AIに書かせた報告メールを、なんとなくAIっぽいまま提出していませんか。
その「なんとなく」の正体を、OpenAI自身が単語レベルで名指ししていました。
自社モデル向けの公式プロンプト指針に、使うなと指示された言葉のリストが載っています。
OpenAIが自社のAIに禁じた10の言葉
OpenAIの最新モデル向けプロンプト指針に、はっきりこう書いてあります。
slop words、つまり中身のない使い古された言葉を避けろ、と。
そして避けるべき対象が具体的に並んでいます。
- delve(掘り下げる)
- foster(育む、醸成する)
- leverage(活用する)
- genuinely(本当に、心から)
- it's worth noting(注目に値する)
- importantly(重要なことに)
- Bottom Line:(結論から言うと)
- Question? Answer.(問いを立てて自分で答える形)
- This isn't about X. It's about Y.(Xではなく、Yである)
- ハイフンでつないだ造語的な複合語
これ、けっこうすごい話だと思うんです。
モデルを作っている当の本人が、自分のAIの癖を認めて、単語レベルで潰しにきている。
世の中の「AI文章はこうしてバレる」という記事はほぼ全部が書き手の経験則ですが、これは出どころが本家です。
英語の単語を消しても、日本語は直らない
ではdelveを禁止すれば日本語の文章が人間らしくなるかというと、そうはなりません。
私たちが日本語でChatGPTに書かせるとき、出力に英単語は一文字も出てこないからです。
効くのは、英語のリストを単語の置き換えとして見るのではなく、症状の分類として見ることです。
delveが表しているのは「意味の薄い動詞で文を持たせる癖」で、日本語なら「〜について深掘りしていきます」が同じ役割を担っています。
ここから出す日本語の一覧は、公式リストの各項目が日本語でどう化けるかを、私が実際の出力と突き合わせて作った対応表です。
OpenAIが日本語版を出しているわけではありません。
英語の公式リストが幹で、日本語版は私の枝だと思ってください。
AIが好んで使う4つの単語
まずは単語そのものです。英語で名指しされた4語には、日本語にきれいな対応物があります。
| 公式の禁止語 | 日本語で出る同じ症状 | 置き換え |
|---|---|---|
| delve | 〜について深掘りします | その場で結論を書く |
| foster | 〜を醸成する、〜を育んでいく | 誰が何をするか書く |
| leverage | 〜を活用することで | 〜を使って、〜で |
| genuinely | 本当に、まさに、非常に | 削る |
この4つに共通しているのは、動詞や副詞のふりをして何も言っていないことです。
「データを活用することで意思決定の質を向上させる」を読んで、具体的に何をするか分かりますか。
分からないですよね。「先月の解約データを営業会議に出す」まで書いて初めて情報になります。
特にgenuinelyに対応する「本当に」「非常に」は、消しても文の意味が1ミリも変わりません。
変わらないなら要らない語です。
断定から逃げる2つの前置き
次が前置きです。it's worth notingとimportantlyの2つが公式に載っていますが、日本語ではもっと露骨な形で出てきます。
| 公式の禁止語 | 日本語で出る同じ症状 | 置き換え |
|---|---|---|
| it's worth noting | 特筆すべき点として、なお〜という点も | その情報を本文に直接書く |
| importantly | 重要なのは〜という点です | 重要なら最初に書く |
この2つは「これから大事なことを言いますよ」という予告だけして、実際には何も足していません。
本当に重要なら、前置きなしで1行目に置けばいい。
そしてもう1つ、日本語のAI出力で必ず出てくるのに英語のリストにない言い回しがあります。
「〜と言えるでしょう」です。断定を避けつつ結論っぽい顔をする、日本語独自のヘッジ表現で、AIが最も好む語尾のひとつだと思っています。
見つけたら「〜です」に直してください。
それだけで文の温度が変わります。
形だけ整う4つの構文
残りは単語ではなく構文です。ここが一番AIっぽさに効きます。
| 公式の禁止語 | 日本語で出る同じ症状 | 置き換え |
|---|---|---|
| Bottom Line: | 結論として、まとめると | 結論を最初の一文に置く |
| Question? Answer. | 〜でしょうか。答えは〜です | 問いを立てず言い切る |
| This isn't about X. It's about Y. | 単なる〜ではなく〜です | Yだけ書く |
| ハイフン複合語 | 〜ドリブン、〜型アプローチ | 普通の日本語にする |
「単なる効率化ではなく、働き方そのものの変革です」みたいな文、社内資料で見たことありませんか。
対比で盛り上げているように見えて、Xの部分は書き手が勝手に立てた藁人形です。
Yだけ書けば済みます。同じページには、締めの要約文を使うなという指示も別途あります。
In short: や The simplest mental model is: といった書き出しですね。
日本語なら「以上のように」「総じて言えば」が該当します。
本文で言い切れているなら、最後にもう一度言い直す必要はないんです。
同じ報告メール、どこが変わるか?
