AIが賢くなるほど手帳が必要になるのは、なぜでしょうか。

AI手帳術@ふみ
AI手帳術@ふみ

@fuminote 6本

サムネイル

AIに予定もタスクも投げておけるなら、手帳はもう書かなくていいのでは。

そう感じたことのある方は、たぶん少なくないと思います。

ところが調べていくと、賢いAIほど書き出すことに頼って動いているという話に行き当たりました。

AIが何でも覚えてくれるなら、手帳に書く意味はあるのでしょうか?

私の手帳運用も、この1年でAIの比重がかなり上がりました。

タスクの分解も、予定の組み替えも、週次の振り返りの下書きまで、頼めば形になって返ってきます。

そうなると、紙のページに残す作業はもう趣味なのではという疑いが出てきます。

手帳コーナーで万年筆を選んでいる自分に「これ効率の話じゃなくて、好きだからやってるだけだよね」と突っ込みたくなる瞬間も、正直あります。

結論から書くと、逆でした。

AIが賢くなるほど、手帳に書き出しておくことの価値は上がります。

理由は人間の側とAIの側に1つずつあって、後者のほうがずっと意外でした。

頭の中は、なぜ保存場所に向かないのか。

方眼ノートと万年筆、インク瓶が並んだ静かな書きもの時間のデスク

GTD(Getting Things Done)を提唱したデビッド・アレンさんに、よく引かれる一節があります。

意識は、パソコンの画面と同じように、焦点を当てるための道具であって、保存する場所ではない。

アレンさんは短期記憶をパソコンの作業メモリにたとえて、同時に考えられるのは2つか3つまでだと書いています。

それなのに、まだ決めていないことや終わっていないことは、その狭い場所に置かれ続ける。

容量には限りがあるので、置きっぱなしが増えるほど、考える働きそのものが落ちていく。

手帳を開いたのに何も浮かばない日のことを思い出すと、この説明がよく刺さります。

書くことがなかったのではなく、頭の中が満席で、新しく考える余地が残っていなかっただけでした。

だから書き出す効果は「忘れないため」に留まりません。

考えるための席を空けるために書く、というほうが実態に近いです。

賢いAIほど、なぜ書き出しに頼るのか。

開いた手帳の余白に吹き出しとスマホが小さく添えられた、紙とAIの対話のイメージ

ここが今回いちばん驚いたところです。

テクノロジーアナリストのベン・トンプソンさん(Stratechery創業者)が、Write Things Downという記事でこんな説明をしています。

AIは、使っている感覚とは違って、記憶をずっと持ち続けている存在ではない。

次の一語を決めるたびに、それまでのやり取りを一から読み直している。

だから答えを組み立てるには、常に全部を書き出しながら進むしかない。

AIが作業用のフォルダにメモを書き残しながら動くのは、そうするしか方法がないからだ、というのがトンプソンさんの見立てです。

実際、AIに作業を任せる道具の中には、進行中のメモをテキストファイルに延々と書き残していくものがあります。

賢さの正体が、外に書き出して読み直す仕組みのほうにある。

人間の頭とAIが同じ形の限界を持っているのだと気づいたとき、手帳のページの意味が変わりました。

トンプソンさんは人類の学習の歴史にも触れていて、書き出すという行為こそが学びを引き継げるもの、広げられるものにしたと書いています。

話して伝えるところから書いて残すところへ進んだことで、学びは一代で終わらなくなりました。

AIが賢くなったあと、差がつくのはどこか。

残るのは、渡す材料を用意する仕事です。

「最近どうですか」としか渡せなければ、返ってくるのも当たり障りのない話になります。

「先週この件で手が止まった、理由は判断材料が足りなかったからだと思う」と渡せば、返事はまるで違うものになります。

同じAI、同じ性能で、結果が分かれるのは渡した記録の解像度だけです。

トンプソンさんは、書き出すことだけが規模を広げる唯一の方法だとも書いていました。

これは人間の側にもそのまま当てはまります。

頭の中にあるうちは、自分以外の誰にも、AIにも渡せません。

書き出した瞬間に、初めて渡せるものになる。

AIの処理能力が上がるほど、渡すもののほうがボトルネックになっていきます。

週次レビュー欄には、何を書いておくか。

手帳の見開きの右下に、付箋1枚ぶんくらいの欄を足しました。

書くのは3行だけにしています。

  • 進んだこと
  • 止まったこと
  • 来週ひとつだけ決めること

日曜の夜にこの3行を埋めて、そのままAIに読ませて壁打ちします。

効くのは、手で書いてから渡すという順番でした。

先にAIへ「今週どうだった?」と聞くと、こちらに材料がないので会話が浅いところで終わります。

3行を自分で埋めてから渡すと、AIは足りない視点を指摘する側に回ってくれます。

埋める作業と考える作業を、紙とAIで分け直した形です。

浮かんだことを投げ込む、雑念ダンプ欄のつくり方

もう1つは、月初に見開き1ページをまるごと空けておく欄です。

名前は雑念ダンプ欄にしています。

思いついたこと、気になっていること、まだ形になっていない不満を、日付もつけずに1行ずつ投げ込むだけのページです。

GTDで言う「とにかく全部出す」を、紙の1ページに割り当てたものだと思ってください。

順番も分類もしません。

分類しようとした瞬間に手が止まるので、そこは週次レビューのときにまとめて拾います。

このページを作ってから変わったのは、手帳を開くときの気分でした。

書くべきことを思い出す場所ではなく、降ろす場所が1ページあるだけで、ページに向かう重さが減ります。

トンプソンさんの記事の結びが、正直で気に入っています。

書き出すことはとんでもなく強力だけれど、その力は実際にやり遂げることには永遠に及ばない。

仕組みを持っているだけでは足りず、結局やるしかない、と。

手帳のページが埋まること自体はゴールではありません。

それでも頭から降ろして書き出しておけば、動き出すときに自分にもAIにも渡せるものが残ります。

今週の日曜、3行だけ埋めてみてください。