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GLM-5.3-Flashとは 覆面モデルOx Alphaの正体

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OpenRouterの使用量ランキングを、名前も出自も分からないモデルが6日間で駆け上がっていきました。

分かっているのは無料であること、コンテキストが100万トークン級であること、コーディングが妙に強いことだけ。

Ox Alphaという名前だけが付いていたそれが、8月26日にZ.aiのGLM-5.3-Flashだったと分かりました。

OpenRouterに名前を伏せたまま6日間居座ったモデルがいた

登場は8月20日です。

OpenRouterとOpenCodeに、提供元を明かさないモデルが無料で現れました。

そこから6日で使用量トップに立ち、2位のモデルの2倍以上のトークンを処理しています。

匿名のまま1位というのは、普通に考えると起きない事態です。

モデルを選ぶときは提供元とライセンスと単価を見るのが当たり前で、そのどれも分からないものに本番のコードを投げる人はあまりいない。

それでも使われたのは、無料で100万トークン入って、しかもコーディングの出力が明らかに強かったからです。

補足しておくと、これは規約の隙を突いた飛び入りではありません。

OpenRouterにはstealth model programという仕組みがあって、提供元はプレビュー期間中に限って正体を伏せたままモデルを公開できます。

匿名は事故ではなく、用意された運用でした。

正体を突き止めたのはトークナイザーの癖だった

公式発表より前に見抜いていた人がいます。

クラウドGPU事業者Nebiusの共同創業者、ローマン・チェルニンさんが、自社プラットフォームでGLM-5.3-Flashを近く提供すると書いていました。

その投稿は後に閲覧できなくなっています。

もっと直接的な検証も出ていました。

Ox Alphaのトークナイザーの挙動を95パターン調べたところ、95問すべてでGLMシリーズの語彙と一致した、というものです。

モデルの重みは隠せても、テキストをどこで刻むかには出自が残る。

スペックは総パラメータ320B、1トークンあたり18Bだけが動くMoE構成です。

重みはMITライセンスでHugging Faceに置かれました。

GLM-5系列としては初のネイティブマルチモーダルで、テキストのほかに画像・動画・視覚文書をそのまま受け取れます。

Hacker Newsのスレッドは1,100ポイント超、コメントは550件を超えました。

名前を伏せて出すと、採点する側の何が変わるのか

モデルの名前が先に分かっていると、出力を読む前に評価が動きます。

中国製と分かれば身構える人がいるし、無料と分かれば「無料の割には」という補正が入る。

パラメータ数が公表されていれば、その規模なりの期待値で読んでしまう。

Ox Alphaにはその情報が一切なかったので、採点材料が出力そのものしか残っていませんでした。

そのうえで1位を取ってから名乗る、という順序になっている。

意図までは公表されていないので断定はしませんが、素の出力だけで採点させたかったのだとしたら、狙いはきれいに通っています。

ただ、伏せられていたのは名前だけではありませんでした。

OpenRouterの規約では、ステルスモデルに送られた入力を提供元がそのモデルの学習と改善に使えることになっています。

利用者はハッシュ化された識別子として扱われるので個人が特定される作りではありませんが、投げたプロンプトの中身は匿名の提供元に渡っていた。

無料と引き換えに何を差し出していたのかは、正体が分かった今のほうが判断しやすいはずです。

では肝心の実力は、名前抜きで1位を取れるだけのものだったのか。

Opus 4.8に匹敵という表現がどこまで正確か

根拠になっているのはArtificial AnalysisのIntelligence Indexで、GLM-5.3-Flashが57、Claude Opus 4.8も57。

同点です。

「上回った」と書いている記事も見かけましたが、同じ指標を見る限りは並んだところまでです。

項目
GLM-5.3-Flash
Claude Opus 4.8
Intelligence Index
57
57
Terminal Bench 2.1
84.3
85.0
Z.ai Code Bench v1.0
29.0
29.5
入力100万トークン
約23円
約775円
出力100万トークン
約78円
約3,875円
出力速度
毎秒50.2トークン
毎秒58.4トークン
最初の1トークンまで
1.47秒
23.46秒

