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AI活用度を人事評価に組み込んだアクシスコンサルの判断

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AI研修をやったのに実際に使っているのは一部の社員だけ、という状態で止まっている会社はかなり多いと思っています。

8月13日、アクシスコンサルティングが従業員197名の全社を対象に、研修とコンテストと評価制度への反映を同時に走らせると発表しました。

研修だけで終わらせず評価まで踏み込んだこの判断には、AI定着で詰まる会社が見落としている分岐点が入っています。

研修とコンテストと評価反映が同時に走り出した

従業員数は2026年6月末時点で197名。

8月13日に発表された「全社AI変革プロジェクト」では、この全社員約200名が段階的なAI研修の対象になります。

さらに希望者向けのAI活用コンテストを開催予定とし、AI活用そのものを評価指標に位置づける。

研修と実践機会と評価制度、この3つを一体で回す設計です。

研修のカリキュラムが面白くて、公開されている項目は5つあります。

  • 生成AIに関する基礎知識
  • セキュリティ・倫理・社内ルール
  • 実務で成果を生み出す活用方法
  • AIエージェントを活用した業務設計
  • AI活用を組織へ展開する考え方

前半3つはツール研修としてよくある内容です。

ただ後半2つが「業務設計」と「組織への展開」になっている。

使い方を覚えさせて終わりではなく、業務フローを組み替える側と、それを横に広げる側まで研修の範囲に入っています。

コンテストのほうは、AIエージェント開発や業務改善のアイデアを募集して、優れた取り組みを全社展開する設計です。

研修だけで止まる会社と評価まで動かす会社の差

3つのうち経営判断として重いのは、評価制度です。

研修とコンテストは予算と時間があれば実行できますが、評価制度に触るということは、何を成果とみなすかの定義そのものを書き換えることになります。

研修で止まる会社が定着に失敗するのは、社員のやる気が足りないからではありません。

評価指標が変わっていないからです。

社員は評価される行動に時間を割きます。

これは合理的な判断で、責める話じゃない。

新しいツールを覚えて既存業務に組み込む時間は、評価対象になっていなければただの自己投資です。

研修を受けた翌日から従来のやり方に戻るのは、組織の設計としてそうなるようにできている。

項目
研修までやる会社
評価まで変える会社
社員に渡すもの
知識と操作方法
知識と、使う時間の正当性
社員側の位置づけ
業務外の学習
業務そのもの
起きやすい失敗
熱心な一部だけが使い続ける
活用したように見せる報告が増える

評価まで変えれば万事解決かというと、そうでもありません。

指標に入れた瞬間、測られる側は測られ方に最適化します。

この副作用は避けられないので、何を測るかの設計がそのまま結果を決めます。

「AIを使う人だけが苦労する」が指している問題

今回のプレスリリースで一番引っかかったのは、評価制度の説明に置かれた「AIを使う人だけが苦労する」というフレーズでした。

この状況をなくして組織全体で変革に取り組む文化をつくる、それが評価指標に入れる目的だと書かれています。

AI活用が進まない理由は、普通なら「使えない人が取り残される」という方向で語られます。

ここではその逆を書いている。

使う人のほうが損をする、という認識です。

なぜ使う人が苦労するのか。

分解すると4つくらい出てきます。

  • 新しい手順と既存フローの整合を、自分で取らないといけない
  • 出力が正しいかを確かめるコストを自分で負う
  • 周りは従来の手順のままなので、説明と説得に時間がかかる
  • それで多少速くなっても、評価は従来の成果指標で測られる

つまりAI活用の初期コストを、使い始めた個人が全額負担する構造になっています。

会社としては何も投資していないのに、一部の社員が勝手に負担を引き受けてくれている状態です。

この構造だと、社内で一番動ける人から先に消耗します。

そして数ヶ月後、その人が元のやり方に戻る。

よく見る光景だと思います。

評価指標に入れるというのは、この個人負担を会社が引き取るという意思表示になります。

制度の見た目は「AIを使う社員を優遇する」ですが、僕は「先行者が払っていたコストを会社がようやく認識した」ということだと読んでいます。

人材を送り出す側が自社の評価指標を先に変えた

アクシスコンサルティングはコンサルティングファームではありません。

2002年設立、資本金7億6,500万円の人材紹介・スキルシェア会社で、コンサルタント経験者やDX・M&A・新規事業の専門人材を企業に送り出す側です。

社名から誤読しやすいところなので、事例として読むときはここを間違えないほうがいい。

プレスリリースには、創業以来ハイエンド人材を通じて企業変革を支援してきた会社だからこそ、まず自社がAI前提の働き方へ変わり、その実践から得た知見を顧客への価値提供につなげる、という趣旨の説明が置かれています。

代表取締役社長COOの伊藤文隆さんも、AIは一部の専門人材だけが使う技術ではなく、すべてのビジネスパーソンが使いこなすべき基礎能力になりつつある、という認識を示しています。

人材紹介会社は、求人市場でどんな人材が求められているかを最も早く観測できる立場にいます。

その会社が自社の評価指標にAI活用度を入れた。

これを「変革を担う人材の要件定義にAI活用が入り始めた」というシグナルとして読むこともできます。

ただし1社の発表だけで需要側の変化までは断定できません。

自社の採用要件を先取りしただけかもしれないし、単純に社内の生産性課題への対応かもしれない。

材料としては弱いです。

それでも、人材を評価して送り出すことを本業にしている会社が自社の評価軸を先に書き換えた、という事実は引っかかったままです。

評価制度に手をつける前に決める2つのこと

自社でも評価に入れるか、と考えたときに、評価制度から着手するのは順番として危ないと思っています。

何を評価するかが定義できていない状態で指標だけ先に入れると、測りやすいものが指標になります。

使った回数、導入したツールの数、研修の受講率。

どれも活用の実態とは関係がなくて、報告作業だけが増えます。

アクシスが並べた 研修 → コンテスト → 評価 という順番は、そのまま設計としても読めます。

研修で全員に共通言語をつくり、コンテストで「良い活用とはどういうものか」の具体例を社内から吸い上げ、その具体例を評価基準の原型にする。

指標を先に決めるのではなく、事例から指標を作る流れです。

これを自社に置き換えると、評価制度に手をつける前に決めることは2つです。

  1. 評価対象を「使った量」ではなく「使って変わった業務」に置けるか
  2. 指標を作る前に、良い活用の実例を社内から何件集めるか

で、最初の一手は稟議でも制度設計でもなくて、社内で実際に業務が変わった事例を3件挙げてみることだと思ってます。

3件挙がらないなら、足りていないのは評価制度ではなく研修と実践機会のほうです。

挙がるなら、その3件の共通点がそのまま評価基準の原型になります。

制度をゼロから設計するより、すでに社内で起きていることを言語化するほうが早いですよ。

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