あなたが今日かけた1本の電話に、いくらかかっているか。
外注すれば1コール100円から300円、社内でやっても似た金額です。
同じ電話を1分2セントでかけるAIが誰でも使える形になったので、この数字を一度並べてみます。
テレアポ1件の人件費を、計算したことがありますか?
先に人間側の数字を置きます。
架電1件にかかる時間は4分から5分が目安とされていて、1時間あたり12件から15件が標準的なペースです。
ただし8時間勤務でも朝礼、休憩、リスト確認、メール対応が入るので、実際に発信へ使えるのは4時間から6時間。
1日の架電数は50件から90件あたりに落ち着きます。
ここに人件費を乗せます。
月給30万円の担当者なら、賞与と社会保険の会社負担まで含めた実コストは月40万円前後。
月20日稼働で1日あたり2万円です。
1日60件かければ、1コールあたり約330円。
90件まで伸ばせば約220円になります。
面白いのは、この数字がテレアポ代行の相場とほぼ重なることです。
コール課金型の代行は1コール100円から300円、成果報酬型はアポ1件で1万円から3万円、決裁者向けなら3万円から8万円という水準。
内製でも外注でも、電話1本は数百円の世界に着地します。
受付で「担当者は席を外しております」と言われて切られた、あの30秒。
あそこにも200円から300円が乗っているということです。
1分2セントで電話をかけるAI、ThunderPhoneが誰でも使える形になりました
やることを普通の言葉で書くだけで、受電も架電もこなすAI電話エージェントが作れるプラットフォームです。
作っているのはスタンフォードのAI研究室とY Combinator出身のチームで、音声AIには2024年から取り組んでいます。
1分2セントという価格自体は、2025年の春から公開されていました。
新しいのは、問い合わせをしなくても登録すればその日から使えるセルフサービス版です。
9月に入って各所で名前を見かけるようになったのはこちらのほうで、価格は据え置きのまま入り口だけが開いた形になります。
料金は3階層あります。
一番安いSparkが1分2セント、中間のBoltが5セント、最上位のStormが9セント。
1ドル155円で換算すると、それぞれ約3.1円、約7.8円、約14円です。
通話料も含まれていて、プラットフォームの利用料が別途かかることもありません。
1ヶ月分の架電を、人件費とAIコストで並べてみる
条件を揃えます。
1件あたりの通話時間は人間と同じ4分半、1日60件、月20日稼働で1,200件。
一番安いモデルだけで比べるのはフェアではないので、最上位のStormも並べました。
それでも1コールあたりで人の5分の1、月額で見れば人件費40万円に対して7.5万円です。
しかもこの表には、AI側に有利な条件がまだ入っていません。
1日60件という上限は、口が1つしかないから生まれる制約です。
AIは同時に何十本でも回せるので、1,200件を1日で終わらせることもできます。
ここまで見ると、テレアポという仕事そのものが消えるように読めます。
ただ、消える部分と残る部分は、はっきり分かれています。
なぜ2セントで回るのか、価格表を読むと設計が見えます
安さの理由は、価格表の作り方に出ています。
まず、音声モデルから通話回線までを一社で抱えています。
Spark、Bolt、Stormは自社モデルの名前ですし、通話料も価格に含まれています。
プラットフォーム利用料が別建てになっていないぶん、積み上がる要素そのものが少ない構造です。
次に、モデルを3階層に分けていること。
「予約の希望日時を聞いて復唱する」程度の用件に、最上位モデルは要りません。
用件の難易度に合わせて安いほうへ流せる設計になっています。
そして相手が保留にしている間は、どの階層を使っていても2セントで課金されます。
保留音を聞かせている時間に高いモデルを走らせても意味がない、という割り切りです。
同種のプラットフォームが1分7セントから10セントという水準だったことを考えると、そこから3分の1以下に振り切った価格帯です。
切られない最初の一言と、断られた後の一言は、別の技術です
では、この安さがどこまで営業を置き換えるのか。
公式サイトのトップに並んでいるのは、カスタマーサポート、予約受付、そして商談前の下準備です。
クロージングという言葉は出てきません。
これは正直な線引きだと思います。
受付を突破して担当者につなぐ。
日程の候補を3つ出して確定させる。
資料送付の許可を取る。
この種の「手順が決まっている会話」は、書いたとおりに動く相手のほうがむしろ安定します。
人間は100件目で声が疲れますが、AIは1,200件目でも1件目と同じトーンです。
一方で、こういう場面はどうでしょうか。
「今は間に合ってます」と言われた0.5秒後に、何を返すか。
相手が黙り込んだ3秒を、どう埋めるか。
「予算が取れなくて」の裏に、本当は社内で決裁者を説得できていない事情が隠れていると気づけるか。
これは手順ではなく判断です。
相手の言葉の裏にある感情を読んで、次の一言を選び直す作業なので、事前に書ける台本がありません。
なお、対応言語は40以上と書かれていますが、日本語のテレアポで受付を突破できるだけの自然さがあるかは、自分で試して確かめる部分です。
英語圏の水準がそのまま日本語に来ているとは限りません。
安いAIと高い人間、分かれ目はあなたが何を練習してきたかです
コストが20倍以上違うということは、会社が「ここは人がやる」と決めるたびに、その理由を説明しないといけなくなるということです。
1コール330円の人と、14円のAI。
この2つが並んだとき、330円の側に残るのは、AIが持っていけない部分だけになります。
リストの上から順に読み上げる作業しかしていなければ、立場は苦しくなります。
逆に、断られてからの立て直しができる人は、その場面だけを任される形に変わります。
件数を稼ぐ役割から、AIが取りこぼした相手を引き受ける役割へ、担当範囲がずれていくイメージです。
だとすれば、練習する対象も変わります。
架電件数を増やす練習ではなく、断られた後の30秒を作る練習です。
道具は今使っているAIで足ります。
「あなたは製造業の情報システム部長です。営業電話を受けて『今は間に合ってます』と言ってください。私が食い下がったら、断る理由を毎回変えてください」と書けば、その場で練習相手になります。
同じ断り文句を10回受けて、10通りの返し方を試す。
この30秒を持っている人は、1分2セントの相手が何万件かけてきたところで、仕事の中身が変わるだけで無くなりません。

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