プロフィール文をAIに直してもらったあと、送信ボタンの前で一回止まったこと、ないですか。
これってズルなのかな、見抜かれたら一気に冷められるんじゃないかな、って。
その線引きの答えを、マッチングアプリを運営している会社のトップが、わりとはっきり口にしていました。
マッチングアプリ運営の社内は、想像よりAI全開でした。
Tinder や Hinge、OkCupid を持つ Match Group のスペンサー・ラスコフさん(CEO)が、ポッドキャストで社内のAI活用の実態を話しています。
2025年2月にCEOになってから18か月、実際に何が起きたかという内容です。
開発スピードの数字がなかなかです。
Missed Connections という機能は、AIを使う前なら6か月かかると見積もられていたのが、1か月で配信されています。
Tinder Events はアイデアから2か月で立ち上がって、今は25都市で動いているそうです。
社内でいちばん使われているツールは Claude で、次が Cursor だといいます。
お金の話も出てきます。
AIへの支出には上限があって、技術職で月に約15万円、そうでない職種で約3万円と伝えられています。
ここが少しおもしろくて、上限に達しても使えなくなるわけではなく、Workday 上で上長の承認に回る仕組みなんだそうです。
止めるためのルールというより、止めないための承認フローなんですね。
つまりこの会社、社内では完全にAIに振り切っています。
そのうえで、わたしたち利用者に向ける側ではまったく違うことを言っているんです。
運営が守ろうとしている「本物っぽさ」とは何か。
ラスコフさんがポッドキャストで強調していたのは、若い利用者ほど恋愛にAIが入ってくることに慎重だから、オーセンティシティ(本物であること)を守るのが大事だ、という点でした。
AIで開発速度を何倍にもしている会社のトップが、製品の話になると急にブレーキの話をする。
ここがいちばん引っかかったところなんです。
別の場では、相手選びをAIに丸ごと任せる未来について、人はまだハンドルを握っていたいはずだ、と話しています。
理由は、恋愛には自分の時間とお金と安全がかかっているから。
判断そのものは渡したくないものがある、という前提で製品を作っているわけです。
しかも運営側は、利用者の反応を読むためにAIで作った疑似的な人物像(ペルソナ)を使っています。
何千時間ぶんものユーザーインタビューや調査を読み込ませたもので、新しい機能を思いついたら、まずそのペルソナに感想を聞くらしいんです。
2026年5月の報道では、インディアナ州出身19歳という設定の「不安げなロマンチスト」というペルソナ名まで出ていました。
要するに運営は、AIをどこまで入れたら利用者が引くかを測りながら作っています。
送信前にわたしたちが感じるあの後ろめたさは、運営側にもう見えているんですよね。
婚活でAIに任せていい場面は、どこまでか。
先に言っておくと、AIを使うこと自体はもう運営公認です。
どちらも共通しているのは、AIが出すのはあくまで候補で、そこから選んで必要なら書き直して送るのは人、という設計です。
Photo Selector の発表リリースにも、判断を代わりにするのではなく判断を助けるための技術だ、という言い方がはっきり書かれています。
運営が引いた線がそこにあります。
わたしが婚活で実際にAIに任せているのも、全部その内側です。
- 自己分析の壁打ち。何が響いて何がスベったかを話して、整理してもらう
- プロフィール文のたたき台づくりと添削。わたしは「自己PRじゃなくて自分の説明書になってる」と指摘されて、そこから反応が変わりました
- 返信の下書き。話題が思いつかないときより、質問の投げ方に迷ったときのほうが効きます
- デート後の振り返り整理。「なんとなく微妙だった」を言葉にしてもらうと、自分が本当は何を大事にしていたかが見えてきます
並べてみると分かるんですが、どれも相手に届く前の工程なんです。
相手が読むのは、最後にわたしが直した文であって、AIが書いた文そのものではありません。
婚活でAIに任せると見抜かれるのは、どこからか。
逆に、刺さらなくなるのはここからです。
まずいのは初回メッセージの丸投げ。
相手のプロフィールを渡して「いい感じの最初のメッセージを書いて」とお願いすると、AIは読んだ情報を律儀に全部拾ってきます。
趣味も仕事も出身地も入った、丁寧で無難な文。
問題は、その文が誰に送っても成立してしまうことです。
受け取る側からすると、わたしに向けて書かれた感じがしない。
同じことがプロフィール文の全自動生成でも起きます。
整いすぎていて、体温がない。
さらに分かりやすくズレるのが、プロフィール欄とメッセージの文体差です。
自己紹介だけやたら流暢なのに、やり取りが始まると急に素の文になる。
相手は違和感の正体を言葉にしないまま、なんとなくフェードアウトしていきます。
見抜かれているのは、たぶんAIを使ったことそのものではないんです。
自分がその文を一度も通っていないことのほうです。
運営が守ろうとしているオーセンティシティも、結局は同じ軸を見ている気がしてます。
判定はかんたんで、送る前に声に出して読んでみることです。
自分の口から絶対に出てこない言い回しが混じっていたら、そこだけ自分の言葉に直す。
それだけでAIっぽさはほとんど消えます。
準備はAIに、送る言葉は自分に。
運営トップ自身が「人はハンドルを握っていたい」と言っている以上、AIを助手席に乗せること自体に後ろめたさはいらない気がしてます。
作っている側だって、社内では月15万円ぶんのトークンを使いながら機能を出しているわけですし。
線引きはシンプルです。
考えを整理する、たたき台を作る、モヤモヤを言葉にする。
ここまではAIに任せていい。
そのうえで、相手に届く最後の一文だけ、自分の手で書き直す。
今アプリを開いて、自分のプロフィール文を声に出して読んでみてください。
途中で読みつかえたところがあったら、そこが直す場所です。
AIに新しく何かを頼む前に、まずそこからなんじゃないかと思っています。



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