欲しい服の見た目を、言葉でAIに伝えられるか。

ここな
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@closetnote 6本

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「きれいめの白ブラウス」で検索して、出てきた200件を上から眺めているうちに、自分が何を探していたのか分からなくなる。あの迷子の原因は、通販サイトの検索精度でもAIの性能でもありませんでした。こちらが渡している言葉が、3語で止まっているからです。

「きれいめ」で検索して、結局スクロールし続ける理由

頭の中にはちゃんと像があるんですよね。襟が詰まりすぎていなくて、腕を上げても肩のラインが崩れなくて、生地に少し落ち感があるやつ。その像を検索窓に持っていくと、打てるのは「きれいめ」「ブラウス」「白」の3語になります。

AIスタイリストに頼んだときも、同じことが起きています。「きれいめのコーデを教えて」と投げると、返ってくるのは白シャツにテーパードパンツにローファー、みたいな無難な組み合わせ。間違ってはいないけれど、自分のクローゼットとつながらないんです。

ここで「AIって結局こんなものか」と閉じてしまうのがもったいないところです。投げた言葉が3語なら、返ってくる答えも3語ぶんの解像度にしかなりません。

ところで「きれいめ」、自分はどういう意味で使っていますか。私は長いこと「カジュアルすぎない」くらいの意味で使っていました。つまり否定形でしか定義していなくて、何がそうさせているのか、襟なのか素材なのか丈なのかを一度も言葉にしたことがなかったんです。

デザインの素人も、同じ壁にぶつかっていた

頭の中のコーデのイメージが言葉にならないまま吹き出しになっているクローゼットのイラスト

この「見れば分かるのに言葉にできない」問題、Webデザインの世界では先に道具になっていました。Design Wordsという小さなツールがあります。作ったのはBen's Bitesを運営するBen Tossellさんで、キャッチコピーは「Find the design thing. Copy its words for your agent.」です。

角の丸みやドロップシャドウ、テーマの色みといった要素を画面上で選んでいくと、その組み合わせを反映したサイトのプレビューが並びます。「これこれ、こういう感じ」と目で選んだあと、それを説明する英語のプロンプトをコピーしてAIエージェントに渡せる。言葉にできない好みを、指差しで特定してから言葉に変換してくれる道具ですね。

はっきり書いておくと、これはWebサイトやアプリのUI向けの道具で、服選びには使えません。ただ、困っている構造は服とまったく同じなんです。素人は自分の好みを指差すことはできるけれど、名前で呼ぶことができない。そして名前で呼べないと、AIには渡せません。

では服の側に同じ道具はあるのか。探した範囲では見当たらないので、当面は自分で語彙を作ることになります。やり方はそんなに難しくないです。

同じ1枚を、言葉を変えて3回投げてみる

同じ服の条件に言葉を足すごとに候補の並びが変わっていくイメージ

手持ちのテーパードパンツに合う白いブラウスを1枚足したい、という状況を例にします。同じ買い物を、3段階の言葉で試します。投げ先は通販サイトの検索窓と、ChatGPTやGeminiのようなAIチャットの両方です。同じ言葉を両方に投げるのがポイントで、どちら側が翻訳を引き受けてくれるのかが分かります。

1: 感覚語だけ。きれいめ 白 ブラウス

2: 物のスペックを足す。とろみのある素材で、肩のラインが落ちない、腰が隠れる丈の白いブラウス

3: 合わせる相手と場面を足す。黒のテーパードパンツに合わせて、オフィスで浮かないけど堅すぎない一枚

比べる軸は3つ決めておくと迷いません。候補の幅が実際に狭まったか。出てきたものが手持ちの服とつながるか。そして、買わない理由をちゃんと言えるか。

この3番目が意外と効きます。「なんとなくピンとこない」だった却下の理由が、「丈が短くてパンツのウエストが強調される」に変わると、次の検索がまた一段階うまくなるんですよね。

じゃあ毎回ゼロから何を足せばいいのか。足す言葉の型は、だいたい3つに収まります。シルエット、素材の落ち感、合わせる相手。この3つを感覚語に添えるだけで、投げる言葉の情報量は倍くらいになります。

感覚の言葉と、AIが持っている言葉は別物

もう1つ、日本語で服の話をしている人だけがぶつかる壁があります。「きれいめ」「コンサバ」「モード」「韓国っぽ」。毎日使っているこれらは、輪郭のはっきりした定義というより、その場の空気を指す言葉です。

一方でAIが英語圏で大量に見てきたのは、名前のついたスタイルのほうなんですよね。quiet luxury(ロゴを出さず素材と仕立てで見せる路線)、old money(伝統的で流行から距離を置く路線)、normcore(あえて普通の服で構成する路線)、それにminimalist、streetwear、preppy。どれも輪郭がはっきりしていて、参照できる画像の束も分厚い。

では「きれいめ」は英語でなんと言うのか。これ、1対1で置き換わる単語が見つからないんです。smart casualもpolishedも、指しているレンジが「きれいめ」より広かったり狭かったりして、そのまま渡すと思っていたのと違う方向に振れます。

なので実用的な対処はこうなります。感覚語は使ってもいいけれど、単独で投げない。必ず物のスペックを1つ添えて、きれいめ、襟は開き気味、素材はとろみ まで書く。

余裕があれば、英語のスタイル名を1つ混ぜて反応を見るのも面白いです。quiet luxuryに寄せたきれいめpreppyに寄せたきれいめ では、返ってくる提案の方向が分かれます。自分の「きれいめ」がどちら側なのか、それで初めて自分でも分かったりするんですよね。

言葉を足すべきときと、曖昧なままでいいとき

ここまで語彙を増やす話をしてきましたが、いつでも増やせばいいわけではありません。言葉を足すべきなのは、買う目的が決まっているときです。手持ちのあの服に合わせる1枚、この場面で着る1枚、という具体が先にある買い物では、条件を細かく渡すほど外れが減ります。

逆に曖昧なままでいいのは、手持ち服の組み合わせを広げたいときです。条件を細かく指定すると、AIは自分がすでに持っている発想の範囲をなぞった提案しか返してきません。「クローゼットにこれとこれがあります。私が思いつかない組み合わせを出してください」くらいざっくり投げたほうが、知らない着方が出てきます。

最後に、今日からできることを1つだけ。街でもSNSでも、いいなと思う服を見かけたら、その理由を3語で書き留めておいてください。「落ち感」「襟開き気味」「膝下丈」みたいな、ただのメモで構いません。

それが半年たまると、通販の検索窓にもAIにも渡せる、自分専用の語彙表になります。言葉にできた好みだけが、探してもらえる好みなんですよね。