コーディング寄りの2本は、どちらもOpus 4.8がわずかに上です。

しかもこの2本はZ.ai自身が公開した比較表の数字なので、自社が負けている側をそのまま載せている点は信用材料になります。

差が本当に大きいのは価格でした。

1ドル155円で換算すると、入力100万トークンが約23円、出力が約78円。

Opus 4.8は入力が約775円、出力が約3,875円なので、入力で約33分の1、出力で約50分の1になります。

Artificial Analysisの計測では、1タスクあたり約7円で指数57に到達しています。

速度は素直ではありません。

出力は毎秒50.2トークンで、オープンウェイトのモデルとしてはむしろ遅いほうです。

一方で最初の1トークンが返るまでが1.47秒。

Opus 4.8の23.46秒と並べると、対話的に回したときの体感はかなり変わります。

本体のGLM-5.3とFlashは、削った場所が違う

先に公開されたフラッグシップのGLM-5.3は743Bのベースモデルで動いていて、重みの公開は安全性評価が終わるまで後ろに回されました。

Flashは320Bで、初日からMITで重みが出ています。

同じ5.3という数字が付いていても、置かれ方がまるで違う。

中身の作りも別物です。

Flashはsparse attentionとlinear attentionを組み合わせたハイブリッド構成で、これはGLMシリーズでは初採用。

多様体制約付きハイパーコネクション(mHC)と、索引キーベクトル4本を1本に圧縮するIndexPoolという仕組みが入っています。

結果として、attentionの計算量がGLM-5.3の約3分の1、KVキャッシュが約4分の1まで下がりました。

学習には30兆トークンのマルチモーダルコーパスを使っています。

ここで気をつけたいのが、本体とFlashのスコアを直接並べても意味がないことです。

本体の公式資料はTerminal Bench 3.0で、Flashは2.1。

版が違うベンチマークの数字は比較できません。

3.0で28.3、2.1で84.3という数字を横に並べると劇的な進化に見えますが、そういう話ではない。

物差しが変わるだけで、数字はいくらでも化けます。

中国製チップと100兆トークンをどう受け取るか

今回いちばん派手に走った主張が「中国製チップだけで動かした」と「1日100兆トークン」でした。

どちらも嘘ではないのですが、そのまま受け取ると意味がずれます。

中国製チップの話は推論の話です。

約10万枚の国産チップで組んだクラスタでOx Alphaを配信していた、というのがZ.aiの言明で、同じハードウェアのまま初期比3倍の配信性能を出したとしています。

学習を国産チップだけで完結させたとは言っていません。

ここを混ぜると、話が一段大きくなってしまう。

100兆トークンのほうはもっと注意が要ります。

これはOpenCode経由で伝えられた1日あたりの処理能力の表明であって、実際にその量を捌いた実績ではありません。

第三者の監査も入っていない。

実績として報じられている数字のほうは、6日間で23.2兆トークン、同じ6日で42兆トークン、プレビュー全体で62兆トークンと、出典によってバラバラです。

発表後のZ.ai(Zhipu AI)の株価も、8%、9%超、12%超と報道によって割れています。

上がったこと自体は確かですが、単一の数字で語れる状態にはなっていません。

触ってみる分には入り口は軽いです。

OpenRouterならモデルを選ぶだけ、手元で回すならHugging Faceから重みを落とせて、ライセンスはMITなので商用利用も改変も通ります。

私が今回持ち帰ったのは、モデルの評価そのものより、数字の出所を先に見る癖のほうでした。

同点を「上回った」と書き、推論の話を学習の話として運び、処理能力を実績として並べる。

一つひとつは小さなずれですが、重ねると別のモデルの話になります。

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