「今日もいい日でした」としか書けない夜が続くと、日記を開くのがおっくうになります。
本当に書きたいのは整った振り返りではなく、誰にも見せられないほうの感情だったりします。
その感情だけを受け止める日記アプリを、自分でコードを書かないままAIとの対話だけで作り上げた人が海外にいます。
日記に必要だったのは内省ではなく、感情を吐き出す場所でした
Crash Out Diaryというアプリを作ったカリマ・ウィリアムズさんは、子育ての最中に抱えたストレスをAnthropicのClaudeに聞いてもらっていたそうです。
気を遣わずに感情をそのまま出せる相手がいると、子どもへの向き合い方まで変わってくる。
その手応えから生まれたのが、このアプリでした。
名前にあるcrash outは、感情が振り切れて爆発してしまう状態を指す英語の言い回しです。
日記のジャンルとしては、かなり珍しい方向を向いています。
日記アプリの説明文はたいてい、内省と感謝と目標管理で埋まっています。
でも実際に手が止まるのは、そのどれでもない夜のはずです。
腹が立って眠れない、理不尽すぎて言葉にならない、誰も悪くないのに苦しい。
この状態を置いておく場所として、内省用のフォーマットは狭すぎます。
手帳を長く使っている人ほど、この感覚には心当たりがあるはずです。
週間ページの振り返り欄と、感情を捨てる場所は、もともと別の道具でした。
既製の日記アプリでは満たせない書き方があります
既製の日記アプリは、ほぼ例外なく残す前提で作られています。
検索でき、振り返れて、統計が出る。
読み返しを資産にしたい私にとっては、ありがたい設計です。
ところが吐き出したい感情に関しては、この前提が邪魔をします。
残ると思うと書けないからです。
あとで読み返す自分の目を意識した瞬間、言葉が整いはじめて、本音が半分抜け落ちます。
Crash Out Diaryの説明文には、こう書かれています。
匿名で書けて、入力したものは何も保存されない。
残るのはあなたのエネルギーだけ、と。
日記アプリの常識をまるごと裏返した設計です。
手帳でも似たことをしている人は多いはずです。
破って捨てる前提の裏紙に書く、鍵付きのノートを別に持つ、書いたあと塗りつぶす。
既製品が用意してくれないから、みんな手作業で逃げ道を作っています。
AIと二人三脚でゼロから作るという選択が現実的になりました
ここが面白いところなのですが、ウィリアムズさんは自分でコードを書き下ろしたわけではありません。
AIと会話しながら、Webアプリの形に組み上げていきました。
作りたいものを言葉で説明して、返ってきたものを直してもらう。
その繰り返しです。
出来上がったものは2025年の夏に海外メディアが取り上げるほど広がり、同じ年の11月にはiPhoneアプリとしても公開されました。
無料で使えて、有料プランは月額7.99ドル、日本円で約1,200円。
年払いなら39.99ドルで、約6,000円です。
既製の日記アプリがどれも自分に合わないとき、残された道は妥協して使うか諦めるかの2択ではなくなった、ということです。
作りたい機能を言葉で伝えるだけで、形になっていきます
自作と聞くと技術の話に見えますが、いちばん時間がかかるのは何が欲しいのかを言葉にするところです。
そしてこれ、手帳好きが毎年やっている作業とほとんど同じなんです。
来年の手帳を選ぶとき、私たちは頭の中でこんなことを考えています。
マンスリーは要るけどウィークリーは方眼がいい、後ろに白紙が30ページ欲しい、ハビットトラッカーは月末にまとめて塗りたい。
この解像度で条件を挙げられる人は、そのまま設計の言葉に翻訳できます。
日記に落とすなら、こんな条件が出てくるはずです。
- 毎晩1問だけ聞いてきて、それ以上は追ってこない
- 書いた内容は翌朝に自動で消える
- 感情の種類でページの色が変わる
- 月末に一度だけ、まとめて読み返せる
既製アプリの機能一覧から自分に近いものを探すのではなく、自分の条件のほうから始められる。
順番が入れ替わるだけで、手に入るものがまるで変わります。
手帳好きが自分だけの日記の形を持つための最初の一歩
いきなり作りはじめる必要はありません。
最初にやることは、手帳の余白に3行書くことです。
自分の日記に本当に必要な機能を、3つだけ挙げてみてください。
毎日は書かない、読み返すのは月に1回、怒った日の記録は残さない。
こんな粗さで構いません。
条件が言葉になっていれば、それだけで前に進みます。
そのうえでAIに相談するなら、この3つを渡して、既製の日記アプリで満たせるものと満たせないものに分けてもらうのが早いです。
満たせるほうは、素直にアプリを入れれば済みます。
残ったほうが、自作を考える価値のある部分です。
日記が続かない原因が意志ではなく形の問題だったなら、形のほうを自分に合わせにいけばいい。
紙の手帳は捨てなくていいです。
書く手触りは紙にしかありませんし、それを手放す理由はどこにもありません。
足りないところだけを、自分の言葉で埋めていけば十分です。


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