空室が出ると家賃と募集条件は詰めるのに、掲載ページの中身は管理会社任せになっていませんか。
LIFULL HOME'Sが2026年6月に始めた物件動画のAI自動生成は、そのページの見え方を変えてきます。
ただしこの機能、大家が直接申し込むことはできません。
撮影も編集もせずに物件動画が出てくる仕組みが動き出した
LIFULLとリコーが2026年5月11日に、賃貸物件の動画をAIで自動生成する取り組みを発表しました。
LIFULL HOME'S 賃貸で2026年6月から提供が始まっていて、360度のパノラマ画像さえあれば、そこからAIが動画を作ります。
動画のための撮影も編集もアップロードも要らない、というのがこの機能の中身です。
背景にあるのは、単純な人手の問題です。
住まいを探す側は物件数だけでなく写真や動画の質と量でサイトを選ぶ一方、不動産事業者は人手不足で高品質な動画まで手が回らない。
このギャップを、事業者の作業を増やさない形で埋めに来たのが今回の取り組みです。
大家の立場に翻訳すると、こうなります。
これまで動画付きで募集できたのは、動画を作る体力がある会社に任せた物件だけでした。
その条件が「パノラマ画像を持っているか」に置き換わろうとしています。
RICOH360 ビジネスパッケージ 集客AIが自動生成するのはどこまでか
使われているのはリコーの「RICOH360 ビジネスパッケージ 集客AI」です。
撮影機材とリコー独自のAIによる集客コンテンツ自動生成機能、それに運用サポートを一体で提供するパッケージになっています。
撮影機材はRICOH THETA Xで、最大約11Kの高解像度に対応し、アプリもスマホも使わずに撮影写真を仕分ける機能を持っています。
AIがやるのは、360度空間データから物件の特徴や注目ポイントを解析して、動画に仕立てるところまで。
生成される動画の尺やBGM、テロップの有無まではリコーとLIFULLの発表で公表されていません。
「AIが動画を作る」という一言に自分の期待を上乗せしすぎないのが、今の段階の正しい距離感だと思っています。
今後は動画だけでなく、写真・パノラマ・ステージングまで自動生成の対象を広げる予定も示されています。
空室に家具を合成して見せるステージングまでパッケージに入ってくると、募集ページの作り方はもう一段変わります。
利用料金は公表されておらず、LIFULL HOME'Sの担当者に問い合わせる形です。
この機能を申し込めるのは大家ではない
対象はLIFULL HOME'Sの会員、つまり物件を掲載している不動産事業者です。
しかも発表では、すでにパノラマ画像を保有している会員が対象と明記されています。
区分を持っている個人大家も、法人で数戸持っている立場も、この機能に申し込む窓口そのものがありません。
自分の物件のページに動画が付くかどうかは、管理会社や仲介会社がこの機能を使うかどうかで決まります。
では大家には関係ないのかというと、逆です。
自分の意思決定の外側で、募集ページの見え方に差が付き始めるからです。
同じ駅・同じ広さ・同じ家賃で並んだとき、片方には部屋を歩いて回る動画があり、もう片方には写真8枚と間取り図しかない。
問い合わせがどちらに入るかは、考えるまでもありません。
厄介なのは、この差が数字に出るまで大家には見えないことです。
「今回はなぜか内見が入らない」で片付けているうちに、空室期間だけが伸びていきます。
客付けが伸びる部屋と何も変わらない部屋を分けるもの
分かれ目は3点あります。
- その部屋の360度パノラマ画像が存在するか
これが機能の前提条件です。
パノラマがなければ、AIに解析させる素材がそもそもありません。
- 管理会社や仲介会社がLIFULL HOME'Sに出稿しているか
今回の機能はLIFULL HOME'S会員向けなので、他のポータル中心で募集している物件には効きません。
- 撮影のタイミングを逃していないか
ここが実務でいちばん効きます。
パノラマ画像は、空室のときにしか撮れません。
入居者が住んでいる部屋に「360度カメラで撮らせてください」とは言えないからです。
撮影機会は、退去から次の入居までの数週間だけ。
入居が4年続けば、次のチャンスは4年後になります。
前回の募集で写真だけ撮って終わっていたなら、今回も写真だけで戦うことになる。
今まさに空室、あるいはこれから退去通知が来る部屋を持っているなら、そこが分かれ目です。
管理会社と仲介にこの機能を使ってもらうために大家側でできること
やることは4点です。
- 自分の募集ページを実際に開いて確認する
写真の枚数、パノラマの有無、掲載しているポータル。
私は空室が出たら、募集開始の1週間後に自分でページを開くようにしています。
- 退去通知が来た時点でパノラマ撮影を依頼する
原状回復が終わって家具が何もない状態が、撮影のベストタイミングです。
募集開始の相談をするときに「原状回復後にパノラマも撮っておいてください」と一言添えるだけで済みます。
- 撮影の可否と費用の扱いを確認する
撮影機材はパッケージ側に含まれますが、実際に誰が撮りにいくかは会社によります。
別途費用が出るなら、空室1ヶ月分の家賃と並べて考えてみてください。
家賃10万円の区分なら、1ヶ月空くだけで10万円が飛びます。
撮影費がその何分の1かで収まって空室が2週間縮むなら、判断は難しくありません。
- LIFULL HOME'Sへの掲載状況を確認する
管理会社が主にどのポータルを使っているかは、聞けば教えてくれます。
どれも管理会社を疑う話ではなく、「うちの部屋はどうなってますか」と聞くだけの話です。
管理会社は数百戸を回していて、1戸ずつの掲載面まで最適化する余裕はありません。
そこを気にして声を上げる大家は、実際そう多くないのが現実です。
直接触れない機能ほど大家は早めに知っておいた方がいい
今回の機能は、大家が申し込むことも操作することもできません。
それでも自分の部屋の募集ページの見え方は変わり、内見の入り方も変わります。
やることは、次の空室のときにパノラマ撮影を1本ねじ込むこと。
それだけで、AIが動画を作れる物件の側に回れます。
パノラマが撮れるのは部屋が空いている数週間だけで、逃せば次は数年後です。
今の空室、あるいは次に届く退去通知が、実はけっこう大事なタイミングだったりします。


💬 コメント
ログイン か 会員登録 するとコメントできます