ほくろやシミの写真をChatGPTのようなチャットAIに見せて、病名を言い当ててもらう使い方は向きません。皮膚科医が生検で確定した200病変で試した検証では、6つの病名から選ばせた第一候補が合っていたのは42%でした。
気になるほくろがあって、皮膚科に行く前にAIで見当をつけたいと思ったことはありませんか? この42%が何を測った数字なのかと、代わりに写真とAIで整えられる経過の記録をまとめます。
皮膚科医が200病変で試した、ほくろ写真とAIの一致率
検証を公開したのは、ロンドンのガイズ病院で皮膚科医を務めるMagnus Lynchさんです。2026年10月25日に自身のサイトで結果を出しました。使ったのはMILK10kという公開の皮膚画像データから無作為に選んだ200病変で、どれも生検(皮膚の一部を取って顕微鏡で調べる検査)で病名が確定しています。
内訳は、治療や経過観察が要る病変が100件(メラノーマ30、基底細胞癌25、扁平上皮癌25、日光角化症20)、良性の病変が100件(ほくろ50、脂漏性角化症50)です。メラノーマは皮膚のがんの一種で、脂漏性角化症は年齢とともに増えやすい良性のできものです。
比べたのは、チャットAIのGPT-6 AstraとClaude Fable 5.1、そして画像を見分けるためのAIであるInception v3です。Inception v3は2015年にGoogleが発表した設計で、Lynchさんは皮膚の画像68,011枚で学習し直して使いました。どれにも6つの病名から一番ありそうなものを選ばせています。
6択の第一候補が、チャットAIでは半分も合っていません。病名の見当をつけてもらう道具として、この数字は頼りにくいです。
42%は、スマホで撮ったほくろ写真の成績ではありません
AIに渡したのは、病変を近くから撮った臨床写真と、ダーモスコピー画像の2枚です。ダーモスコピーは、ライトの付いた拡大鏡で皮膚を10〜20倍ほどに拡大して見る検査で、皮膚科で使われています。家のスマホで撮った1枚とは、写っている情報の量が違います。
条件はほかにもあります。チャットAIには各病変を1回ずつしか聞いておらず、同じ質問でも答えは実行のたびに変わります。生検に回された病変だけを集めているので、皮膚科医にとっても見分けにくい例が多く入っています。MILK10kは2025年から公開されていて、AIが学習の段階で見ていた可能性があり、これはAIに有利な方向に働きます。
Lynchさん自身も、200件では僅差の順位はつけられず、メラノーマ30件では一番大事な数字のぶれが大きいと断っています。分析と初稿はAnthropicのClaude Codeで作り、比べたAIの1つも同社のモデルだと本人が明かしています。
あなたが家で撮った1枚をAIに見せたときにどれだけ合うかは、この検証からは読めません。
AIの「受診してください」は、ほくろを見分けた結果なのか?
見分けた結果とは限りません。Lynchさんは病名とは別に、「治療も生検も経過観察もせずに帰してよいか」も答えさせています。チャットAIは危険な100病変のうち97件と96件を帰さない側に残し、メラノーマ30件で「帰してよい」と答えたのは3件と4件でした。
ここだけ見ると頼もしく思えますよね。ところが良性の100病変で「帰してよい」と答えたのは、32件と22件にとどまります。ほとんど何でも「受診を」に寄せているから、危険なものも残っている、という読み方になります。
患者のように聞いた実験もあります。臨床写真1枚だけを見せて「医者に診てもらう必要はありますか」と聞くと、別に用意した生検確定のメラノーマ100件のうち99件と98件で受診を勧め、良性の病変にもほぼすべて受診を勧めました。
だから「受診してください」と返ってきても、そのほくろが危険だと見分けた返事とは言えません。反対に「帰してよい」側にも、メラノーマが30件中3〜4件入っていました。私はどちらの返事も、受診するかどうかを決める材料には使えないと考えています。
2015年設計の専用AIが勝っても、安心材料にはなりません
一致率では、皮膚の画像だけを学習したInception v3がチャットAIを上回りました。ところが、あらかじめ決めた判定の基準のままだと、危険な100病変のうち残したのは77件で、メラノーマ30件のうち18件を「帰してよい」側に入れています。基準を調整してチャットAIと残す件数をそろえると、帰したメラノーマは1〜2件まで減りました。
誤りの向きも見ておきたいところです。病名を外したメラノーマ17件のうち、8件をほくろ、6件を脂漏性角化症と答えていて、危険なものを良性と取り違えています。Lynchさんはこのモデルを最先端ではない比較の基準と位置づけ、規制を受けた製品はかなり成績が良いとも書いています。
スマホで撮って自動で判定するアプリについては、医療研究の評価をまとめるCochraneが2018年に調べています。当時の4つのアプリは、メラノーマ86件のうち7件から55件を見落としました。しかも写真は利用者ではなく医師が撮ったものです。
数字の良い道具でも、基準しだいでメラノーマを帰す側に入れます。家で良性か悪性かを見分けてよい根拠は、どちらの調査からも出てきません。
写真とAIに任せられること、任せられないこと
では、写真とAIは役に立たないのでしょうか。仕事を分けると、使いどころが見えてきます。
線を引くのは、写真の中身をAIに判定させるかどうかの1点です。ほくろの写真は皮膚科で医師に見せるための記録で、AIには自分で書いた文字のメモを渡せば足ります。
いまスマホに残っているほくろの写真、撮った日付と大きさは分かりますか?
ほくろの経過写真は、同じ条件で並べて残します
医師が見比べられる写真にするには、毎回の条件をそろえておきます。
- 定規やメジャーを横に置き、真上から撮る
- 近くからの1枚と、体のどこにあるか分かる引きの1枚を組にする
- 同じ部屋の同じ照明で、カメラの設定も毎回変えない
- 背中や足の裏など自分で見えにくい場所は、家族に撮ってもらう
- 撮る日を決めておく(たとえば毎月1日)
写真と一緒に、1回分を1行のメモに残します。
2026-11-01 左ふくらはぎ 横4mm 縦3mm 色は均一 かゆみ・出血なし 写真IMG_1234AIに頼むのはこのメモの整理です。何回分かたまったら、「このメモを日付順の表にして、前回から変わった項目に印をつけて」と一言添えて渡せば、診察で見せる一覧になります。写真はスマホに置いたまま、文字だけ渡す使い方ができます。
写真をAIに送るなら、顔や住所の写り込みと位置情報が付いていないかを先に確かめてください。
皮膚科には、ほくろの写真と記録をセットで持っていきます
診察では、いつ気づいたか、大きさや色・形の変化、かゆみや出血の有無を最初に伝えます。日付つきの写真が並んでいれば、「最近大きくなった気がする」を医師が自分の目で確かめられます。
がん情報サービスは、メラノーマの特徴として、形が左右非対称、輪郭がギザギザ、色むらがある、6mm以上、大きくなったり色や形が変わったりする、といった点を挙げています。当てはまるかどうかを自分で決める必要はありません。気になる変化に気づいたら、その時点で写真と記録を持って皮膚科へ行けば十分です。
私は医者ではないので、ほくろの良し悪しは判断できません。検証の数字を見るかぎり、今のチャットAIにもその役は任せられません。AIに写真を見せる前に、次の受診で医師が見比べられる1枚目を今日撮っておく。そこから始めてみてください。


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