるのは、その機能がコアと同じ幹から伸びているかどうかだけです。

要望リストを需要の大きさで並べ替えると、どう並べても「全部やる」に着地します。

幹からの距離で並べ替えて初めて、切れる列が見えてくるんですよ。

あなたのプロダクトの「Sora」はどれか

次の3つを、担当している機能ごとに当ててみてください。

  1. その機能は、コア体験と同じ仕組みの上に乗っているか。別の基盤、別のチーム、別の運用が必要なら、それは別の木です
  2. その機能を伸ばすと、コアも一緒に伸びるか。伸びないなら幹ではなく、独立した枝です
  3. 明日その機能を止めたら、コアの数字は下がるか。下がらないなら、同じ屋根の下にいる別プロダクトです

3つとも「いいえ」が並ぶ機能が出てきたら、それがあなたのプロダクトのSoraです。

人気だけど本流じゃない機能を、どう見分けるか

やっかいなのは、評判はいいのにコアに効いていない機能です。

Soraがまさにそれでした。

評判の良さは、残す根拠としては弱いんですね。

見るべきは、その機能を使ったユーザーがコア機能の利用も増やしているかどうかです。

増えていないなら、それは相乗効果のない併設店です。

併設店が繁盛していること自体は嬉しいんですが、本店の家賃を払っているのは本店の売上だ、という話になります。

絞り込みは、小さく始めていい

いきなり看板機能を落とす必要はありません。

最初の一歩は、機能リストの並べ替えだけで十分です。

需要順ではなく幹からの距離順に並べ替えて、下位3つに「止めたらコアの数字はどう動くか」を一行ずつ書き足す。

これだけで、次のロードマップ会議の議題が変わります。

それでも決めきれないときは、AIに壁打ちしてみてください。

機能ごとに「これはコア体験と同じ基盤の上に乗っているか」を整理させるだけでも、頭の中のもやが晴れます。

ただし判断そのものは自分でやる。

ここは譲らないほうがいいです。

ブロックマンさんが切ったのは、良くないものではありません。

良いけれど別の木にあるものです。

この基準を持っておくと、良いものを手放すときの後ろめたさとも、ちゃんと折り合いがつけられます。