スワイプをやめて、AIに1人だけ紹介してもらう婚活

みずき
みずき

@mzk_diary 6本

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選択肢は多いほうがいいはずなのに、アプリを開くほど疲れていくのはどうしてなんでしょう。

その答えを、マッチングアプリを作った本人が出しました。

しかも、自分が広めたスワイプを丸ごと捨てるという形でです。

マッチングアプリを作った本人が、そのアプリを離れました

Hingeを2011年に立ち上げたJustin McLeodさんが、2025年12月にCEO退任を発表しました。

14年トップを務めた会社です。

後任は元プレジデント兼CMOのJackie Jantosさんで、McLeodさん自身は2026年3月までアドバイザーとして残りました。

引退でも不祥事でもなくて、退く理由が「新しいAIサービスを作るため」だったんです。

アプリを作った人がいちばん正解を知っているはず、と思うじゃないですか。

その人が、自分の作ったやり方から降りました。

数字のほうも、この違和感を裏づけています。

Forbes Healthが2024年に行った調査では、過去1年にマッチングアプリを使ったアメリカ人1,000人のうち78%が「アプリ疲れ」を感じていました。

1日にアプリを開いている時間は平均で51分。

毎日1時間近く指を動かして、それでも疲れだけが残る人が8割近くいる計算になります。

疲れているのが根気の問題じゃない、というのはここから先の話でもっとはっきりします。

写真もスワイプもフィードもない、Overtoneという逆張りの設計

便箋の上に置かれた1通だけの封筒と、そのまわりに散らばった無数の未開封の手紙を描いた淡い水彩イラスト

McLeodさんが作っているのはOvertoneというサービスです。

自分たちの説明では「AIを使った音声中心のサービスで、厳選された紹介だけを届けるもの」。

ここで捨てられているものが、けっこう思い切っています。

プロフィールなし、スワイプなし、アルゴリズムで並ぶフィードなし、同時進行の複数会話もなし。

婚活アプリの構成要素、ほぼ全部です。

本人の言い方がわかりやすくて、「Overtoneはデーティングアプリではありません」と書いています。

その意味は、人を統計値と引用句と写真に還元するプロフィールを並べた場所ではない、ということだそうです。

身長と年収と趣味3つで自分を説明する、あの欄のことですよね。

2026年7月14日には1,800万ドル、日本円で27億円ほどの調達を発表しました。

出資したのはFirstMark Capital、Pace Capital、そしてMatch Group。

3社目に引っかかりませんか。

Match GroupはTinderとHingeとOkCupidを持っている会社です。

つまり、自分たちのやり方を真正面から否定するサービスに、自分たちでお金を出しています。

こうなる理由も一応あって、Tinderの有料会員は2025年の4四半期すべてで減り続けました。

年末時点で877万人、前年から8%減です。

スワイプで押し切る時代が続かないことは、いちばん儲けた側がいちばんよく知っているのかもしれません。

提供開始は2026年内、それも一部の都市からの予定になっています。

AIに選ばれるのは怖い、という反応にどう答えているか

スマートフォンの画面から伸びた手が便箋を1枚だけ差し出している、少し不安げな空気の水彩イラスト

発表の直後に広がったのが、Black Mirrorの「Hang the DJ」を引き合いに出す反応でした。

アルゴリズムが恋愛の相手を決める、あのエピソードです。

相性がいいと機械が言うから会う、という状況は確かに落ち着かないですよね。

これに対するMcLeodさんの線引きははっきりしていて、AIは誰が合いそうかを絞り込むために使うもので、会話を代行させるためのものではない、と説明しています。

最初のメッセージを代筆するとか、デートのシミュレーションを先にやらせるとか、そういう方向とは別だ、と。

一方で、現役のマッチメーカーからは冷ややかな声も出ています。

McLeodさんはHingeを作った人であって、仲人の実務をやったことはない、という指摘です。

AIは相手の自己破壊的な行動パターンを指摘できないし、うまくいかない理由を本人に突きつける会話もできない、と。

これはこれで筋が通っていると思います。

そのあたりを意識してか、取締役には関係性の専門家として知られるEsther Perelさんが入りました。

Match GroupのCEOであるSpencer Rascoffさん、リーダーシップの専門家であるDiana Chapmanさんも名を連ねています。

どちらの言い分が正しいかは、まだ誰にも判定できません。

選択肢を絞る発想は、日本の結婚相談所がすでにやっていました

先に書いておくと、Overtoneは日本では当面使えません。

対象都市も公開されていないので、今のところは海の向こうの話です。

ただ「1人だけ厳選して紹介してもらう」体験のほうは、日本にもうあります。

結婚相談所の仲人型がそれです。

たとえばサンマリエのハンドメイド紹介は、カウンセラーが面談で会員の人柄と結婚観を聞き取って、条件表では出てこない相性まで見たうえで相手を紹介する仕組みになっています。

同社によると、この方法で決まったお見合いは、他の紹介制度と比べて決定率が40%高いそうです。

ツヴァイのようにデータマッチングを軸にする相談所もあって、国内でも発想は分かれています。

こうやって並べてみると、Overtoneの新しさって技術の部分じゃないんですよね。

マッチングアプリを作って広めた側の人が、結婚相談所がずっとやってきた仲人の発想に戻ってきた。

振り子が一周した、というほうが近い気がします。

選択肢を広げるより、絞ってもらうほうが楽かもしれません

Overtoneがうまくいくかどうかは、まだ何も決まっていません。

サービスも出ていないので、期待するにも批判するにも早すぎます。

それでも、この話を追いかけていて考えたことがあります。

婚活でわたしたちがやっていることって、ほとんど「選択肢を増やす」方向なんですよね。

アプリを掛け持ちして、いいねを増やして、同時に何人ともやり取りを続ける。

母数が多いほど当たりを引ける、という前提でやっています。

でも1日51分を溶かしても疲れだけが残るなら、増やす方向が効いていない可能性もあるわけで。

今週、同時にやり取りする人を3人までにしてみたらどうなるでしょう。

減らしたぶんの時間を、1人との会話に使ってみる。

選択肢が減ったとき、自分は不安になるのか、それとも楽になるのか。

わたしはそこに、婚活の消耗を減らすヒントがある気がしてます。