言葉で説明しても伝わりにくいので、同じ内容の社内報告を並べます。
上が禁止リストを踏みまくった文章、下が全部外した文章です。
【Before】
結論として、今回の施策は一定の成果を上げたと言えるでしょう。
特筆すべき点として、問い合わせ件数が前月比で改善しております。
重要なのは、単なる数値の改善ではなく、顧客体験ドリブンな
改善サイクルが回り始めたという点です。
まとめると、次期も継続的に本施策を活用していく方針です。【After】
今回の施策で、問い合わせ件数が前月比で2割減りました。
減った分のほとんどはFAQページの改修によるものです。
来月は同じ手順で請求まわりのFAQも直します。Beforeは4文で、Afterは3文。
長さはほぼ同じなのに、Afterにしか情報が入っていません。
Beforeを読んで「で、何件減ったの」と思った時点で、あの文章は仕事をしていなかったわけです。
面白いのは、禁止語を外そうとすると具体を入れるしかなくなる点です。
「一定の成果」が使えないなら数字を書くしかない。
言い回しを禁止するだけで、中身が濃くなる方向に強制的に引っ張られます。
そのまま貼れる日本語版の指示文
ここまでの対応表を、ChatGPTやClaudeに渡せる形にまとめました。
カスタム指示に入れておくと毎回効きます。
日本語で書くときは次を守ってください。
1. 次の言い回しを使わない
深掘りする / 醸成する / 活用することで / 本当に / 非常に /
特筆すべき点として / 重要なのは〜という点です / 〜と言えるでしょう /
結論として / まとめると / 以上のように / 単なる〜ではなく〜です
2. 受け身を避け、誰が何をするかを主語と動詞で書く
3. 1段落は論点1つだけ。3文以内にする
4. その場で作った複合語(〜ドリブン、〜型アプローチ等)を使わない
5. 程度は形容詞でぼかさず、数字で書くポイントは3の段落指定です。公式指針も、1段落で1つの論点を展開する簡潔な段落を書けと明示しています。
禁止語だけ指定すると、AIは別の言い回しに逃げて同じ長さの空っぽな文を作るので、段落の形まで縛ったほうが効きます。
試すなら、直近で自分が送った報告メールを貼って「この指示に従って書き直して」と投げてみてください。
1分で自分の文章の空洞が見えます。
言葉を消しても、中身が薄ければバレます
ただ、禁止リストは万能ではありません。
公式の指針も、平易な語を使えとか能動態にしろとか、あくまで書き方の話をしているだけです。
「今回の施策は一定の成果を上げました」を「問い合わせが減りました」に直しても、何件減ったかを知らないなら、結局読み手は納得しません。
AIっぽさの正体は言い回しの手前にある情報の欠落で、リストはその欠落を見えやすくする道具にすぎないと思っています。
逆に言えば、数字と事実さえ自分の手元にあれば、あとはこの10項目を外すだけで文章は人間のものになります。
次にAIの下書きを開いたら、まず「結論として」「〜と言えるでしょう」「単なる〜ではなく」の3つを検索してみてください。たぶん全部ヒットします。
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