ビル ゲイツが警告する、AI時代に経営者が迫られる選択

AI経営者の参謀@ひで
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人を1人採るか、AIツールを入れるか。

同じ仕事を片付ける手段として並べると、たいていAIのほうが安く見えます。

その安さの一部が生産性ではなく税制でできているとしたら、判断の前提が少し変わってきませんか。

アルトマンもナデラも加速を語った8月に、ゲイツだけが計画がないと書いた

この夏、AI業界のトップから出てきた発言は、ほとんどが「どう乗りこなすか」の話でした。

OpenAI CEOのサム・アルトマンさんは史上最大の起業ブームが来ると語り、Microsoft CEOのサティア・ナデラさんは1社のAIに依存する危うさを説いた。

警戒のトーンはあっても、どちらもAIが伸びる側に立った上での警戒です。

そこに8月26日、Microsoft共同創業者のビル・ゲイツさんが自身のブログで真逆の温度の文章を出しました。

乱気流のAI時代はすでに来ていて、今下す選択が決定的になる、という趣旨のタイトルです。

冒頭のフレーミングがかなり強い。

AIは史上最高の平等化装置になるか、最悪の不公正の源泉になるか、そのどちらかだと書いています。

そして今は誰もそれに備えていない、と。

指導者も専門家も地域社会も、この課題に十分向き合っている証拠が見当たらない。

AI時代への入り口をならすための計画が存在しない。

そういう言い方をしています。

ゲイツさんはもう現役の経営者ではありません。

売るモデルも売るクラウドも持っていない立場だからこう書ける、という面は確実にあると思ってます。

人を雇えば税がかかり、機械を買えばその年に落とせる

このエッセイで経営者に一番刺さるのは、税制についての一節です。

従業員を雇えば、その給与に対して雇用主が税を払う。

でもロボットを買えば、たいていその年のうちに経費として落とせる。

制度そのものが、人ではなく機械を選ぶほうへ背中を押している、という指摘です。

日本に置き換えるともっと生々しくなります。

社員を1人増やす
AIツールを1つ入れる
直接払うもの
給与
利用料
上に乗るもの
会社負担の社会保険料、給与のおよそ15%
なし

年収500万円の人を採ると、給与とは別に、会社側へざっくり75万円が乗ります。

AIツールの利用料には、これに相当する上乗せがありません。

つまり人とAIを並べて比べた時点で、この75万円は最初から人側のハンデとして計算に入っている。

生産性の差ではなく、制度の差としてです。

ゲイツさんが問題にしているのは、まさにこの非対称ですね。

AIトークンとロボットに課税するという提案は、どこまで届くのか

ではその非対称をどう直すのか。

ゲイツさんの答えは率直で、AIトークンとロボットに課税すべきだと書いています。

狙いは2つあって、人からの逃避を少しだけ遅らせることと、再訓練と社会的セーフティネットの財源をつくることです。

ただしこの課税は絞り込む必要があるとも言っています。

医療や教育を安くするような、純粋に有益な用途まで減速させてしまっては本末転倒だからです。

支援を届ける先も具体的に挙がっていて、AIやロボットに職を奪われた人、賃金が下がった人、損失が集中する地域、と書いています。

そしてその作業は今から始める必要がある、と。

受け止め方は割れました。

実装が難しい、企業は拠点を移すだけだ、経済的に非効率だという批判は当然出ています。

正直、明日この課税が日本の中小企業に降ってくる話ではありません。

ただ経営計画の前提としては読む価値がある。

AIの利用単価が今のまま下がり続ける、という想定で3年分の数字を組んでいるなら、そこは一度疑っておいたほうがいいと思ってます。

ヒューマンリザーブド、人間に残す領域をあらかじめ決めておく

ゲイツさんはこのエッセイで、人間のために取っておく領域を先に決めておく、という発想を出しています。

自分はこの領域をヒューマンリザーブド(Human Reserved)と呼び始めた、と。

自然保護区に近い考え方で、技術的に自動化できるかどうかとは別の軸で、ここは人がやると先に線を引いておく。

例に挙がっているのが医療の場面です。

治る見込みのない病気の告知を、ロボットにやらせるべきではない。

技術的には可能でも、それはやらない。

教育やメンタルヘルスのような領域でも、自動化は年単位、十年単位で段階的に入れるべきだと書いています。

経営の言葉に翻訳すると、AIに置き換えない業務を先に決めておく設計です。

これ、守りの話に聞こえて実は攻めの話なんですよ。

顧客が自社を選ぶ理由が「人が出てくること」にあるなら、そこを自動化した瞬間に選ばれる理由が消えます。

どこまで自動化するかを毎回その場のコストで決めていると、あとから線を引こうとしても引く場所が残っていない。

増員を止めたその判断は、本当に生産性の話だったのか

自社に落とすなら、確認することは1つです。

直近で増員を見送ってAIツールに寄せた判断があるなら、そのときの比較表をもう一度開いてみてください。

人件費の側に会社負担の社会保険料が乗っていたはずです。

それを一旦外して、給与だけで並べ直してみる。

それでもAIが勝つなら、本物の生産性の差です。

自信を持ってその判断でいい。

でも外した瞬間に差が縮まったり逆転したりするなら、判断を支えていたのは制度のほうだったことになります。

誤解のないように書いておくと、だから人を雇え、という話ではありません。

制度の下駄も含めて実際のコストなので、経営判断としては下駄ごと使って構わない。

大事なのは、自分が何を根拠に決めたのかを自分で把握していることです。

根拠が制度側にあると分かっていれば、制度が動いたときにすぐ組み直せる。

分かっていなければ、動いたことにも気づけません。

先送りできる話と、今四半期に決めるべき話

ゲイツさんの提言のうち、税制も国際的な枠組みも、僕らが動かせるものではありません。

先送りというより、そもそも手が届かない。

手が届くのは3つで、しかも重さがだいぶ違います。

今四半期のうちに終わるのが2つ。

採用とAI導入の比較表から会社負担分を分離して並べ直すのは、1時間あれば終わります。

仮にAIの利用単価が1.5倍になったら、で来期の数字を引き直しておくのも、半日あれば形になる。

残る1つ、来期までにやっておきたいのが、自社のヒューマンリザーブドを書き出すことです。

うちは何があってもここは人がやる、という業務を1行だけ決めておく。

1つで構いません。

決めた瞬間に、残りの業務は自動化を検討していい対象だと確定するので、判断はむしろ速くなります。

計画がない、と書かれたのは各国政府の話です。

ただ、自社に計画があるかどうかは、それとはまったく別の問題として残ります。

まずは比較表から会社負担分を外してみるところからどうぞ。