賃貸借契約書に重要事項説明書、退去精算の明細、給湯器を替えたときの請求書と、区分を数戸持っているだけでも書類は物件ごとに勝手に増えていきます。それをAI-OCRで読み取って電子帳簿保存法を見据えた形で保管するというAI Kamigakariが、2026年8月に先行予約の受付を始めました。ただし現時点で公開されている情報は少なく、区分大家が申し込めるのかどうかすら書かれていません。
AI Kamigakariが不動産書類に対してやろうとしていること
コンセプトは「不動産書類を入れるだけで使えるデータに」。契約書をスキャンして放り込むと、AI-OCRが中身を読み取ってクラウドに保管してくれる、という構想です。
対象として挙がっているのは、賃貸借契約書、重要事項説明書、公共料金や修繕の請求書、解約関連書類、本人確認書類。特許出願中と明記されています。
手がけているのは日本情報クリエイト株式会社です。東証グロース上場で証券コードは4054、創業32年で賃貸管理システム「賃貸革命」を全国5,676社(2026年3月末時点)に導入している会社です。不動産会社の書類がどう回っているかを30年以上見てきた側が作る、というのがこのサービスの出発点になります。
紙をクラウドに預けることへの不安に対しては、ランサムウェア対策がうたわれています。
ここから書くことは、2026年8月時点で公開されている範囲だけが根拠です。先行予約の段階なので、正式リリースまでに仕様も料金も変わりえます。
電子帳簿保存法にどこまで対応しているのか
先行予約ページで使われている言葉は「電子帳簿保存法対応」、そして「電子帳簿保存法を見据えた保管構成」「検索性を考慮した保存」です。「見据えた」という語が入っているところが、この段階のサービスの正直な立ち位置だと思っています。
電子取引データの保存には、大きく真実性の確保と可視性の確保という2つの要件があります。可視性のうち検索機能については、基準期間の売上高が5,000万円以下なら、税務職員のダウンロードの求めに応じられることを条件に不要になる緩和があります。区分を数戸持っている規模なら、多くはこちら側に入るはずです。
つまり検索性は、区分大家にとって「これがないと電帳法違反になる」機能ではありません。「5年後の自分が探せるようになる」という実務メリットとして受け取るほうが健全です。
一方、真実性の確保は規模に関係なく必要です。タイムスタンプを付けるか、訂正削除の履歴が残るシステムを使うか、事務処理規程を備え付けて運用するか。このうちどれをAI Kamigakariが担保するのかは、先行予約ページからは読み取れません。料金より先に知りたいのは、正直こちらです。
なお自分がどの緩和に当たるかは売上規模と保存方法で変わるので、判断は税理士に確認してください。
賃貸革命を使っていない区分大家でも申し込めるのか
先行予約ページには「賃貸革命10、賃貸革命11対応」「ワンクリックで賃貸革命に取り込み可能」とあり、同時に賃貸革命が未導入でも利用できると書かれています。ここだけ読むと、大家個人でも申し込めそうに見えます。
ただ賃貸革命は不動産会社向けの賃貸管理システムです。物件管理、契約管理、家賃管理、修繕管理を一元化するもので、区分を数戸持っている個人や法人が使うことは想定されていません。AI Kamigakari側の説明も、前提にしているのは不動産会社の書類フローです。
「未導入でも使える」の未導入は、賃貸革命を入れていない不動産会社を指している可能性が高い。個人か法人かを問わず大家が申し込めるかどうかは、先行予約ページに書かれていません。
気になるなら、先行予約フォームから直接聞いてしまうのが早いです。どういう相手を想定しているのかは、返信の温度でだいたい分かります。
マイクロ法人の経費書類やレシートまで任せられるのか
対象として挙がっているのは不動産関連書類だけです。備品のレシート、通信費の明細、外注先への支払いといった一般の経費書類には触れられていません。不動産賃貸業だけの法人ならかなりの割合をカバーできますが、本業が別にあるマイクロ法人だと、書類の保管先はもう1系統必要になります。
分けて考えるとこうなります。仕訳を切って決算に持っていくのは会計ソフト側のレイヤー。契約書や請求書の原本を検索できる形で残すのが、AI Kamigakariが狙っているレイヤーです。同じ「書類の電子化」でも、出口が違います。
そして区分大家が詰まりやすいのは、実は後者のほうです。仕訳は会計ソフトが面倒を見てくれますが、5年前の原契約がどのフォルダにあるかは誰も教えてくれません。売却の話が出てから探し始めて、購入時の重要事項説明書が見つからない。あれ、けっこう焦ります。
料金と正式リリース時期は公表されていない
先行予約は「出たら知らせてほしい」に手を挙げる段階であって、価格を見て判断する段階ではありません。料金も正式リリース時期も、現時点では公表されていないからです。
分かっていることと分かっていないことを並べると、こうなります。
価格が出たときに私が見るのは3点です。
- 賃貸革命を入れていない場合の価格が、単体で成立しているか
- 課金が月額固定か、書類の枚数に応じた従量か
- 真実性の確保をどう満たすのか具体的に書かれているか
3の書きぶりが「電帳法対応」で止まるのか、タイムスタンプや訂正削除履歴まで踏み込むのか。区分数戸の規模で払う価値があるかどうかは、たぶんここで決まります。
発表を待つ間に区分大家がやっておける書類整理
正式リリースを待つのは受け身ですが、待っている間に手を動かせることはあります。しかもこれは、AI Kamigakariを使うかどうかに関係なく効きます。
- 電子で受け取った請求書や契約書を、紙に出して保管し直さない
- ファイル名を
取引年月日_取引先_金額の順にそろえる - 保存場所を1か所に決めて、そこ以外には置かない
- 原契約と更新契約、退去精算書を同じ物件フォルダにまとめる
ファイル名を日付と取引先と金額でそろえておくと、検索要件で求められる3項目がそのまま名前に乗ります。専用システムを入れなくても、フォルダ検索で必要な書類が出てくる状態にはなる。そのうえでAI Kamigakariのような仕組みに乗せ替えるなら、移行作業はただのコピーで済みます。
逆に、散らかったまま新しいサービスを入れても、散らかった書類が別の場所に移るだけです。
先行予約段階のサービスに期待を上乗せしすぎる必要はありません。ただ、不動産の書類まわりを正面から取りに来る会社が出てきたこと自体は、区分大家にとって悪い話ではないと思っています。価格と電帳法の中身が出てくるまでは、手元のフォルダを整えながら待つのが一番効率のいい過ごし方です。



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