スマホを壁に立てかけてスクワットを撮ろうとしたら、画面に膝から下しか映っていなかった、という経験はありませんか。カメラでフォームを見てくれるAI筋トレアプリはこの1年で一気に増えましたが、狭い部屋で三脚なしという条件を足すと、使えるアプリと使えないアプリがはっきり分かれます。機能の数ではなく、必要な撮影距離と対応言語と無料枠の3点で7本を突き合わせました。
筋トレのフォームチェックアプリが、狭い部屋で詰む理由
アプリの説明文を読み比べていて引っかかったのが、撮影距離を書いているアプリがほとんどないことです。家トレの説明は「お手持ちのiPhone・iPadのカメラに全身をうつすだけで簡単に姿勢を測定」。Coach.AIの公式サイトは「Lean your phone against anything and step back」、スマホを何かに立てかけて後ろに下がってください、と書いてあります。
どちらも嘘ではありません。ただ「何メートル下がるのか」は書かれていないので、結局は部屋の中でスマホと自分を往復しながら当たりを探すことになります。
あなたの部屋では、スマホを置く場所からまっすぐ何メートル下がれますか。ジムなら数メートル取れる場所がありますが、ベッドと机が入った部屋には上限があります。機能比較の前に、その距離を数字にしておきましょう。
スクワットのフォーム確認に必要な撮影距離は何メートルか
スマホのメインカメラは、35mm換算で26mm前後の画角が主流です。ここから必要な距離は計算できます。
スマホを縦向きに立てかけた場合、上下方向の画角は約69度。身長1.65mの人が頭と足元に少し余白を持って収まるフレーム(縦2m分)を作るには、カメラから約1.4m離れる必要があります。これを横向き(画面を横長)にすると上下の画角は約50度まで狭まり、同じ2mを収めるには約2.2m必要です。縦と横で必要な距離が1.5倍以上変わります。
この数字を部屋の実寸と並べてみます。江戸間の6畳間は約2.6m×3.5m、団地間の6畳間は約2.55m×3.4mです。つまり縦向きの1.4mは、6畳間の短い辺の方向でもだいたい確保できます。一方で横向きの2.2mは、短い辺の方向だと壁から壁までをほぼ使い切る計算になり、ベッドや机があると成立しません。
だから狭い部屋では「スマホを縦向きに立てかけて撮れる種目」を選ぶのが最初の分岐になります。ここが各アプリの仕様と直結してきます。
日本語で使える宅トレAIアプリは2本だけ
カメラ解析を実装した7本を調べたなかで、アプリの対応言語に日本語が入っていたのは2本でした。
家トレは株式会社ネクストシステムの国産アプリで、自社の骨格検出エンジンでカメラ映像から回数を自動カウントしつつ姿勢を測定します。個人的にいちばん効くと思ったのは、対応種目がスマホの置き方ごとに分かれている点です。縦置きは腕立て伏せ、腹筋、スクワット、ダンベルカール、サイドレイズ。横置きは腹筋と腕立て伏せの2種目だけ。前のセクションの計算と重ねると、狭い部屋で撮れる可能性が高いのは縦置き側のリストになります。しかも完全無料です。
SportsReflectorは26言語に日本語が入っていて、ストアページ全体も日本語で読めます。テニスやゴルフなどの球技が中心ですが、スクワット、デッドリフト、ベンチプレスといったジムの種目にも対応しています。撮影距離の指定は公開情報では確認できませんでした。複数角度での撮影を前提にしている書き方なので、1台のスマホを1箇所に置いて済ませたい人には少し重いかもしれません。
英語UIでも筋トレのフォームチェックは成立するか
残り5本は英語UIのみです。「英語だと無理」と思いますよね。ただフォーム判定は動画とスコアで返ってくる部分が大きいので、英語でも使えるものはあります。
このなかで狭い部屋の条件に一番はっきり答えているのはGymscoreです。公式サイトが、カメラは真正面や真横ではなく正面から30度から60度の斜めに置くこと、そして水筒やベンチやラックに立てかけて構わないことを明記しています。斜めに置く指定は部屋の対角線を使えるので、6畳間なら短い辺よりも長い距離が取れます。2,500種目以上に対応して0点から100点のスコアが返る仕様で、iOSとAndroidの両方があります。
