確定申告の時期になると、領収書を放り込んだ箱を引っ張り出して、週末が2回消える。
独立して最初の3年は、毎年これをやっていました。
今は経理に使う時間が月1時間ちょっとで、2月に特別な作業は起きません。
効いたのは会計ソフトのAI機能そのものより、確定申告を年1回のイベントとして扱うのをやめたことでした。
確定申告前に週末が2回消えていた頃
当時のやり方は単純で、レシートも請求書も全部ひとつの箱に入れていました。
2月になったら箱をひっくり返して、通帳とカード明細を横に置いて、1年分をまとめて入力する。
土日を2回潰して、だいたい20時間です。
きつかったのは時間の長さより、途中で必ず出てくる「これ何だっけ」でした。
10月14日、38,500円、見覚えのある会社名。
半年前の自分には聞けないので、メールを遡って思い出すことになります。
これが20件くらい出る。
もっと良くなかったのは、その1年のあいだ、自分の会社の数字をまったく見ていなかったことです。
今月いくら残るのかも分からないまま判断していました。
確定申告のためだけに帳簿を作っていたので、当然といえば当然なんですけど。
月1時間の内訳は 撮る 承認する 判断する
先月の実績で言うと、こうでした。
合わせて1時間ちょっと。
これだけ、と思うかもしれません。
逆です。
この3つ以外をやらないと決めたから、1時間で終わっています。
領収書はレジの前で撮る
会計ソフトのアプリでレシートを撮ると、日付と金額と店名をAIが読み取ってくれます。
かかるのは10秒です。
大事なのは「その場で」の部分で、鞄に入れた時点でもう溜まります。
読み取りを間違えることは月に1、2枚あります。
手書きの領収書と、感熱紙が擦れているものが多いです。
その場なら現物を見ながら直せるので、ここでも溜めないほうが結局は早い。
メールやWebでダウンロードした請求書は、印刷して保管ではなくデータのまま残す必要があります。
電子帳簿保存法の話なので、届いた時点で会計ソフトに取り込んでおくのが確実です。
紙のレシートも、要件を満たす形で取り込めば原本を処分できます。
ただ設定が合っているか自信を持てないので、うちは年度末まで箱に残しています。
週に1度 AIの仕訳案に目を通す
事業用の口座とカードを会計ソフトに連携しておくと、明細が自動で入ってきて、AIが勘定科目の候補を出してくれます。
使い続けるとうちの取引先を覚えるので、毎月同じ支払いはほとんど触らなくてよくなりました。
月曜の朝に10分。
コーヒーを淹れる前に開いて、並んでいる候補に上から丸を付けていく感じです。
月末に残るのは判断が要る取引だけ
週次で流していくと、月末に残るのは「AIが決めきれなかったもの」だけになります。
初めての取引先への支払い、私用と混ざりそうな買い物、金額の大きい入出金。
ここが実質の経理で、15分。
個人事業主だった頃は、この状態で2月を迎えると、申告そのものは画面の案内どおりに進めてe-Taxで送信するだけでした。
1時間かかりません。
大変だったのは申告ではなく、そこにたどり着くまでの記帳だったんですよね。
AIの仕訳をそのまま信じて決算で青くなった話
一度、危ないことをやりました。
3月末に入金があって、摘要は取引先の会社名だけ。
AIは過去の取引から判断して「売上高」で仕訳を出し、私はそれをそのまま承認しました。
実際には、4月に納品する案件の前金でした。
売上ではなく前受金です。
そのまま月次を締めていたので、その期の利益が実態より大きく見えていました。
決算のときに税理士さんから「これ、前受金じゃないですか」と言われて修正しています。
税額が変わる話なので、申告前に見つかったのは運がよかっただけです。
そこで分かったのは、AIが見ているのは摘要の文字列と過去の仕訳のパターンだということでした。
その入金が売上なのか前受金なのか預り金なのかは、契約の中身を知っている自分にしか判断できません。
なのでその日から、10万円を超える入出金だけは必ず自分で開いて見る、というルールにしました。
完全に自動化するのを諦めたら、かえって時間が減ったのが不思議なところです。
2027年分から 日々の記帳が控除額に効いてくる
2027年分、つまり令和9年分の申告から、青色申告特別控除の上限が75万円に引き上げられます。
うちは法人にしたので直接は関係がないんですが、個人でやっている人には早めに言っておきたい話です。
そんな先の話、と思いますよね。
ただ対象になるのは2027年1月からの取引なので、体制を整えるのは来年のうちです。
75万円を取るには、e-Taxで提出することに加えて、優良な電子帳簿として保存するか、請求書データ等と自動連携しているか、どちらかを満たす必要があります。
現行の65万円控除も、e-Taxで出すか電子帳簿保存をするかが条件になっています。
個人事業主だった最初の年、これを知らずに紙で出していて、控除を10万円分落としました。
同じ帳簿を作って、出し方だけが違ったのに。
つまり「2月にまとめて入力する」やり方が、制度の側からだんだん成立しなくなっていくということです。
月1時間の習慣は時短の話に見えますが、この要件を自然に満たす形でもあります。
浮いた時間で増えたのは営業ではなく断る判断だった
経理が軽くなったら営業に回そう、と最初は思っていました。
実際に変わったのは営業の時間ではなく、判断できるタイミングのほうでした。
月次が5営業日以内に締まるので、資金がいつ薄くなるかが2ヶ月先まで見えます。
去年、うちの規模だと大きめの受注を1件断りました。
内容は面白い仕事だったんですが、入金が4ヶ月後で、そのあいだの人件費が持たないと数字ではっきり出ていたからです。
以前なら「たぶん行ける」で受けて、あとから自分の役員報酬を止めて調整していたと思います。
断れるようになったことが、月1時間の一番の効果だと思ってます。
あとは私的なところで、2月の週末が2回戻ってきました。
年に2日でも、あの時期の2日は大きいです。
一人でやっているなら最初に変える3つ
ツールを選ぶ前にやることがあります。
事業用の口座とカードを分ける
ここで連携の精度がほぼ決まります。
私用と混ざった明細は、AIがどれだけ賢くても仕分けられません。
判断する材料が最初から入っていないので。
会計ソフトの比較記事を読むより、口座を1つ作るほうが効きます。
領収書を溜めない
月末にまとめてやろうとすると、40枚を前にして手が止まります。
その場で10秒だけが、続いた唯一のやり方でした。
任せる範囲を金額で線引きする
全部任せようとすると、結局は全部を疑うことになって、確認のほうに時間を取られます。
うちは10万円で線を引いて、それ以下はAIの仕訳案をそのまま承認、超えたら自分で開く。
このラインを決めた月から、経理にかかる時間が半分になりました。
確定申告を早く終わらせる方法を探していた頃は、毎年同じところで詰まっていました。
仕組みのほうを変えてからは、確定申告という言葉を意識する機会そのものが減っています。
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