先日、ある中小企業の経理担当と話す機会があった。
「月次決算の報告書、いつも丸1日かけて書いてたんです。数字を整理して、前月比を出して、差異の説明を考えて、経営者が読みやすい形にまとめて。でも先月、AIに『報告書のたたき台を作って』と頼んでみたら、半日で終わったんですよ。数字の解釈は自分で確認しましたけど、体裁を整える作業がほぼなくなった」
この話を聞いて思った。経理の仕事は、正確さが命。だからこそ、「正確さが求められない部分」に時間を取られるのがもったいない。
AIに「数字の正しさを保証すること」はできない。仕訳の最終判断も、監査対応の肌感覚も、経営者への説明の温度感も、人にしかできない。でも「報告書の体裁」「差異分析の文章化」「チェックリストの作成」なら、経理業務の「書く・まとめる・整える」の時間を大幅に削れる。
ここでは、経理・財務の実務で使える9つのプロンプトを紹介する。
日次の実務
毎日やる仕事こそ、少しの時短が積み重なると大きい。
仕訳に迷ったときの相談
「この取引、どの勘定科目だっけ?」と調べる時間を短縮する。
以下の取引の仕訳について相談したい。
取引内容:[具体的な取引の説明]
金額:[金額]
日付:[日付]
補足情報:[支払方法、契約形態など]
以下を教えて。
- 借方/貸方の仕訳案
- 使用する勘定科目とその理由
- 消費税の処理(課税/非課税/不課税の判断)
- 摘要の記載例
- 判断に迷いやすいポイントと注意点
※最終的な仕訳判断は必ず自社の会計方針と照合して確認します。経費精算のチェック観点
申請が上がってきたとき、見るべきポイントを整理しておく。
以下の経費申請のチェックポイントを整理してほしい。
経費の種類:[交通費/交際費/消耗品費/会議費 など]
申請内容:[概要]
金額:[金額]
添付書類:[領収書/レシート/請求書 など]
以下の観点で出して。
- 確認すべき項目の一覧
- 社内規定でよく引っかかるポイント
- 税務上の注意点(損金算入の可否など)
- 差し戻しが必要な典型パターン
- 承認時に添えるコメント例月次・定期業務
月末月初は経理が一番忙しい時期。報告書の「書く作業」を減らせると、全体が楽になる。
月次決算の報告書たたき台
数字は自分で確認する。でも文章の体裁を整える時間は短縮できる。
月次決算の報告書のたたき台を作ってほしい。
対象月:[○月度]
売上:[金額](前月比[%]、前年同月比[%])
経費:[金額](予算比[%])
営業利益:[金額]
特記事項:
- [箇条書きで主なトピック]
以下の構成で出して。
- エグゼクティブサマリー(3行で要点)
- 損益の概況
- 前月・前年との比較分析
- 予算との差異とその要因
- 来月の見通しと注意点
経営者が5分で全体像を把握できるトーンで。予算との差異を説明する文章
「なぜ予算と実績がズレたのか」を説明する文章は、毎月のように必要になる。
以下の予算実績差異の説明文を作ってほしい。
科目名:[科目]
予算額:[金額]
実績額:[金額]
差異額:[金額](予算比[%])
背景情報:
[把握している原因や状況]
以下の構成で出して。
- 差異の主な要因(3つ以内に絞る)
- 一時的な要因か、今後も続くか
- 来月以降の見通し
- 必要な対策があれば
- 経営層に報告する際の説明文(簡潔に)入金督促メールの段階別テンプレート
督促は気を遣う仕事。段階に応じたトーンの使い分けが大事。
入金督促メールを作ってほしい。
取引先:[会社名]
請求書番号:[番号]
請求金額:[金額]
支払期限:[日付]
経過日数:[期限から○日経過]
督促の段階:[初回リマインド/2回目の催促/最終通告]
以下を意識して。
- 段階に応じたトーンの強さ
- 支払期限を明確に再提示
- 対応期限を設定する
- 取引関係を維持する配慮
- 相手が行動しやすい具体的な案内分析と計画
ルーティンを回すだけでなく、「数字を読んで、次の一手を提案する」のが経理の腕の見せどころ。
キャッシュフロー予測の整理
資金繰りの見える化は、経営者への最大の貢献。
以下の情報からキャッシュフロー予測を整理してほしい。
現在の現預金残高:[金額]
今後3ヶ月の見込み:
- 入金予定:[主要な入金のリスト]
- 支払予定:[主要な支払のリスト]
- 月額固定費:[概算]
以下を出して。
- 月別のキャッシュフロー予測表
- 資金が最も厳しくなるタイミング
- 資金ショートのリスクがあれば、その時期と不足額
- 対策案(入金の前倒し、支払いの調整など)
- 経営者に伝えるべきポイントコスト削減の提案書
「コストを見直してほしい」と言われたときの叩き台に。
以下のコストデータから削減提案を作ってほしい。
コスト内訳:
[科目別のコスト一覧を記載]
前年比較データ:[あれば]
業界平均との比較:[わかれば]
以下の構成で出して。
- 削減余地がありそうな科目(優先度が高い順)
- 各科目の具体的な削減案
- 期待できる年間削減額の目安
- 実行の難易度(すぐできる/社内調整が必要/投資が必要)
- 経営層への提案文(1ページに収まる形で)効率化ツール
繰り返しの作業を仕組みにしておくと、月末の残業が変わる。
業務チェックリストの作成
抜け漏れは仕組みで防ぐ。
以下の経理業務のチェックリストを作ってほしい。
業務名:[月次決算/給与計算/支払処理/年末調整 など]
担当者:[人数と役割]
実施頻度:[毎日/毎月/四半期/年次]
以下を含めて。
- チェック項目(実施順に並べて)
- 各項目の確認方法と確認先
- よくあるミスとその防止策
- ダブルチェックが必要なポイント
- 完了の判断基準業務マニュアルのたたき台
引き継ぎや属人化の解消に。
以下の経理業務のマニュアルを作ってほしい。
業務名:[具体的な業務名]
使用システム:[会計ソフト名、ツール名]
実施頻度:[頻度]
以下の構成で出して。
- この業務の目的(なぜやるのか)
- 手順(ステップ形式で、画面操作のイメージも含めて)
- 判断が必要なケースと対応方針
- よくある質問とその回答
- トラブル時の対処法
経理の経験が浅い人でも迷わず実行できるレベルで。経理・財務でAIを使うときの3つの約束
- 金額・税率・法令の正確さはAIを信じない ― AIは「それらしい数字」を出すのが得意だが、正確さの保証はできない。仕訳の最終判断、税率の適用、法令の解釈は必ず自分の目と自社の会計方針で確認する。
- 社外秘の数字や取引先情報はそのまま入力しない ― 売上の実数、取引先名、銀行口座情報などは伏せるかダミーに置き換えて使う。「構成や文体のたたき台」を作ってもらい、本物の数字は後から自分で入れる。
- 浮いた時間を「経営に貢献する分析」に使う ― 報告書の体裁を整える時間が減った分、「この数字の裏に何があるか」を考える時間に充てる。それが「作業する経理」から「提案できる経理」への一歩になる。
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