Coach.AIは、開発者が公開の場で仕様の弱点まで説明している珍しいアプリです。背面カメラを使うので撮影中は画面が自分と反対を向くこと、角度によって判定が苦しくなること、現状の対応は18種目でフォームの指摘は膝が内側に入る動きと背中が丸まる動きの2点であること。できないことが書いてあるほうが、自分の部屋で使えるかを判断しやすいです。
Zingはスマホのカメラで動作をリアルタイムに追跡してフォームのフィードバックを返します。日本のApp Storeでのストア表記は日本語ですが、アプリの対応言語は英語、フランス語、ドイツ語、ポルトガル語、スペイン語の5言語で、日本語は入っていません。
FormLensはスクワット、ベンチプレス、デッドリフト、オーバーヘッドプレス、ランニングの5つに絞って、録画した動画にフォームスコアを付けます。対象が絞られているぶん、宅トレで自分が撮る種目と重なるかを先に確認したほうがいいです。
Form Fixも録画してAIが解析する型で、スクワットやデッドリフトを例に挙げています。英語のみで、撮影距離や角度の指定は公開情報では確認できませんでした。
なお、カメラでの骨格追跡で名前が挙がるKemtaiは今回の7本から外しました。ブラウザで動く設計で、PCやタブレットを離れた位置に置いて全身を映す使い方が前提になっており、月額のプランのみで無料枠が見つからなかったためです。スマホを立てかけるという今回の条件とは別のジャンルだと判断しました。
無料で試せる筋トレフォームチェックアプリはどれか
「無料」の中身がアプリによってまったく違うので、ここは正直に書きます。
完全無料と言い切れるのは家トレだけでした。他の6本はいずれも無料ダウンロードとアプリ内課金の組み合わせで、無料のまま1日に何回判定できるのかという実質的な上限は、どのアプリも公式ページに書いていません。ZingもCoach.AIもGymscoreも「無料で始められる」という表記で止まっています。
金額の幅はかなり大きいです。安い側はFormLensの週300円、高い側はSportsReflectorの年額60,000円。ただSportsReflectorには10本の動画解析で800円、25本で1,500円という単発の解析パックもあるので、サブスクを避けたい人はこちらが現実的です。
無料で試す入口としては、家トレで日本語のまま始めて、物足りなければ単発パックか週単位のプランを1つ足す。この順番がいちばん財布に優しい形になります。
三脚なしのスマホ撮影で筋トレを試す順番
まず、部屋の撮影距離を測ってください。メジャーがあれば1分で終わります。
- スマホを立てかけたい壁や家具の位置を決める
- そこからまっすぐ下がれる距離を測る
- 1.4m取れるなら縦向きの全身撮影が成立する
- 2.2m取れるなら横向きも選べる
- どちらも足りないなら、部屋の対角線方向で測り直す
対角線で測り直すのがポイントです。6畳間なら対角は4mを超えるので、Gymscoreが指定している斜め30度から60度の置き方と相性がいいです。
距離が分かったら、試す順番はこうなります。
- 家トレで縦置きのスクワットを撮る。無料で日本語なので、判定の手触りを確かめるコストがほぼゼロです
- 2m以上下がれるなら、Gymscoreを斜めに置いて同じ種目を撮る。斜め置きの指定があるぶん、狭い部屋での再現性を確かめやすいです
- 記録を週単位で残したいなら、SportsReflectorの単発解析パックを1つ買って続くかどうかを見る
3段目まで行かずに1段目で満足したなら、それで十分です。器具がダンベル2個とヨガマットだけでも、撮れる種目は縦置きのリストに入っています。
狭い部屋の筋トレアプリ選び、ものさしは3つ
機能一覧を見比べるより、この3つで絞ったほうが早く決まります。
- 距離: 縦向きなら約1.4m、横向きなら約2.2m。自分の部屋で下がれる距離が、選べるアプリを決めます
- 言語: 日本語のUIが必要なら家トレとSportsReflectorの2本。動画とスコアだけで判断できるなら残り5本も候補に入ります
- 無料枠: 完全無料は家トレのみ。他は無料の上限が公開されていないので、課金前提で見たほうが読み違えません
最後にひとつ。AIが返すスコアや指摘は、トレーナーや医師の指導の代わりにはなりません。痛みや違和感があるときは、アプリの点数ではなく専門家に相談してください。
今日できるのは、部屋の距離を測ることまでです。それだけで選べるアプリが半分に絞れます。


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